29 / 30
芽吹く命
神より神がかっている人
しおりを挟む
トリフェンさんは……人間だと思っていたのだけれど、少し認識を変えた方が良いかもしれない。
石と石をぶつけて何をしているのかと思ったら、あっという間に火を起こしてしまった。
石で釜戸を作ってしまうし、鳥を焼いている間に石で刃物まで作ってしまい、焼けた鳥の肉をお皿代わりの大きな葉の上に切り分けてくれている。
「凄いですね……側近をなさっていた方には、これが普通なのですか?」
簡単に石を砕いたり、木を蹴り倒してしまう力もさることながら、その知識量も器用さも僕の思う人間の姿とはかけ離れている。
「主人を守る為の術は一通り……」
マラカさんも強い人だったから、側近というお仕事はとても大変なのだろう。
僕の前にとても良い匂いのする焼き鳥を差し出して、動かずにジッと僕の動きに意識を向けているトリフェンさんにお箸で持ち上げたお肉を差し出した。
「トリフェンさん、お口……開けていただけますか」
口元に差し出しても、トリフェンは口を開けてくれない。
「トリフェンさんが、狩って調理した物です。一番に食べる権利がありますよね?」
「毒味……毒味の義務ですね。そうこれは毒味、毒味だ」
ぶつぶつ『毒味』を繰り返しながらトリフェンさんはやっとお肉を食べてくれた。
咀嚼するのを見て、僕もいただきますとお肉を口へ入れた。
こんがりと焼けた皮とふっくらとした身、淡白な味かと思っていたが、どこから手に入れたのかわからないけれど味付けがなされていた。
木の実以外の物を口にしたのは、かなり久しい。
お城でのあの食事以来……あのご馳走よりもただ焼いただけのこの肉の方がとても美味しく感じる。ちゃんと食べている、平気だと思っていたけれど……案外平気ではなかったのかもしれない。
「とても美味しいです。ありがとうございます……トリフェンさん……あれ?」
ボロボロと溢れる涙がお皿の上に落ちていく。
「トリフェンさんの前だと、僕は泣き虫になるみたいです」
非道な事をしてきて苦しめ続けていた自国の民ではないからか、トリフェンさんの前では引き締めていた心が緩むみたいだ。酷い事をいっぱいしてきて、今更マラカさん達には甘えられないと我慢してきたものが……優しい味の料理に溢れ出させられた。
気づかない様にしていた空腹も、誰にも必要とされていない寂しさも、何も出来ない不甲斐なさも……全部引き出されてしまう。
「涙を見せてくれるのは心を許してくれている様で光栄に思いますよ。昔からあなたは……弱い部分を見せてはくれませんでしたから……」
昔から?トリフェンさんと僕はどんな関係だったんだろう?
思い出せないことが申し訳なくて、止まっていた箸をトリフェンさんに抜き取られた。
「さ、アヴィンディドール様、料理は食べ頃のうちに食べるのが作った者への礼儀です。早く食べて下さいね」
トリフェンさんが箸で持ち上げて口元へ差し出された鶏肉を口へ収める。
やっぱり美味しい……程よく弾力のある肉を咀嚼しながら不思議な感覚に首を傾げた。
マラカさんだったら絶対拒否してた。ルーンヴェイン様でもお断りすると思う……なんで僕はなんの躊躇いも無くその肉を受け取ったのか。
「美味しいですか?」
「美味しいです」
また差し出されて、また条件反射の様に肉を口で受け取った。
トリフェンさんは当たり前のことの様に普通に見える……う~ん……トリフェンさん、不思議な人だ。
ーーーーーー
本当に不思議な人……どうして家が出来てるんだろう。
トリフェンさんに留守番を頼んで、川作りの続きへ向かい帰ってきてみると丸太を組んでできた家が建っていた。
本当に何者なんだ、トリフェンさん。
石と石をぶつけて何をしているのかと思ったら、あっという間に火を起こしてしまった。
石で釜戸を作ってしまうし、鳥を焼いている間に石で刃物まで作ってしまい、焼けた鳥の肉をお皿代わりの大きな葉の上に切り分けてくれている。
「凄いですね……側近をなさっていた方には、これが普通なのですか?」
簡単に石を砕いたり、木を蹴り倒してしまう力もさることながら、その知識量も器用さも僕の思う人間の姿とはかけ離れている。
「主人を守る為の術は一通り……」
マラカさんも強い人だったから、側近というお仕事はとても大変なのだろう。
僕の前にとても良い匂いのする焼き鳥を差し出して、動かずにジッと僕の動きに意識を向けているトリフェンさんにお箸で持ち上げたお肉を差し出した。
「トリフェンさん、お口……開けていただけますか」
口元に差し出しても、トリフェンは口を開けてくれない。
「トリフェンさんが、狩って調理した物です。一番に食べる権利がありますよね?」
「毒味……毒味の義務ですね。そうこれは毒味、毒味だ」
ぶつぶつ『毒味』を繰り返しながらトリフェンさんはやっとお肉を食べてくれた。
咀嚼するのを見て、僕もいただきますとお肉を口へ入れた。
こんがりと焼けた皮とふっくらとした身、淡白な味かと思っていたが、どこから手に入れたのかわからないけれど味付けがなされていた。
木の実以外の物を口にしたのは、かなり久しい。
お城でのあの食事以来……あのご馳走よりもただ焼いただけのこの肉の方がとても美味しく感じる。ちゃんと食べている、平気だと思っていたけれど……案外平気ではなかったのかもしれない。
「とても美味しいです。ありがとうございます……トリフェンさん……あれ?」
ボロボロと溢れる涙がお皿の上に落ちていく。
「トリフェンさんの前だと、僕は泣き虫になるみたいです」
非道な事をしてきて苦しめ続けていた自国の民ではないからか、トリフェンさんの前では引き締めていた心が緩むみたいだ。酷い事をいっぱいしてきて、今更マラカさん達には甘えられないと我慢してきたものが……優しい味の料理に溢れ出させられた。
気づかない様にしていた空腹も、誰にも必要とされていない寂しさも、何も出来ない不甲斐なさも……全部引き出されてしまう。
「涙を見せてくれるのは心を許してくれている様で光栄に思いますよ。昔からあなたは……弱い部分を見せてはくれませんでしたから……」
昔から?トリフェンさんと僕はどんな関係だったんだろう?
思い出せないことが申し訳なくて、止まっていた箸をトリフェンさんに抜き取られた。
「さ、アヴィンディドール様、料理は食べ頃のうちに食べるのが作った者への礼儀です。早く食べて下さいね」
トリフェンさんが箸で持ち上げて口元へ差し出された鶏肉を口へ収める。
やっぱり美味しい……程よく弾力のある肉を咀嚼しながら不思議な感覚に首を傾げた。
マラカさんだったら絶対拒否してた。ルーンヴェイン様でもお断りすると思う……なんで僕はなんの躊躇いも無くその肉を受け取ったのか。
「美味しいですか?」
「美味しいです」
また差し出されて、また条件反射の様に肉を口で受け取った。
トリフェンさんは当たり前のことの様に普通に見える……う~ん……トリフェンさん、不思議な人だ。
ーーーーーー
本当に不思議な人……どうして家が出来てるんだろう。
トリフェンさんに留守番を頼んで、川作りの続きへ向かい帰ってきてみると丸太を組んでできた家が建っていた。
本当に何者なんだ、トリフェンさん。
0
あなたにおすすめの小説
【本編完結】処刑台の元婚約者は無実でした~聖女に騙された元王太子が幸せになるまで~
TOY
BL
【本編完結・後日譚更新中】
公開処刑のその日、王太子メルドは元婚約者で“稀代の悪女”とされたレイチェルの最期を見届けようとしていた。
しかし「最後のお別れの挨拶」で現婚約者候補の“聖女”アリアの裏の顔を、偶然にも暴いてしまい……!?
王位継承権、婚約、信頼、すべてを失った王子のもとに残ったのは、幼馴染であり護衛騎士のケイ。
これは、聖女に騙され全てを失った王子と、その護衛騎士のちょっとズレた恋の物語。
※別で投稿している作品、
『物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら』の全年齢版です。
設定と後半の展開が少し変わっています。
※後日譚を追加しました。
後日譚① レイチェル視点→メルド視点
後日譚② 王弟→王→ケイ視点
後日譚③ メルド視点
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる