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隠しごと
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物が無くなったのかな?
聞きたいことがいっぱいある。けれどたくさんは聞けないみたい。おじいちゃんは、目に涙を浮かべて口を閉じてしまった。
代わりにおばあちゃんが口を開いてくれた。
「いのちがなくなったってことだよ」
いのち。聞いたことのある名前だ。でも、頭の中でぼんやりと知っているだけで、ピンとこない。それがなくなるということなんか、もっとぼんやりしている。
「それがないと、おしゃべりすることも、何かを食べることも、歩くこともできないんだよ。大事なものがなくなっちゃったから」
おばあちゃんはまた鼻をすすって、続けた。この、鼻をすする音も聞き飽きた。
「いろんなことが、できなくなっちゃった」
ハンカチを取り出し、目に強く押し当てる。おばあちゃんもまた、おじいちゃんみたいに答えてくれなくなっちゃう。その前にいろんなことを聞いておきたい。
「ねえ、おばあちゃんおじいちゃん」
これだけは教えて。
おじいちゃんとおばあちゃんは顔を上げた。疲れ切ったような、しわの多い目であたしをぼんやりと力なく見つめる。
「お父さんとお母さんには、次いつ会えるの?」
あたしの聞きたかったこと。眠っていても二人は箱の中にいた。でも部屋の奥に箱だけが入れられて、あたしはお父さんとお母さんの姿が見えなくなってしまった。
それを言ったとたん、おじいちゃんもおばあちゃんも、まばたきすら忘れてしまったように固まってしまった。顔が石に変えられてしまったようになった。
「ゆい……」
おじいちゃんはあたしの目をそらしてしまう。ただでさえか細い声も途切れてしまった。
「もう……会えないよ」
静かだった。
おばあちゃんの声は、それを言うためにしぼりだされていた。
「え?」
会えない。そう聞こえたようだが……。
「また会えるの?」
「もう会えないよ」
『会える』と言われるのを、あたしは期待して待っていた。まさかその反対を言われるなんて思ってなかった。おばあちゃんは目からそらし、お父さんとお母さんが取り残された部屋を、悲しげな目で見つめているよう。その目は、冗談など言っているようではなかった。あたしにだってそれはわかる。うそを言ってはいなかった。
なんで? と、あたしの頭の上に大きなはてなマークが浮かぶ。どうして会えないのか。また会えるんじゃないか。そう思うよりほか、頭の中が真っ白になってしまった。
「なんで会えないの?」
おばあちゃんは考えこんで口をつぐんでしまった。いつも大事なことは教えてくれない。
「これから……」
言いかけたのはおじいちゃんである。目の水滴を手でふき取っていた。
「体がなくなって、おコツになるからじゃ」
「だからもう会えないの?」「そうじゃ」
なにか変なものにされるらしい。あたしが聞いたこともない、別の生き物なのか? お母さんとお父さんは、眠ったまま、よくわからないおコツという変なものに変えられてしまう! そんなことしたら、二人ともびっくりするに決まっている。
お父さんとお母さんは箱に入れられたまま、部屋の中に閉じこめられているのだ。
……助け出さなきゃ。
「あたし、お父さんとお母さんに会えなくなるなんて、いや!」
聞きたいことがいっぱいある。けれどたくさんは聞けないみたい。おじいちゃんは、目に涙を浮かべて口を閉じてしまった。
代わりにおばあちゃんが口を開いてくれた。
「いのちがなくなったってことだよ」
いのち。聞いたことのある名前だ。でも、頭の中でぼんやりと知っているだけで、ピンとこない。それがなくなるということなんか、もっとぼんやりしている。
「それがないと、おしゃべりすることも、何かを食べることも、歩くこともできないんだよ。大事なものがなくなっちゃったから」
おばあちゃんはまた鼻をすすって、続けた。この、鼻をすする音も聞き飽きた。
「いろんなことが、できなくなっちゃった」
ハンカチを取り出し、目に強く押し当てる。おばあちゃんもまた、おじいちゃんみたいに答えてくれなくなっちゃう。その前にいろんなことを聞いておきたい。
「ねえ、おばあちゃんおじいちゃん」
これだけは教えて。
おじいちゃんとおばあちゃんは顔を上げた。疲れ切ったような、しわの多い目であたしをぼんやりと力なく見つめる。
「お父さんとお母さんには、次いつ会えるの?」
あたしの聞きたかったこと。眠っていても二人は箱の中にいた。でも部屋の奥に箱だけが入れられて、あたしはお父さんとお母さんの姿が見えなくなってしまった。
それを言ったとたん、おじいちゃんもおばあちゃんも、まばたきすら忘れてしまったように固まってしまった。顔が石に変えられてしまったようになった。
「ゆい……」
おじいちゃんはあたしの目をそらしてしまう。ただでさえか細い声も途切れてしまった。
「もう……会えないよ」
静かだった。
おばあちゃんの声は、それを言うためにしぼりだされていた。
「え?」
会えない。そう聞こえたようだが……。
「また会えるの?」
「もう会えないよ」
『会える』と言われるのを、あたしは期待して待っていた。まさかその反対を言われるなんて思ってなかった。おばあちゃんは目からそらし、お父さんとお母さんが取り残された部屋を、悲しげな目で見つめているよう。その目は、冗談など言っているようではなかった。あたしにだってそれはわかる。うそを言ってはいなかった。
なんで? と、あたしの頭の上に大きなはてなマークが浮かぶ。どうして会えないのか。また会えるんじゃないか。そう思うよりほか、頭の中が真っ白になってしまった。
「なんで会えないの?」
おばあちゃんは考えこんで口をつぐんでしまった。いつも大事なことは教えてくれない。
「これから……」
言いかけたのはおじいちゃんである。目の水滴を手でふき取っていた。
「体がなくなって、おコツになるからじゃ」
「だからもう会えないの?」「そうじゃ」
なにか変なものにされるらしい。あたしが聞いたこともない、別の生き物なのか? お母さんとお父さんは、眠ったまま、よくわからないおコツという変なものに変えられてしまう! そんなことしたら、二人ともびっくりするに決まっている。
お父さんとお母さんは箱に入れられたまま、部屋の中に閉じこめられているのだ。
……助け出さなきゃ。
「あたし、お父さんとお母さんに会えなくなるなんて、いや!」
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