花はももとせ 汝はちよに

藤雪たすく

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芽吹く命

償いは神の恵みで

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「お帰りなさいませアヴィンディドール様」

幻でも見せられているのかと家を眺めていた僕の姿を見つけて、明るい声でトリフェンさんが走ってきた。

「……家ですね」

「はい、いくらロードフォクスの毛皮が暖かいとはいえ、これから冷える季節が来れば体を壊してしまします。ロードフォクス達の部屋も用意してありますので、どうぞこちらへ……」

トリフェンさんに抱き上げられる。
包帯の間から除く青い瞳はやはりどこまでも真っ直ぐに優しい。

「汚れてしまいますよ」

川の造成で泥だらけだった僕をトリフェンさんは全く気にせず抱き上げている。

「汚れたままだと貴方は汚してしまうと家に入って来てはくれないでしょう?お風呂の支度もできております。そこまでお連れいたしますのでゆっくり汚れと疲れを落としてきてください」

トリフェンさんに抱き上げられたまま家の中へ入ると……室内もきちんと作られていた。
扉や家具などは流石になかったけれど、いくつかの部屋に分かれている。
部屋を案内される前にそのまま浴室まで運ばれた。

ーーーーーー

暖かいお湯にのんびり浸かるなんて何日ぶりだろう。
火を起こすのも何となくの記憶でやって見たけれど、煙すら立たず断念したのだけれど……。

「温かい……」

人並みの生活……良いのだろうか?僕が犯してきた罪はまだまだ償いなんて出来ていないはず。
そんな僕がこんな快適な暮らしをしても良いのだろうか?
亡くなった方への償いは出来ないけれど、せめて今生きている街の人々達の生活の為に全てを捧げると誓ったのに。
……なのに。

ーーーーーー

ひんやりとした物がまぶたの上に乗せられた。

「気持ちいい……」

「気が付かれましたか?」

トリフェンさんの声に目を開けたけれど、目の前は真っ暗。
まぶたの上に乗せられていた冷たい布を持ち上げられるとトリフェンさんがこちらを見下ろしながら団扇で扇いでくれていた。膝枕……?

「お風呂で逆上せてしまっていたんですよ。逆上せる前に声を掛けられなくて申し訳ありません」

トリフェンさんが申し訳なく思う必要は全くない。

「久々のお風呂ではしゃいでしまったようです……迷惑をおかけしてすみません」
起き上げようとした体を軽い力で戻される。

「私はこの国の人間ではありませんので、どうか私の前だけでもゆっくりお休みください」

ゆっくりと、ゆっくりと髪を乾かしながら櫛で梳かしてくれている。

「貴方の命を削る事が国民への償いにはなりませんよ。例えどんな悪政であっても人間は神に従うのみ……貴方が今すべき事はその体を崩す事ではなく、同じ過ちを繰り返さずに体調を整え……神力でこの国を豊かにする事でしょう」

ルーンヴェイン様かマラカさんに事情を聞いているのか、トリフェンさんは僕の事にとても詳しい。
一応神である僕がこんな事を人間であるトリフェンさんに聞いてどうなるかわからないけれど……。

「僕は神力の使い方がわからないのです……信者もいませんし……誰も救ってはあげられない」

情けない発言にもトリフェンさんはその青い瞳を優しく細めた。

「では私と練習いたしましょう。この世界中の誰もが貴方を嫌っていたとしても、このトリフェンのいる限り、貴方の神力が尽きる事はあり得ませんから……」

トリフェンさんは神力の事に関しても精通しているのか。

「トリフェンさん……お願いいたします。僕は……この国を豊かな国にしたいです。マラカさん、麦の種を分けてくれたおじいさん、キュイ達が飢えることの無い国にしたいです」

「貴方が望めばこの国……世界を変えられますよ。今は休んでください……明日から二人で特訓ですね」

世界を変えるなんて……そんな大それた事までは望んでないけれど……トリフェンさんが言うと本当にそうなってしまいそうで思わず笑ってしまった。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

セロリ
2021.10.05 セロリ
ネタバレ含む
2021.10.05 藤雪たすく

感想ありがとうございます。
長い前置きも終わり、サイドに若干の鬱展開も挟みつつ……メインは愛され無双に入れそうです。

解除

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