花はももとせ 汝はちよに

藤雪たすく

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燃える命(悪魔視点)

捕食する神

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体を起こすのも億劫なのかリーンシェントは寝て過ごしてばかりいる。

主も寝てばかりいるし、アヴィンディドールは昔からそうだった。神というのは往々にして悪魔以上に怠惰なのかもしれないな……悪魔はあまり知られていないが契約相手の望みを叶え、陥れる為に労を厭わず勤労なのだ。

ずっと観察しながら、ベランダで他の猫と一緒に寝て過ごしていたが、面白い事は何もない。

リーンシェントが食事をひっくり返したり、物を投げて暴れては寝込み、看病されるのを眺め続けるのにも飽きてきた頃……メイドの一人がリーンシェントの元に1輪の白い花を持ってきた。

そんな物喜ぶ筈があるまいとの予想通り、花弁をむしり部屋に投げ、またすぐに横になる。

「リーンシェント様……宜しいのですか?」

「何がだ?俺のする事に文句があるのか?」

「いえ……それがリーンシェント様のご意志であれば、我らはそれに従うのみ……」

リーンシェントの側近はただそう言って部屋を出て行った。

何かが起こる……その予感にワクワクと胸が騒ぎ出して出て行った側近の後を追い掛けた。

「皆の者……ついにその時が来た……覚悟は出来ているだろうか」
深刻な表情で語る側近に、集められた使用人達は涙を拭っている。
「覚悟は出来ております」
「街の者たちは?」
「何処へ逃げても同じ事……それならばリーンシェント様のお側で……と言うのがこの国の民の総意でございます」
「分かった……国民を神樹の元へ集めよ、その時まで皆でリーンシェント様に祈りを捧げよう」

これは面白い事が起きそうだと、主に報告へ向かおうと思ったが、見えない手に掴まれた様に飛び上がれなかった。この国から出る事が出来ない。

『くそっ!!くそ……何なんだこの体……自由に動かねぇし、神力は有り余ってるくせに使い物にならねぇ……』

頭に響いてくる声は……リーンシェントか。

そうか……魂を刈り取る為の契約が動き出したか。
リーンシェントは近々死ぬ。その時を逃さぬ様に一定以上契約者と離れられなくなるし、契約者の心情が流れ込んでくる。

もっと……もっと絶望の淵に立たせ苦しめる様に……絶望に染まった魂こそ美しい。

『アヴィンディドール……いや、リーンシェントと呼んだ方が良いか?』

『誰だ!!……悪魔か。貴様生きていたのか……』

契約を交わし移魂の術だけ奪い、悪魔を殺せば逃れられると画策したか。

『お陰様で……悪魔の力はお役に立てた様で、とても素晴らしいお姿ですこと』

『貴様……計ったのか、リーンシェントの体がこんな体だったなんて聞いてないぞ!!早く元に戻せ!!こんな苦しみを負いながら生きていくぐらいなら前の体の方がマシだ!!』

『ふふふ……移魂の術は1度だけとご存知でしょうに貴方の望み、皆に愛される体は手に入ったでしょう?』

『俺は!!皆に愛され、不自由ない暮らしを望んだんだ!!こんな生き方を望んだ訳じゃない!!』

『悪魔と契約を交わした者が幸せになれる訳がないでしょう?貴方はこれから苦しみ、絶望の淵に死ぬのです。安心してください、回収させて頂いた魂は我ら悪魔が有効に使わせていただきますので』

『ふざけるなっ!!何をする気だ貴様!!』

『くくくっ……』

何をする気か……そんな事はただの引き継ぎの我には分からぬ。そもそも悪魔はリーンシェントに近づく事が出来ないから、契約をした悪魔もリーンシェントについては情報を持ってはいなかっただろう。なので罠ではなく自滅。

思わせぶりな態度で焦らしてみたが、我もこれから何が起こるか楽しみにしている観客に過ぎない。

さあ、アヴィンディドール……見せてくれ、愚か者の結末を……。

ーーーーーー

数刻も経たぬうちに……それは起こった。

空から大量の火の玉が飛来して、街を焼いていく……この火、この力は……。

出来る限りリーンシェントから距離を取って身を隠した。何が起こるか楽しみにしていたが、あれはまずい……あれに近づいては魂の回収どころではない。
神樹の側に集まった人間の中に紛れ込んだ。

集まった人間共は街が焼けていくのに慌てる様子は無く、一心不乱に神樹へ向かい祈りを捧げている。

限り無く魔力を絞り、ただ目となるだけの使い魔を気付かれない様にリーンシェントの部屋へと移動させた。

ーーーーーー

「ラ……ラグゾニア……」

リーンシェントの部屋ではラグゾニアがリーンシェントの首を掴み持ち上げていた。

「リーンシェント、俺にその身を捧げる限りは、お前の国を守ってやると約束をした……それを反故にしたという事は、俺に国を滅ぼされても良いという事だよな?」

怒り狂う炎を纏いながら、その顔には笑顔を貼り付けている……ただその目の奥だけは笑ってはいないが……。

『何故ラグゾニアがここに……親父の結界はどうした……』

リーンシェントの焦りが心の声からも伝わってくる。
リーンシェントの国を取り囲むように領地を広げたラグゾニアがリーンシェントに執着を持っていたのは分かっていたが……。

『ふ……ふはははっ!!リーンシェント……そうか。大人しそうな顔をして体で安全を買っていたか。清廉な顔をしながらその裏で兄に抱かれていたとは傑作だ……ラグゾニアがリーンシェントを気に入っているのは知っていたが……くくく』

「兄様……申し訳ありません。体調が優れず……兄様を拒絶した訳ではありません……どうかお許しを」

「……何だ。そうであったか。それならばそうと言えば良いものを」

燃え盛っていた火はスッと消え、ラグゾニアはリーンシェントの体をベッドに下ろした。

「僕が兄様を拒否するなどありません。大好きな兄様……」

さすがと言うか……媚の売り方は知っている様でラグゾニアの体に擦り寄るリーンシェントは体を伸ばしてラグゾニアへ口付けをした。

この辺りは主と似ているかもしれない……急に発火し、急に鎮火する……だが……主と同じであれば……些細な事でまた発火しかねない危険な賭けだ。

口付けを交わすリーンシェントの体を太い腕で抱き締めるとラグゾニアは荒々しくその口内を貪り、リーンシェントの体を押し倒す。

まるで巨大な肉食獣が小動物を喰らっているかの様な凶悪さ。

『くっ!!やはり乱暴な男だな……痛ぇが拒否すれば何をされるか分かったもんじゃねえ……』

リーンシェントも心得ているのか、痛みに耐えながらそれを受け入れ小さな手を伸ばしてラグゾニアのモノに触れる。

「どうした?今日はやけに積極的じゃないか」

「兄様をお待たせしてしまったお詫びでございます。どうかご奉仕させて下さい」

美しい笑顔でラグゾニアのズボンの中に手を差し入れたリーンシェントに気を良くしたのかラグゾニアはズボンを下ろすと、身の丈にあった狂暴なモノを取り出すとベッドへ腰を下ろした。

『……凶器かよ。コレを突っ込まれるとか冗談じゃねえ……なんとか口で満足して貰えれば良いが』

リーンシェントは小さな口を開けるとラグゾニアのモノを咥えた。入りきれる訳はないが、命が掛かっているからか、えづきながらも必死にラグゾニアのモノを高めていく姿に満足そうに目を細めたラグゾニアはリーンシェントの体をうつ伏せに押し倒し、その服を乱暴に剥ぎ取った。

「嬉しいよ、リーンシェント……やっと俺にその心も開いてくれたのだな」

「ま……待って兄様!!お待ち下さい!!」

必死に命乞いに似た声を上げるリーンシェントを無視し、ラグゾニアは猛々しく天をついていた己のモノでリーンシェントの小さな体を一切の躊躇なく突き刺した。

「いぎゃあぁぁぁっ!!いぎっ!!がっ!!あっ!!」

無様な悲鳴を上げ痙攣し、失禁したリーンシェントを省みること無く、ラグゾニアはただ嬉しそうに思うままに腰を打ち付けていく。

涙と鼻水に汚れながら……それでもリーンシェントの顔は美しい……もう思考する力も無いのか心の声は聞こえない。

使い魔を通して聞こえるのは、突かれる度に漏れる悲鳴とラグゾニアの興奮した吐息、激しく肉のぶつかる音……。

神樹の前でリーンシェントを思い祈りを捧げる民。なまじ神力が高い為に今際の際で死ぬ事も出来ずに嫐られる哀れな神。

悪魔の方が余程甘く体を交じらせるだろう。

まるで玩具を扱うかの様に挿入したままリーンシェントの体をひっくり返したラグゾニアの体から、いきなり炎が吹き上がった。なにかがラグゾニアの逆鱗に触れた様だ。

「リーンシェント……この紋は何だ?」

リーンシェントの下腹部には悪魔と契約した印である邪淫紋が浮き上がっている。

「お前は俺の物だと言っただろう!!触れさせたのか!?俺以外の誰かに!!この体を!!」

怒り狂った神は炎を体から燃え上がらせリーンシェントの首を絞めて振り回す。
「ゔああ……あ……あ……」

リーンシェントは既に正気を保ててはいない。
不幸をもっと味合わせて魂の闇を濃くしてやりたかったが……こちらから声を掛けるのはラグゾニアに気付かれる恐れがあり危険過ぎる。

……終わったな。

肉が潰れる音と共に、噴き出す血と共にリーンシェントの首が吹き飛んだ。

その時、神樹に異変が起こる。

祈り続ける民の前で幹が光りだし、光の輪を作り出した。光の中にぼんやりとした影が浮かび上がり、やがて一人の男がゆっくりと姿を現した。
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