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芽吹く命
トリフェンさんの実力
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火が落ちる前にマラカさんはお城に戻り、ルーンヴェイン様は自分の国へ戻って行かれた。
残されたトリフェンさんと僕。
「あの……トリフェンさん、本当によろしかったのですか?ルーンヴェイン様と同じ神とはいえ、僕には貴方に何も与えて差し上げることができないのですが……」
「恩恵を求めて来たわけではありません。私の願いはただ貴方様のお役にたちたい、それだけです」
それだけと言われても……なぜ僕に?
この国の方ならともかく、外の世界の方がわざわざ僕の為にこの国まで来てくれた理由がわからない。
「家事も農作業も一通り技術は身につけております。なんでもお申し付けください」
腕まくりしたその腕も包帯が巻かれていて、どれだけの怪我を負っているのか、その時の苦しみを思うと心が痛かった。僕には想像もできない辛い目にあったのだろうに、トリフェンさんからは未来に向ける希望の感情が漲っている。
過去を悔やみ未来へ向かう事に戸惑いを持っている僕の為に、ルーンヴェイン様が彼に話をしてくれたのだろう。心強い生きる活力を持った彼の側にいると、強く在れそうな気がする。
「まずは屋敷の掃除でも、リー……アヴィンディドール様の居住にご案内して頂いてもよろしいでしょうか?」
案内してと言われても、僕の拠点は目の前にすでに見えているのだけれど。
ーーーーーー
「わ……我が主人が……まさかこんな生活を……」
寝床である洞穴の中にトリフェンさんを案内すると、トリフェンさんは崩れ落ちて涙を流した。
ここに来たことを後悔しているだろうか?次にルーンヴェイン様がお見えになった際にトリフェンさんを帰してあげられないか相談してみよう。それまでは我慢してもらうしか……マラカさんにお願いしてお城で暮らせる様にしてもらおうか。
「リ……アヴィンディドール様!!このトリフェンにお任せください!!貴方様に相応しいお住まいをご用意いたします!!」
嘆いていたと思ったのだけれど、逆にトリフェンさんは使命感に燃えている。本当に心が強い方なんだな。でも……。
トリフェンさんの手を引っ張り、すでに葉っぱの布団の上で丸まって寝ているキュイとハクのフワフワの毛の中へ一緒に身を埋めた。
「ただの洞穴でも、入り口が高いので魔物は入って来ませんし、皆でこうしてくっついて寝ると暖かいですよ、ね?」
やる気に水を差すわけではないけれど、あまり無理をして貰いたくはないので、この生活も良いところがあるのを知って欲しい。キュイとハクのこの毛並みはなかなかの癒しだと思うので、きっとトリフェンさんも気に入ってくれるだろう。
「は……はい……そうですね」
トリフェンさんは大きなハクの姿が怖いのか緊張した様に体が強張ってしまっている。
「優しい子達なので怖くないですよ」
怖がっている方に強要するのは良くないのだろうが、これから一緒に過ごすのであれば、ぜひ仲良くなってもらいたい。一緒に体を寄せ合って寝ていたら、トリフェンさんならきっとすぐに慣れてくれる。そう思い皆で団子の様に身を寄せ丸くなって一晩を明かした。
ーーーーーー
目を覚ますと、トリフェンさんの姿が無かった。
既に目を覚ましていて、僕とキュイが目覚めるのを待ってくれていたハクに聞いてみると、洞窟の外を鼻先で示された。
トリフェンさんは早起きなんだなと洞穴から降りようと梯子に足をかけようとして、梯子が降ろされていないことに気がつき、慌てて梯子を降ろした。
トリフェンさんはこの高さを飛び降りたのか……まるでハクみたいな身体能力だな。
真似をする勇気も真似ができる自信もないのでゆっくりと梯子を降りきると……畑に姿は見えないので湧水へ向かった。
「ここにもいない……」
もしかしてまだ暗い内に外に出て、道に迷ってしまったのだろうか……これで僕一人で探しに出たら、僕の方が帰って来られなくなる可能性が高いので、ハクに手伝ってもらおうと一度洞穴に戻ろうとした背後で、ガサガサと草が揺れる音がした。
魔獣だろうかと一瞬、緊張したけれどすぐにトリフェンさんが姿を見せた。
「トリフェンさん!!良かった、道に迷われてしまったのかと思いました」
「ご心配をお掛けして申し訳ございませんでした。朝食の準備をと思ったのですが何も食材が無かったものですから……」
そう言ってトリフェンさんは、掴んでいた大きな鳥を持ち上げた。鳥の胸には矢が刺さっている。
「弓矢なんて持っていらっしゃいましたか?」
「即席で作ったのですが……駄目ですね。一本撃つと壊れてしまいました」
一発で仕留めたんだ……十分だと思いますが……。
でもそうか……トリフェンさんの体だと、木の実だけでお腹を満たすのは難しい……やはりマラカさんと一緒にお城で暮らして貰った方が良いだろう。
「トリフェンさん、申し訳ないのですが、調理器具はおろか、火を起こす道具もありませんので、その鳥を持ってお城へ向かっていただけますか?マラカさんに事情を話していただけたらそこで生活をさせていただけると思いますので……」
「調理器具が……無い?」
包帯の間から見えるトリフェンさんの目が鋭くなった気がして慌てて弁解をする。
「街は!!多少ではありますが生活するのに困らないだけの設備はありますから!!マラカさんはとても国民思いの素敵な方です。必ずトリフェンさんの事も受け入れてくれます」
調理器具も無いほど文化の発展を疎かにしていた駄目な神だと呆れられてしまったかもしれない。
「街の事は知りません!!貴方は?今までどうやって、何を食べて来ていたのですか!?」
「え……この森には木の実がありますから……十分「十分なものですか!!こんなに痩せてしまわれて……私が来たからにはもう二度と貴方にひもじい思いはさせませんから!!」
キュイも木の実集めを手伝ってくれるから、ひもじい思いをした覚えは無いけれど……トリフェンさんも昔の僕を知っているのか。
「トリフェンさんとは以前お会いしていたのですね。気付かずに申し訳ありませんでした」
「論点をずらさないで下さい!!私がお食事を用意しますので、ちゃんと食べていただきますよ!!良いですね!!」
トリフェンさんの勢いに頷くしか無かった。
でも包丁も無いのにどうやって……生肉を食べるのはちょっと……でも、僕の為を思ってやってくれるのなら、頑張るしかないだろうか?
残されたトリフェンさんと僕。
「あの……トリフェンさん、本当によろしかったのですか?ルーンヴェイン様と同じ神とはいえ、僕には貴方に何も与えて差し上げることができないのですが……」
「恩恵を求めて来たわけではありません。私の願いはただ貴方様のお役にたちたい、それだけです」
それだけと言われても……なぜ僕に?
この国の方ならともかく、外の世界の方がわざわざ僕の為にこの国まで来てくれた理由がわからない。
「家事も農作業も一通り技術は身につけております。なんでもお申し付けください」
腕まくりしたその腕も包帯が巻かれていて、どれだけの怪我を負っているのか、その時の苦しみを思うと心が痛かった。僕には想像もできない辛い目にあったのだろうに、トリフェンさんからは未来に向ける希望の感情が漲っている。
過去を悔やみ未来へ向かう事に戸惑いを持っている僕の為に、ルーンヴェイン様が彼に話をしてくれたのだろう。心強い生きる活力を持った彼の側にいると、強く在れそうな気がする。
「まずは屋敷の掃除でも、リー……アヴィンディドール様の居住にご案内して頂いてもよろしいでしょうか?」
案内してと言われても、僕の拠点は目の前にすでに見えているのだけれど。
ーーーーーー
「わ……我が主人が……まさかこんな生活を……」
寝床である洞穴の中にトリフェンさんを案内すると、トリフェンさんは崩れ落ちて涙を流した。
ここに来たことを後悔しているだろうか?次にルーンヴェイン様がお見えになった際にトリフェンさんを帰してあげられないか相談してみよう。それまでは我慢してもらうしか……マラカさんにお願いしてお城で暮らせる様にしてもらおうか。
「リ……アヴィンディドール様!!このトリフェンにお任せください!!貴方様に相応しいお住まいをご用意いたします!!」
嘆いていたと思ったのだけれど、逆にトリフェンさんは使命感に燃えている。本当に心が強い方なんだな。でも……。
トリフェンさんの手を引っ張り、すでに葉っぱの布団の上で丸まって寝ているキュイとハクのフワフワの毛の中へ一緒に身を埋めた。
「ただの洞穴でも、入り口が高いので魔物は入って来ませんし、皆でこうしてくっついて寝ると暖かいですよ、ね?」
やる気に水を差すわけではないけれど、あまり無理をして貰いたくはないので、この生活も良いところがあるのを知って欲しい。キュイとハクのこの毛並みはなかなかの癒しだと思うので、きっとトリフェンさんも気に入ってくれるだろう。
「は……はい……そうですね」
トリフェンさんは大きなハクの姿が怖いのか緊張した様に体が強張ってしまっている。
「優しい子達なので怖くないですよ」
怖がっている方に強要するのは良くないのだろうが、これから一緒に過ごすのであれば、ぜひ仲良くなってもらいたい。一緒に体を寄せ合って寝ていたら、トリフェンさんならきっとすぐに慣れてくれる。そう思い皆で団子の様に身を寄せ丸くなって一晩を明かした。
ーーーーーー
目を覚ますと、トリフェンさんの姿が無かった。
既に目を覚ましていて、僕とキュイが目覚めるのを待ってくれていたハクに聞いてみると、洞窟の外を鼻先で示された。
トリフェンさんは早起きなんだなと洞穴から降りようと梯子に足をかけようとして、梯子が降ろされていないことに気がつき、慌てて梯子を降ろした。
トリフェンさんはこの高さを飛び降りたのか……まるでハクみたいな身体能力だな。
真似をする勇気も真似ができる自信もないのでゆっくりと梯子を降りきると……畑に姿は見えないので湧水へ向かった。
「ここにもいない……」
もしかしてまだ暗い内に外に出て、道に迷ってしまったのだろうか……これで僕一人で探しに出たら、僕の方が帰って来られなくなる可能性が高いので、ハクに手伝ってもらおうと一度洞穴に戻ろうとした背後で、ガサガサと草が揺れる音がした。
魔獣だろうかと一瞬、緊張したけれどすぐにトリフェンさんが姿を見せた。
「トリフェンさん!!良かった、道に迷われてしまったのかと思いました」
「ご心配をお掛けして申し訳ございませんでした。朝食の準備をと思ったのですが何も食材が無かったものですから……」
そう言ってトリフェンさんは、掴んでいた大きな鳥を持ち上げた。鳥の胸には矢が刺さっている。
「弓矢なんて持っていらっしゃいましたか?」
「即席で作ったのですが……駄目ですね。一本撃つと壊れてしまいました」
一発で仕留めたんだ……十分だと思いますが……。
でもそうか……トリフェンさんの体だと、木の実だけでお腹を満たすのは難しい……やはりマラカさんと一緒にお城で暮らして貰った方が良いだろう。
「トリフェンさん、申し訳ないのですが、調理器具はおろか、火を起こす道具もありませんので、その鳥を持ってお城へ向かっていただけますか?マラカさんに事情を話していただけたらそこで生活をさせていただけると思いますので……」
「調理器具が……無い?」
包帯の間から見えるトリフェンさんの目が鋭くなった気がして慌てて弁解をする。
「街は!!多少ではありますが生活するのに困らないだけの設備はありますから!!マラカさんはとても国民思いの素敵な方です。必ずトリフェンさんの事も受け入れてくれます」
調理器具も無いほど文化の発展を疎かにしていた駄目な神だと呆れられてしまったかもしれない。
「街の事は知りません!!貴方は?今までどうやって、何を食べて来ていたのですか!?」
「え……この森には木の実がありますから……十分「十分なものですか!!こんなに痩せてしまわれて……私が来たからにはもう二度と貴方にひもじい思いはさせませんから!!」
キュイも木の実集めを手伝ってくれるから、ひもじい思いをした覚えは無いけれど……トリフェンさんも昔の僕を知っているのか。
「トリフェンさんとは以前お会いしていたのですね。気付かずに申し訳ありませんでした」
「論点をずらさないで下さい!!私がお食事を用意しますので、ちゃんと食べていただきますよ!!良いですね!!」
トリフェンさんの勢いに頷くしか無かった。
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