白のマシュー

あやさわえりこ

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異変

ページ20

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 おばあちゃんたちとあたしは別々になった。おばあちゃんはおじいちゃんに肩を支えられながらお医者さんの後をついていった。あたしはというと看護師さんについていって、どこかの部屋に入ることになった。

 病院の診察室かな。看護師さんが部屋の電気をつけると、丸いいすに白のベッド。そして机の上には包帯やお薬のようなものが並んでいたのだった。なんだか学校の保健室のよう。何かけがをしたわけでもないのに、ここにつれてこられるなんて、ふしぎな気分だ。
「あの」
 あたしは思い切って呼びかけてみた。かすかな声しか出なかったけれど。
「ゆいちゃん、このベッドに座ってくれる?」
 別にお腹がいたいわけじゃないんだけどなあ。でも言われた通りに座った。座るためにマシューから手を離すと、風船のように宙に浮かんだ。
「あたし、お腹なんて痛くないよ」
 やっと言えた! ……看護師さんは部屋の扉を閉めていたけれど、聞こえていたかな。
「お腹の辺りをギュッとしていなかった?」
 看護師さんは丸いいすを引き寄せて、あたしの前に座る。今から診察しますとでも言っているよう。
「ちがうよ。ずっとマシューを抱きしめていただけだもん」
 太もものところにマシューは降り立った。ふわふわの毛並みが伝わってくる。
「……マシュー?」
 ここにいるよと、あたしはマシューの頭をなでてみた。一方で看護師のお姉さんはちょっとびっくりした顔であたしのことをながめている。
「そう。看護師さんも見えないのかな?」「ずっとその子を抱きしめていたの?」
「そうだよ」お腹は別に痛くないもん。
 看護師さんは「そっか」と言って、何も言わなくなる。
 残念そうというよりは、何か考え事をしているような様子。次にどんなことを言おうと考えている。
 やっぱりマシューのことが見えないから、おばあちゃんみたいに信じてくれないのかな。
「その、マシューっていう子は」
 マシューをなでているあたしの手を見つめて看護師さんはようやくつぶやいた。次に出す言葉は、じっくりと考えて選んだあとで。そして何かを探るようにこう訊いてきた。
「白くて、まーるい?」
 ピクッ
 と、驚いたマシューの震えがあたしの指先から伝わってきた。白くて丸いマシュー。あたしも体が勝手に上下した。この人、実はマシューが見えるのか……?
「マシューのこと見えるの?」
 驚きのあまり声が上ずっている。
「やっぱりそうなんだね」
 一人でうなずき、どうやら納得した様子の看護師さん。顔から驚きが消えて、むしろ安心した様子で明るくなった。
「白くてまあーるくて、ふわふわと宙に浮く……でしょ」
「なんでマシューのこと知ってるの?」
 すると看護師さんは首を左右に振った。知らないって意味だ。
「ゆいちゃんの『マシュー』は知らないけれど」
 小さく息を吸いこむ。
「実はお姉さん、昔は白くて丸い生き物が見えたことがあるんだよ。そのマシューちゃんとよーく似てる」
 あたしはもう一度びっくりしたけれど、マシューはそうでもなかったみたい。何も言わずに静かにあたしの足の上にいるだけ。
「……本当に? お姉さんも見たことあるの?」
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