おはよう

あやさわえりこ

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 駅員が拡声器で利用者に呼びかけていた。
「ご利用のお客様にはご迷惑をおかけしております。十一時ごろ発生した人身事故の影響により電車が二〇分程遅延しております」
 電光掲示板には同じ文言が赤文字で書かれていた。
 二〇分も遅れているなんて、大変だ。でもこの電車じゃないと目的地まで行けない。こういう小さな困りごとは、涼ちゃんと情報共有しよっと。スマホを取り出して……『電車遅れてるんだって、用事に遅れちゃうよー』ガーンのスタンプを送る……スマホを手に、何もできないまま立ち止まる私。ラインのメッセージは昨日の表示で止まっている。
 こんな些細なことさえできない。なんでもない雑談も他愛のない話も、嬉しかったこと楽しかったことも、困ったことも。いつも送り合う「おはよう」のメッセージも打てない。
「人身事故の影響により……」
 人身事故か。そっか。この世の中、生きていくのは大変だもんね。また一人、いなくなってしまったんだ。迷惑だけど、仕方がない方法だったんだ。
 その気持ち、よくわかる。今ならよくわかるよ。
「私だって、普通でいたかった」
 電車のないホーム先によろよろと近づいていた。引き寄せられるように、ホーム先の線を、足が越えようとした。
 気持ちわかるよ。ここを越えようとした人の気持ち。涼ちゃんを傷つけた罪を償わなきゃ。

 その時、スマホがカバンの中で震えた。
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