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第5章 巡りの外
第3話 原型
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吊り橋は、渡り始めた瞬間から生き物のように軋み始めた。
足を踏み出すたび、板がわずかに沈み、下から霧が這い上がってくる。
その霧の向こうから——再び、あの足音が聞こえた。
一度、間を置いて、もう一度。完璧に同じリズムで。
「……来るぞ」森が低く呟く。
霧の中に、輪郭が現れ始めた。
最初はぼやけた人影だったが、近づくにつれ、それが無数の靴跡で形作られていることがわかった。
左右の瞳の位置には何もなく、ぽっかりと空白が空いている。
それでも、視線だけは確かにこちらを射抜いていた。
「ようやく会えたな……罪人たち」
声は男にも女にも聞こえ、橋全体から響いてくるようだった。
森の手がわずかに震えた。
「何を……」
「覚えているはずだ。あの夜、部下を置き去りにして一人だけ生き延びたことを」
森は息を詰めた。翔はその横顔を見て、初めて彼がそんな過去を背負っていることを知った。
怪異は次に、水沢へ顔を向けた。
「愛した者を裏切り、彼を死に追いやった。まだ夢に見るのか?」
水沢は唇を強く噛み、言葉を失った。
森夫妻は、一歩後ずさった。
「火をつけたのはお前たちだ。保険金と引き換えに命を燃やした。あの煙の匂いを、まだ忘れられないだろう?」
里美が短く悲鳴を上げ、涼太郎の腕を掴む。
翔と結衣だけには、何も言わない。
それがかえって、二人と他の者との間に見えない境界線を引いていた。
「……お前は何者だ」翔が問う。
怪異は歪んだ足跡の顔をわずかに傾けた。
「お前たちが踏みつけてきた“道”そのものだ。罪を刻んだ足跡を、私は忘れない」
次の瞬間、橋が大きく揺れた。
霧が渦を巻き、原型の姿が一瞬だけ掻き消える——だが、足音だけは、確かに二度響いた。
足を踏み出すたび、板がわずかに沈み、下から霧が這い上がってくる。
その霧の向こうから——再び、あの足音が聞こえた。
一度、間を置いて、もう一度。完璧に同じリズムで。
「……来るぞ」森が低く呟く。
霧の中に、輪郭が現れ始めた。
最初はぼやけた人影だったが、近づくにつれ、それが無数の靴跡で形作られていることがわかった。
左右の瞳の位置には何もなく、ぽっかりと空白が空いている。
それでも、視線だけは確かにこちらを射抜いていた。
「ようやく会えたな……罪人たち」
声は男にも女にも聞こえ、橋全体から響いてくるようだった。
森の手がわずかに震えた。
「何を……」
「覚えているはずだ。あの夜、部下を置き去りにして一人だけ生き延びたことを」
森は息を詰めた。翔はその横顔を見て、初めて彼がそんな過去を背負っていることを知った。
怪異は次に、水沢へ顔を向けた。
「愛した者を裏切り、彼を死に追いやった。まだ夢に見るのか?」
水沢は唇を強く噛み、言葉を失った。
森夫妻は、一歩後ずさった。
「火をつけたのはお前たちだ。保険金と引き換えに命を燃やした。あの煙の匂いを、まだ忘れられないだろう?」
里美が短く悲鳴を上げ、涼太郎の腕を掴む。
翔と結衣だけには、何も言わない。
それがかえって、二人と他の者との間に見えない境界線を引いていた。
「……お前は何者だ」翔が問う。
怪異は歪んだ足跡の顔をわずかに傾けた。
「お前たちが踏みつけてきた“道”そのものだ。罪を刻んだ足跡を、私は忘れない」
次の瞬間、橋が大きく揺れた。
霧が渦を巻き、原型の姿が一瞬だけ掻き消える——だが、足音だけは、確かに二度響いた。
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