白のマシュー

あやさわえりこ

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異変

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「おばあちゃん……どうしたの?」
 足はまだ動けずに固まったままだった。少し遠いところから、崩れたおばあちゃんを眺めているけれど、それでもわかる。
 なぜか、おばあちゃんは泣いていた。
「ゆい、ゆい……なんで」
 そうつぶやきながら。あたしはわけがわからずに立ち尽くすばかり。
「おばあちゃん、大丈夫?」
 ようやくあたしの足は言うことを聞いてくれた。お父さんとお母さんがよくやってくれたように背中をさすってあげなきゃ。
 おばあちゃんは、あたしがたどり着くまでに、よろよろと立ち上がった。しわのいくつも刻まれた手で両目をこすり、あたしにカラカラの笑みを向けてくれた。
「大丈夫だよ」
 そう言って、見え透いたウソをついた。
 よろけた体を支えるように、おばあちゃんは壁や家具をつたってソファへともたれかかった。ずいぶん疲れているらしかった。
「おばあちゃんが急に来るなんてどうしたの? 何かあったの?」
 なんだかいやな予感がする。カチ、カチ、カチ。時計の音が耳に入る。答えはすぐに返してこなかった。そもそも、おばあちゃんはちっとも答えてくれなかった。
「ゆい、ご飯は食べたかい?」
 えっ? 思わず声をもらしかけた。あまりに突然で、しかも関係のないことだったから。
「えっと、食べたよ。カップラーメン」
 おばあちゃんは口元だけつり上げてにこりとした。あたしの知っている笑い方ではない。
「そうかそうか、ならよかった。お湯を一人で沸かせたんだねぇ」
 一人じゃない。とっさにそう思った。そういえばマシューは? あたしがキョロキョロと見回してマシューを探していると、ふと気がついたときにおばあちゃんはとてもふしぎそうな顔であたしのことをのぞきこんでいた。
「ゆい、どうかしたのかい?」「あっ、えっと」
 もっと落ち着いて探そう。おばあちゃんが来てびっくりして隠れたのかもしれない。
「ずっと一人でお留守番してたんだね、ゆい。えらいね」
 あたしはすぐ言った。「ずっとじゃないよ」
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