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65話
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「じゃあ、お前等の身体に付けられた相克印はどう説明する気だ!」
「知らねーよ!!」
泣きわめく旬介からも話を聞こうと、黄龍の手を麒麟が止めた。?
「何する!?」
「黄龍、落ち着け。少し話を聞いてやってくれ。それじゃ反省する間もないだろ。旬介、少し泣くのをやめて何があったか話してみろ。変わった事はなかったか?」
「……ふぇ……えっぐ……」
「話さねば、先に進めんぞ」
旬介は、泣きながら話し始めた。?
「本当に……魚捕って……遊んでたら……大きな音がした……多分、青龍さんが言うのと……同じ。そしたら、イタチが飛んできて……殺したら、変な……ドロドロしたのふきかけてきた……ふぇえ……」
横から藤治が続けた。
「汚れたから洗ってたけど、臭いし気持ち悪いし、気分悪くなって帰ってきたんだ! 帰ったら、麒麟さんにあの音なんだったか聞こうと思ってた」
自分の可愛い可愛い息子が、嘘を言うとは思えない。しかし、あの時と同じ悪い予感がするのは事実だった。黄龍は旬介の背中を優しく撫でると「もうよい」と、彼を膝の上から下ろした。
「何があったか調べる必要があるだろう。迂闊に人は送り込めん。俺が行こう」?
麒麟が言うと、納得いかないと藤治が食ってかかるように問うた。
「相克印ってなんですか!?」
言い方がよくない。と、朱雀が息子の頭を抑えた。
「血を封ずる呪いの印だ。あの術を使える者は、母上と兄上を除く2人しかしらん」
「そういえば、先程の戦の件も含めて母上と兄上は何処まで知っている?」
朱雀が答えた。
「まだ、お前にしか話とらんよ」
「そうか、はっきりするまで黙っておこう。面倒だし」
黄龍が頭を抱えた。
「黙っていた方が面倒だと思うが……まあいい」
納得したのは大人達だけで、余計な濡れ衣を着せられた2人の息子は黙ってなどいられるはずも無かった。
「他に犯人がいるって事なんだな!」
藤治の言葉を合図にするかのように、旬介も立ち上がり、大人達が止める間も与えず2人して飛び出してしまった。
黄龍達がハッとした時には、既に2人の姿はその場にない。
「き、麒麟。まずい! 急いで追わねば」
面倒なのか呆れたのか、どちらにでも取れるような深い溜め息を吐きながら、麒麟も後を追う準備を始めた。
*****
決して子供達だけで近寄ってはならない。
幼い頃からそう教わった場所に、少年2人はいた。この場所に足を踏み入れたのは、子供達だけでは初めてだった。
その場に少し前まであったはずの祠は、無残にも破壊されてその面影すら残していない。
毎年、同じ日にいつも両親と掃除していた。いやいやしていたけど、こうして見れば寂しいものである。そのせいもあって、余計に怒りが湧いてきた。
麒麟領の祠を確認した後、朱雀領の祠も確認しに行ったが、こちらも同じように破壊されていた。
「酷いことする」
「この分だと他の祠もこうなのかな」
旬介がぽつりと呟いたが、否定するかのように藤治が答えた。
「玄武領は玄武さんがしっかりしてるし、父上達がもう知らせてるだろう。白虎領も同じく大丈夫だと思うけど、時間差から考えても青龍領に行くのがいいと思う。今青龍さんがいない分手薄だ」
「青龍さんが紗々丸に知らせてるとは思うけど……」
「どんなやつかわかんないし、旬介。急ごう!」
2人は青龍領へと向かった。
*****
一方、青龍領では藤治の予想通り、青龍領の祠の前に人影があった。
少女とも少年ともいえるその風貌で、その子は祠を冷たく見つめていた。
「これで、父上が……」
恨めしそうにそう呟くと、その祠にむかって手をかざした。手の中で小さな風が揺らめき始めた時、それを止めるかのようにその子の手を誰かの手が掴んだ。
「これ以上、好き勝手にはさせないよ」
子が振り向き、その者から間合いを取った。
「お前はなんだ?」
「お前こそなんなんだ!」
同じくらいの年にも見れるが、喋り方も声も幼いように感じて、少年は溜め息を吐くようにして自分から名乗ることにした。
「ここ、青龍領の紗々丸だ。お前は?」
「名などない!」
と答えると同時に、子は紗々丸に飛びかかった。それを受けるようにして、紗々丸はわざと倒されてみせた。
「失礼な奴だな」
「ふん!」
次の攻撃を出そうと腕を振り上げた子に、紗々丸は得意の術で空気中の水分を具現化する。それは龍のように唸り、子を吹き飛ばした。
咄嗟の事に避けられず、何が起きたか分からないと言った様子で子は地面に転がった。
「好き勝手はやめてもらおうかな。何が目的だ?」
子は紗々丸の声に反応するかのようにその場から飛び上がると、まるで獣のように四つん這いで再び距離を取った。その姿が生々しく、紗々丸には酷く惨めに見えた。何故なら、よく見れば汚れた顔と埃まみれの髪だけならまだしも、服とは言えない麻を纏っていたから。この村にここまでみすぼらしい姿の子供は見たことがない。
「お前、もしかして外から来たのか? お腹がすいてるのか? ここにお供えものなんてないよ?」
里の祠を壊してまわっている犯人が、実は別の人物かもしれないと思ったから。
子は獣のように唸りながら、紗々丸を見上げた。
「これを壊せば、父上が助かるんだ!」
やはり、こいつが犯人かもしれない。
「お前が、祠を壊しまくってるのか? なんのために?」
「こんなものがあるから、父上も母上も苦しんでるんだ! 僕は母上を助ける!!」
飛びかかろうとする子に、紗々丸は術を投げた。それは空気中の水分が、今度は刃となり子に降り注いだ。手加減はした。
だか、子はニヤリと笑うと奇妙な声を上げた。と、同時にこの前に数匹のイタチが飛び出し、その刃に刺さって絶命した。
「げっ!」
と、思わず紗々丸から声が出た。気持ち悪いとすら感じた故だった。
「お前なんかに用はない!」
子は叫びながら、紗々丸を飛び越えて祠に目掛けて突っ込んで行っだ。が、それを阻止するかのように、子の腹目がけて何かがぶつかった。
ドンっと吹き飛ばされるように子が地面に転がった。
「旬介!」
紗々丸の声に反応するかのように、受け身を取りながら着地した旬介が立ち上がり、その後ろから呑気に藤治が駆け寄ってきた。
「間に合った~。全く、無茶するんだから」
旬介は、子に向き直ると指さしながら叫んだ。
「お前のせいで酷い目にあったんだからな! このお礼はたっぷりしてやる」
紗々丸が首をかしげた。
「酷い目?」
藤治が苦笑いを浮かべた。
「聞かないであげて」
子はぺっと地面に、血の混じった唾を吐いた。口の中が鉄臭い。
「じゃあ、もっと酷い目にあわせてやるよ」
子が旬介に掌を向けた。咄嗟に、紗々丸が叫んだ。
「旬介、気をつけろ! そいつ変な術を使うぞ」
「天切る地切る八方切る天に八違ひ地に十の文字秘音一も十々二も十々三も十々四も十々五も十々六も十々 吹きて放つさんびらり……」
呪詛返しのつもりだった。相手の法力を自分の法力に変換し、倍返ししてやるつもりだったのだが、天がピシャリと光るとそれは旬介自身に跳ね返った。
旬介の悲鳴が響き、駆け寄った藤治が今度は仕返しとばかりに呪詛を唱えた。が、それも旬介同様藤治自身に返ってきた。
2人をエレキテルを含んだ炎が襲う。焦った紗々丸が自らの術で消火のつもりで雨を降らせるも、それは大きく逆効果となり、その場が爆発した。勿論、肝心の祠を巻き込んで。
その爆発を辛うじて目撃した青龍が、怒声を上げた。
「何してんだ!! この馬鹿! エレキテルに水ぶっかけたら爆発すんに決まっとるだろが!! それに肝心の祠を破壊してどーすんだ」
「知らねーよ!!」
泣きわめく旬介からも話を聞こうと、黄龍の手を麒麟が止めた。?
「何する!?」
「黄龍、落ち着け。少し話を聞いてやってくれ。それじゃ反省する間もないだろ。旬介、少し泣くのをやめて何があったか話してみろ。変わった事はなかったか?」
「……ふぇ……えっぐ……」
「話さねば、先に進めんぞ」
旬介は、泣きながら話し始めた。?
「本当に……魚捕って……遊んでたら……大きな音がした……多分、青龍さんが言うのと……同じ。そしたら、イタチが飛んできて……殺したら、変な……ドロドロしたのふきかけてきた……ふぇえ……」
横から藤治が続けた。
「汚れたから洗ってたけど、臭いし気持ち悪いし、気分悪くなって帰ってきたんだ! 帰ったら、麒麟さんにあの音なんだったか聞こうと思ってた」
自分の可愛い可愛い息子が、嘘を言うとは思えない。しかし、あの時と同じ悪い予感がするのは事実だった。黄龍は旬介の背中を優しく撫でると「もうよい」と、彼を膝の上から下ろした。
「何があったか調べる必要があるだろう。迂闊に人は送り込めん。俺が行こう」?
麒麟が言うと、納得いかないと藤治が食ってかかるように問うた。
「相克印ってなんですか!?」
言い方がよくない。と、朱雀が息子の頭を抑えた。
「血を封ずる呪いの印だ。あの術を使える者は、母上と兄上を除く2人しかしらん」
「そういえば、先程の戦の件も含めて母上と兄上は何処まで知っている?」
朱雀が答えた。
「まだ、お前にしか話とらんよ」
「そうか、はっきりするまで黙っておこう。面倒だし」
黄龍が頭を抱えた。
「黙っていた方が面倒だと思うが……まあいい」
納得したのは大人達だけで、余計な濡れ衣を着せられた2人の息子は黙ってなどいられるはずも無かった。
「他に犯人がいるって事なんだな!」
藤治の言葉を合図にするかのように、旬介も立ち上がり、大人達が止める間も与えず2人して飛び出してしまった。
黄龍達がハッとした時には、既に2人の姿はその場にない。
「き、麒麟。まずい! 急いで追わねば」
面倒なのか呆れたのか、どちらにでも取れるような深い溜め息を吐きながら、麒麟も後を追う準備を始めた。
*****
決して子供達だけで近寄ってはならない。
幼い頃からそう教わった場所に、少年2人はいた。この場所に足を踏み入れたのは、子供達だけでは初めてだった。
その場に少し前まであったはずの祠は、無残にも破壊されてその面影すら残していない。
毎年、同じ日にいつも両親と掃除していた。いやいやしていたけど、こうして見れば寂しいものである。そのせいもあって、余計に怒りが湧いてきた。
麒麟領の祠を確認した後、朱雀領の祠も確認しに行ったが、こちらも同じように破壊されていた。
「酷いことする」
「この分だと他の祠もこうなのかな」
旬介がぽつりと呟いたが、否定するかのように藤治が答えた。
「玄武領は玄武さんがしっかりしてるし、父上達がもう知らせてるだろう。白虎領も同じく大丈夫だと思うけど、時間差から考えても青龍領に行くのがいいと思う。今青龍さんがいない分手薄だ」
「青龍さんが紗々丸に知らせてるとは思うけど……」
「どんなやつかわかんないし、旬介。急ごう!」
2人は青龍領へと向かった。
*****
一方、青龍領では藤治の予想通り、青龍領の祠の前に人影があった。
少女とも少年ともいえるその風貌で、その子は祠を冷たく見つめていた。
「これで、父上が……」
恨めしそうにそう呟くと、その祠にむかって手をかざした。手の中で小さな風が揺らめき始めた時、それを止めるかのようにその子の手を誰かの手が掴んだ。
「これ以上、好き勝手にはさせないよ」
子が振り向き、その者から間合いを取った。
「お前はなんだ?」
「お前こそなんなんだ!」
同じくらいの年にも見れるが、喋り方も声も幼いように感じて、少年は溜め息を吐くようにして自分から名乗ることにした。
「ここ、青龍領の紗々丸だ。お前は?」
「名などない!」
と答えると同時に、子は紗々丸に飛びかかった。それを受けるようにして、紗々丸はわざと倒されてみせた。
「失礼な奴だな」
「ふん!」
次の攻撃を出そうと腕を振り上げた子に、紗々丸は得意の術で空気中の水分を具現化する。それは龍のように唸り、子を吹き飛ばした。
咄嗟の事に避けられず、何が起きたか分からないと言った様子で子は地面に転がった。
「好き勝手はやめてもらおうかな。何が目的だ?」
子は紗々丸の声に反応するかのようにその場から飛び上がると、まるで獣のように四つん這いで再び距離を取った。その姿が生々しく、紗々丸には酷く惨めに見えた。何故なら、よく見れば汚れた顔と埃まみれの髪だけならまだしも、服とは言えない麻を纏っていたから。この村にここまでみすぼらしい姿の子供は見たことがない。
「お前、もしかして外から来たのか? お腹がすいてるのか? ここにお供えものなんてないよ?」
里の祠を壊してまわっている犯人が、実は別の人物かもしれないと思ったから。
子は獣のように唸りながら、紗々丸を見上げた。
「これを壊せば、父上が助かるんだ!」
やはり、こいつが犯人かもしれない。
「お前が、祠を壊しまくってるのか? なんのために?」
「こんなものがあるから、父上も母上も苦しんでるんだ! 僕は母上を助ける!!」
飛びかかろうとする子に、紗々丸は術を投げた。それは空気中の水分が、今度は刃となり子に降り注いだ。手加減はした。
だか、子はニヤリと笑うと奇妙な声を上げた。と、同時にこの前に数匹のイタチが飛び出し、その刃に刺さって絶命した。
「げっ!」
と、思わず紗々丸から声が出た。気持ち悪いとすら感じた故だった。
「お前なんかに用はない!」
子は叫びながら、紗々丸を飛び越えて祠に目掛けて突っ込んで行っだ。が、それを阻止するかのように、子の腹目がけて何かがぶつかった。
ドンっと吹き飛ばされるように子が地面に転がった。
「旬介!」
紗々丸の声に反応するかのように、受け身を取りながら着地した旬介が立ち上がり、その後ろから呑気に藤治が駆け寄ってきた。
「間に合った~。全く、無茶するんだから」
旬介は、子に向き直ると指さしながら叫んだ。
「お前のせいで酷い目にあったんだからな! このお礼はたっぷりしてやる」
紗々丸が首をかしげた。
「酷い目?」
藤治が苦笑いを浮かべた。
「聞かないであげて」
子はぺっと地面に、血の混じった唾を吐いた。口の中が鉄臭い。
「じゃあ、もっと酷い目にあわせてやるよ」
子が旬介に掌を向けた。咄嗟に、紗々丸が叫んだ。
「旬介、気をつけろ! そいつ変な術を使うぞ」
「天切る地切る八方切る天に八違ひ地に十の文字秘音一も十々二も十々三も十々四も十々五も十々六も十々 吹きて放つさんびらり……」
呪詛返しのつもりだった。相手の法力を自分の法力に変換し、倍返ししてやるつもりだったのだが、天がピシャリと光るとそれは旬介自身に跳ね返った。
旬介の悲鳴が響き、駆け寄った藤治が今度は仕返しとばかりに呪詛を唱えた。が、それも旬介同様藤治自身に返ってきた。
2人をエレキテルを含んだ炎が襲う。焦った紗々丸が自らの術で消火のつもりで雨を降らせるも、それは大きく逆効果となり、その場が爆発した。勿論、肝心の祠を巻き込んで。
その爆発を辛うじて目撃した青龍が、怒声を上げた。
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