花はももとせ 汝はちよに

藤雪たすく

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芽吹く命

神より神がかっている人

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トリフェンさんは……人間だと思っていたのだけれど、少し認識を変えた方が良いかもしれない。

石と石をぶつけて何をしているのかと思ったら、あっという間に火を起こしてしまった。
石で釜戸を作ってしまうし、鳥を焼いている間に石で刃物まで作ってしまい、焼けた鳥の肉をお皿代わりの大きな葉の上に切り分けてくれている。

「凄いですね……側近をなさっていた方には、これが普通なのですか?」

簡単に石を砕いたり、木を蹴り倒してしまう力もさることながら、その知識量も器用さも僕の思う人間の姿とはかけ離れている。

「主人を守る為の術は一通り……」

マラカさんも強い人だったから、側近というお仕事はとても大変なのだろう。
僕の前にとても良い匂いのする焼き鳥を差し出して、動かずにジッと僕の動きに意識を向けているトリフェンさんにお箸で持ち上げたお肉を差し出した。

「トリフェンさん、お口……開けていただけますか」

口元に差し出しても、トリフェンは口を開けてくれない。

「トリフェンさんが、狩って調理した物です。一番に食べる権利がありますよね?」

「毒味……毒味の義務ですね。そうこれは毒味、毒味だ」

ぶつぶつ『毒味』を繰り返しながらトリフェンさんはやっとお肉を食べてくれた。
咀嚼するのを見て、僕もいただきますとお肉を口へ入れた。

こんがりと焼けた皮とふっくらとした身、淡白な味かと思っていたが、どこから手に入れたのかわからないけれど味付けがなされていた。

木の実以外の物を口にしたのは、かなり久しい。
お城でのあの食事以来……あのご馳走よりもただ焼いただけのこの肉の方がとても美味しく感じる。ちゃんと食べている、平気だと思っていたけれど……案外平気ではなかったのかもしれない。

「とても美味しいです。ありがとうございます……トリフェンさん……あれ?」

ボロボロと溢れる涙がお皿の上に落ちていく。

「トリフェンさんの前だと、僕は泣き虫になるみたいです」

非道な事をしてきて苦しめ続けていた自国の民ではないからか、トリフェンさんの前では引き締めていた心が緩むみたいだ。酷い事をいっぱいしてきて、今更マラカさん達には甘えられないと我慢してきたものが……優しい味の料理に溢れ出させられた。

気づかない様にしていた空腹も、誰にも必要とされていない寂しさも、何も出来ない不甲斐なさも……全部引き出されてしまう。

「涙を見せてくれるのは心を許してくれている様で光栄に思いますよ。昔からあなたは……弱い部分を見せてはくれませんでしたから……」

昔から?トリフェンさんと僕はどんな関係だったんだろう?
思い出せないことが申し訳なくて、止まっていた箸をトリフェンさんに抜き取られた。

「さ、アヴィンディドール様、料理は食べ頃のうちに食べるのが作った者への礼儀です。早く食べて下さいね」

トリフェンさんが箸で持ち上げて口元へ差し出された鶏肉を口へ収める。
やっぱり美味しい……程よく弾力のある肉を咀嚼しながら不思議な感覚に首を傾げた。

マラカさんだったら絶対拒否してた。ルーンヴェイン様でもお断りすると思う……なんで僕はなんの躊躇いも無くその肉を受け取ったのか。

「美味しいですか?」

「美味しいです」

また差し出されて、また条件反射の様に肉を口で受け取った。
トリフェンさんは当たり前のことの様に普通に見える……う~ん……トリフェンさん、不思議な人だ。

ーーーーーー

本当に不思議な人……どうして家が出来てるんだろう。

トリフェンさんに留守番を頼んで、川作りの続きへ向かい帰ってきてみると丸太を組んでできた家が建っていた。

本当に何者なんだ、トリフェンさん。
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