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88話
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里は平和なまま、何度も桜と雪の季節を繰り返した。
各領主が集まり、話し合い、子供達に後を引き継ぐと決めたのは、それから五年後の事である。丁度、皆が二十歳になった頃合だった。特に年齢を気にした訳でも無く、麒麟が早くに隠居したいと言い出した為であった。本当の理由は、誰も知らない。黄龍すら知らなかった。ただ、麒麟は重かった荷から解放され、疲れたとしか言わなかった。
それで、麒麟領だけではと言う話になり、それならばと全員が世代交代を決定した。さすれば、名前も変わることになる。引き継いだ子供達は親の名前を貰い、引き渡した親達は子供達に名前を返してもらった。
「麒麟に黄龍よ。少し、旬介と出掛けてくる」
「わかったよ、母上。なんかまだ慣れないな、そう呼ばれるの」
「時期に慣れるさ」
隠居して旬介と新月に戻った二人は、天気の良い日に散歩をするのが日課となっていた。
春の風が里を抜ける。桜が満開だった。
「結局、我等が領主をしていた時間は短かったなあ」
黄龍が少し寂しそうに零した。
「なんだ、新月はまだ引退したくなかったのか? 短かったが、それはそれは濃厚過ぎるくらいの日々だったぞ。百年分くらいは働いたと思うが」
「違いないな」
二人笑い合う。それだけで、幸せだった。
ただ、その頃くらいだった。旬介に戻った頃くらいから、度々奇妙な感覚に捕われるようになった。
夜になると、微熱が出ることが多くなり、それから妙に腹が減るのだ。
最初は独り我慢もできていたが、日に日に熱が高くなり、空腹が激しくなるので流石に黄龍こと新月も気付いてしまった。
だが朝になると、晩の事が嘘のように、ケロッとしていた。
新月は病を疑った。
「旬介、一度母上に診て貰った方がよいのではないか?」
新月は心配し、旬介に提案したが
「何も問題は無い」
と、返されるだけだった。
「それより」
旬介が袂から一枚の瓦版を取り出し、新月に渡した。
「白虎領で温泉が出たらしいぞ。面白そうだから、行ってみないか? 一般開放する前に、隠居組を集めてお披露目したいらしい」
「そうなのか」
新月は今の旬介を思うと、少し不安を覚えた。
「俺の事がそんなに気になるのなら、母上や兄上も呼べばよいではないか。というか、もう呼んでおると思うが」
本人がそこまで言うのであれば、と新月は承諾した。
黄龍と名を変えた新月も、今や立派な娘へと成長していた。本人の努力もあり、身なりから立ち振る舞いもかつての野生児を連想させるものはなかった。
「母上様。ご安心して、行ってらっしゃいまし」
黄龍は白虎領へと旅立つ二人を、玄関から静かに見送った。
「ゆっくりしてくればいいよ」
麒麟も、もう立派な青年だ。かつての旬介を思わせるような、甘えた面影はない。
「何かあれば、直ぐに言霊を飛ばしてくれ」
新月が言うと、麒麟は苦笑した。
「いつまでも子供じゃないよ。それに、もう直ぐに父にもなる。いつまでも、二人に頼ってはおれん」
新月は、少し寂しように笑った。
「そうであったな」
「新月、行こう」
新月は旬介に引かれるまま、麒麟領を後にした。
白虎領に着くと、既に皆が集まっていた。湧き出たという温泉は、立派な旅籠となっていた。所謂、温泉旅館である。
「今回は、貸切ですから」
と、獅郎(白虎)と薫風が従業員姿で迎えてくれた。
「何の真似だ?」
到着早々、甲蔵(玄武)が獅郎に問うた。
「余生は温泉旅館を経営することに決めたのだ」
「手持ち無沙汰も落ち着かなくて」
おっとり笑う二人に、藤治(朱雀)は笑った。
「二人らしいね」
余談ではあるが、甲蔵であった今や玄武は、幼い頃から恋仲であった白百合と婚姻を結んだ為、玄武領と白虎領を納めている。
「じゃあ、存分にもてなしてもらおうぜ」
紗々(しゃしゃ)と名を変えた元青龍が、お構い無しに宿へと入っていった。流石に大の大人が名に丸を付けるのは抵抗があったので、紗々だけ残した。
それに続いて、皆がぞろぞろと宿へと入る。
暫くして、葛葉と蜃も到着した。
それぞれの部屋に案内されると、風呂の用意が出来るまで暫し休むことにした。
「こんな風に皆が集まるのは、いつぶりかな。あの日以来か」
旬介が懐かしそうに言った。
「そうだな、五年ぶりか。隠居の話しをした時は、母上も蜃様もおらんかったものな」
「気付いたら、あっという間に爺になるでは無いか」
旬介と新月は、共に苦笑いをした。
「婆さんとは、まだ言わんでくれ」
「違いない、爺さんともまだ呼ばれたくない」
空はまだ明るいが、風呂の準備が出来たと言うので先に温泉に入る事にした。夜になれば相変わらずの宴会が始まる。
しかし、新月は夜が気がかりであった。そこで、旬介に気付かれないよう葛葉に話をすることにした。
葛葉を散歩だと偽って、一人呼び出した。
「新月、どうしたのだ。何かあったのだろう。ずっと顔が不安そうだぞ」
「旬介のことで」
「ああ」
葛葉は黙って聞いた。
「夜になると、熱が出るのです。最初は微熱で時折だったのが、最近は毎晩のように。それから酷い空腹になるようで、深夜に起きて食事をさせるのですが、それでも日に日に痩せていくのです」
「よくわからんかったが」
「恐らく、今日のことで蜃様も他の皆も気づくでしょう」
「もしかして、それでここに連れてきたのか」
新月は頷いた。
「ただ、旬介も皆と会いたかったようです。でも、おかしくないですか。こんな状況本人が一番分かってるはずなのに、それを皆に知られるようなこと」
「あやつ、もしや。もっと何か隠してるのであるまいな」
新月の頭に、最悪の結末が浮かんだ。
葛葉が続けた。
「生克五霊獣の法じゃ。あれは、本来恵慈家の人間が使うものだと思う。旬介は私や蜃のように直接血を持つものでは無いのだ。かつての晴明がその血で鬼の血を封じておった為に、旬介もそうなのやもしれん」
「鬼の血ですか」
「ああ、あれは晴明の血も貰っておる。もしかして、生克五霊獣の法を使うことで、龍神である私の血の力が消えかけておるのかもしれんな」
「そんな。じゃあなんで、早くに言わないのだ」
「あれも、どうしてよいか分からんかったのだろう。もしかしたら、早くに隠居したいと言い出したのも、それが原因かもしれん。よい、今夜私が血を与えれば済む話じゃ」
そうこうしているうちに、日は落ちてきた。
「旬介のとこに戻らないと」
「私も行こう」
葛葉と新月が部屋に戻ると、まだ布団を敷かれていない畳の上で、旬介はぐったりとしていた。
それでも新月が戻ってきたのに気づき、困ったように笑いながら言った。
「ああ、なんじゃ母上も一緒か。さっき、宴会の準備が出来たと獅郎が呼びにきたぞ。さあ、行っておいで。俺は、部屋で休ませてもらうよ」
低い机に手をかけて、無理に身体を起こすので、新月は急いで旬介を支えた。
「お前の事を母上に相談していたのだ。母上が直ぐに血をくれると」
「そうじゃ、直ぐに私の血を」
旬介は、軽く新月を振り払った。
「血でどうにかなるものではあるまい。もうよい、新月。皆と楽しんでこい。その為に来たのだ」
「え?」
「俺の心配ばかりしていても、新月が辛いだけだろう」
「バカを言うな」
葛葉が旬介に近寄った。そして、宥めるように言うた。
「恐らく恵慈家の、私の血が効力を失いつつあるのだろう。晴明の鬼の血は強い。鬼の血に抗っているのだろうな。生克五霊獣の法をお前に使わせた私の責任だ」
葛葉は部屋にあった旬介の刀の刃を掴むと、掌を切った。ぎゅっと握った拳から滴る血を、新月と共に旬介の口に流し入れた。案の定、旬介は噎せたが吐くのは堪えた。
「ガキの頃以来だ。ジジイになっても、慣れんな。こればっかりは」
「暫く熱が上がるだろうが、このまま休ませてもらえ。私からも獅郎に頼んでおくから」
「ありがとうございます、母上」
新月は、安堵した表情をようやく向けた。
各領主が集まり、話し合い、子供達に後を引き継ぐと決めたのは、それから五年後の事である。丁度、皆が二十歳になった頃合だった。特に年齢を気にした訳でも無く、麒麟が早くに隠居したいと言い出した為であった。本当の理由は、誰も知らない。黄龍すら知らなかった。ただ、麒麟は重かった荷から解放され、疲れたとしか言わなかった。
それで、麒麟領だけではと言う話になり、それならばと全員が世代交代を決定した。さすれば、名前も変わることになる。引き継いだ子供達は親の名前を貰い、引き渡した親達は子供達に名前を返してもらった。
「麒麟に黄龍よ。少し、旬介と出掛けてくる」
「わかったよ、母上。なんかまだ慣れないな、そう呼ばれるの」
「時期に慣れるさ」
隠居して旬介と新月に戻った二人は、天気の良い日に散歩をするのが日課となっていた。
春の風が里を抜ける。桜が満開だった。
「結局、我等が領主をしていた時間は短かったなあ」
黄龍が少し寂しそうに零した。
「なんだ、新月はまだ引退したくなかったのか? 短かったが、それはそれは濃厚過ぎるくらいの日々だったぞ。百年分くらいは働いたと思うが」
「違いないな」
二人笑い合う。それだけで、幸せだった。
ただ、その頃くらいだった。旬介に戻った頃くらいから、度々奇妙な感覚に捕われるようになった。
夜になると、微熱が出ることが多くなり、それから妙に腹が減るのだ。
最初は独り我慢もできていたが、日に日に熱が高くなり、空腹が激しくなるので流石に黄龍こと新月も気付いてしまった。
だが朝になると、晩の事が嘘のように、ケロッとしていた。
新月は病を疑った。
「旬介、一度母上に診て貰った方がよいのではないか?」
新月は心配し、旬介に提案したが
「何も問題は無い」
と、返されるだけだった。
「それより」
旬介が袂から一枚の瓦版を取り出し、新月に渡した。
「白虎領で温泉が出たらしいぞ。面白そうだから、行ってみないか? 一般開放する前に、隠居組を集めてお披露目したいらしい」
「そうなのか」
新月は今の旬介を思うと、少し不安を覚えた。
「俺の事がそんなに気になるのなら、母上や兄上も呼べばよいではないか。というか、もう呼んでおると思うが」
本人がそこまで言うのであれば、と新月は承諾した。
黄龍と名を変えた新月も、今や立派な娘へと成長していた。本人の努力もあり、身なりから立ち振る舞いもかつての野生児を連想させるものはなかった。
「母上様。ご安心して、行ってらっしゃいまし」
黄龍は白虎領へと旅立つ二人を、玄関から静かに見送った。
「ゆっくりしてくればいいよ」
麒麟も、もう立派な青年だ。かつての旬介を思わせるような、甘えた面影はない。
「何かあれば、直ぐに言霊を飛ばしてくれ」
新月が言うと、麒麟は苦笑した。
「いつまでも子供じゃないよ。それに、もう直ぐに父にもなる。いつまでも、二人に頼ってはおれん」
新月は、少し寂しように笑った。
「そうであったな」
「新月、行こう」
新月は旬介に引かれるまま、麒麟領を後にした。
白虎領に着くと、既に皆が集まっていた。湧き出たという温泉は、立派な旅籠となっていた。所謂、温泉旅館である。
「今回は、貸切ですから」
と、獅郎(白虎)と薫風が従業員姿で迎えてくれた。
「何の真似だ?」
到着早々、甲蔵(玄武)が獅郎に問うた。
「余生は温泉旅館を経営することに決めたのだ」
「手持ち無沙汰も落ち着かなくて」
おっとり笑う二人に、藤治(朱雀)は笑った。
「二人らしいね」
余談ではあるが、甲蔵であった今や玄武は、幼い頃から恋仲であった白百合と婚姻を結んだ為、玄武領と白虎領を納めている。
「じゃあ、存分にもてなしてもらおうぜ」
紗々(しゃしゃ)と名を変えた元青龍が、お構い無しに宿へと入っていった。流石に大の大人が名に丸を付けるのは抵抗があったので、紗々だけ残した。
それに続いて、皆がぞろぞろと宿へと入る。
暫くして、葛葉と蜃も到着した。
それぞれの部屋に案内されると、風呂の用意が出来るまで暫し休むことにした。
「こんな風に皆が集まるのは、いつぶりかな。あの日以来か」
旬介が懐かしそうに言った。
「そうだな、五年ぶりか。隠居の話しをした時は、母上も蜃様もおらんかったものな」
「気付いたら、あっという間に爺になるでは無いか」
旬介と新月は、共に苦笑いをした。
「婆さんとは、まだ言わんでくれ」
「違いない、爺さんともまだ呼ばれたくない」
空はまだ明るいが、風呂の準備が出来たと言うので先に温泉に入る事にした。夜になれば相変わらずの宴会が始まる。
しかし、新月は夜が気がかりであった。そこで、旬介に気付かれないよう葛葉に話をすることにした。
葛葉を散歩だと偽って、一人呼び出した。
「新月、どうしたのだ。何かあったのだろう。ずっと顔が不安そうだぞ」
「旬介のことで」
「ああ」
葛葉は黙って聞いた。
「夜になると、熱が出るのです。最初は微熱で時折だったのが、最近は毎晩のように。それから酷い空腹になるようで、深夜に起きて食事をさせるのですが、それでも日に日に痩せていくのです」
「よくわからんかったが」
「恐らく、今日のことで蜃様も他の皆も気づくでしょう」
「もしかして、それでここに連れてきたのか」
新月は頷いた。
「ただ、旬介も皆と会いたかったようです。でも、おかしくないですか。こんな状況本人が一番分かってるはずなのに、それを皆に知られるようなこと」
「あやつ、もしや。もっと何か隠してるのであるまいな」
新月の頭に、最悪の結末が浮かんだ。
葛葉が続けた。
「生克五霊獣の法じゃ。あれは、本来恵慈家の人間が使うものだと思う。旬介は私や蜃のように直接血を持つものでは無いのだ。かつての晴明がその血で鬼の血を封じておった為に、旬介もそうなのやもしれん」
「鬼の血ですか」
「ああ、あれは晴明の血も貰っておる。もしかして、生克五霊獣の法を使うことで、龍神である私の血の力が消えかけておるのかもしれんな」
「そんな。じゃあなんで、早くに言わないのだ」
「あれも、どうしてよいか分からんかったのだろう。もしかしたら、早くに隠居したいと言い出したのも、それが原因かもしれん。よい、今夜私が血を与えれば済む話じゃ」
そうこうしているうちに、日は落ちてきた。
「旬介のとこに戻らないと」
「私も行こう」
葛葉と新月が部屋に戻ると、まだ布団を敷かれていない畳の上で、旬介はぐったりとしていた。
それでも新月が戻ってきたのに気づき、困ったように笑いながら言った。
「ああ、なんじゃ母上も一緒か。さっき、宴会の準備が出来たと獅郎が呼びにきたぞ。さあ、行っておいで。俺は、部屋で休ませてもらうよ」
低い机に手をかけて、無理に身体を起こすので、新月は急いで旬介を支えた。
「お前の事を母上に相談していたのだ。母上が直ぐに血をくれると」
「そうじゃ、直ぐに私の血を」
旬介は、軽く新月を振り払った。
「血でどうにかなるものではあるまい。もうよい、新月。皆と楽しんでこい。その為に来たのだ」
「え?」
「俺の心配ばかりしていても、新月が辛いだけだろう」
「バカを言うな」
葛葉が旬介に近寄った。そして、宥めるように言うた。
「恐らく恵慈家の、私の血が効力を失いつつあるのだろう。晴明の鬼の血は強い。鬼の血に抗っているのだろうな。生克五霊獣の法をお前に使わせた私の責任だ」
葛葉は部屋にあった旬介の刀の刃を掴むと、掌を切った。ぎゅっと握った拳から滴る血を、新月と共に旬介の口に流し入れた。案の定、旬介は噎せたが吐くのは堪えた。
「ガキの頃以来だ。ジジイになっても、慣れんな。こればっかりは」
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