30 / 30
芽吹く命
償いは神の恵みで
しおりを挟む
「お帰りなさいませアヴィンディドール様」
幻でも見せられているのかと家を眺めていた僕の姿を見つけて、明るい声でトリフェンさんが走ってきた。
「……家ですね」
「はい、いくらロードフォクスの毛皮が暖かいとはいえ、これから冷える季節が来れば体を壊してしまします。ロードフォクス達の部屋も用意してありますので、どうぞこちらへ……」
トリフェンさんに抱き上げられる。
包帯の間から除く青い瞳はやはりどこまでも真っ直ぐに優しい。
「汚れてしまいますよ」
川の造成で泥だらけだった僕をトリフェンさんは全く気にせず抱き上げている。
「汚れたままだと貴方は汚してしまうと家に入って来てはくれないでしょう?お風呂の支度もできております。そこまでお連れいたしますのでゆっくり汚れと疲れを落としてきてください」
トリフェンさんに抱き上げられたまま家の中へ入ると……室内もきちんと作られていた。
扉や家具などは流石になかったけれど、いくつかの部屋に分かれている。
部屋を案内される前にそのまま浴室まで運ばれた。
ーーーーーー
暖かいお湯にのんびり浸かるなんて何日ぶりだろう。
火を起こすのも何となくの記憶でやって見たけれど、煙すら立たず断念したのだけれど……。
「温かい……」
人並みの生活……良いのだろうか?僕が犯してきた罪はまだまだ償いなんて出来ていないはず。
そんな僕がこんな快適な暮らしをしても良いのだろうか?
亡くなった方への償いは出来ないけれど、せめて今生きている街の人々達の生活の為に全てを捧げると誓ったのに。
……なのに。
ーーーーーー
ひんやりとした物がまぶたの上に乗せられた。
「気持ちいい……」
「気が付かれましたか?」
トリフェンさんの声に目を開けたけれど、目の前は真っ暗。
まぶたの上に乗せられていた冷たい布を持ち上げられるとトリフェンさんがこちらを見下ろしながら団扇で扇いでくれていた。膝枕……?
「お風呂で逆上せてしまっていたんですよ。逆上せる前に声を掛けられなくて申し訳ありません」
トリフェンさんが申し訳なく思う必要は全くない。
「久々のお風呂ではしゃいでしまったようです……迷惑をおかけしてすみません」
起き上げようとした体を軽い力で戻される。
「私はこの国の人間ではありませんので、どうか私の前だけでもゆっくりお休みください」
ゆっくりと、ゆっくりと髪を乾かしながら櫛で梳かしてくれている。
「貴方の命を削る事が国民への償いにはなりませんよ。例えどんな悪政であっても人間は神に従うのみ……貴方が今すべき事はその体を崩す事ではなく、同じ過ちを繰り返さずに体調を整え……神力でこの国を豊かにする事でしょう」
ルーンヴェイン様かマラカさんに事情を聞いているのか、トリフェンさんは僕の事にとても詳しい。
一応神である僕がこんな事を人間であるトリフェンさんに聞いてどうなるかわからないけれど……。
「僕は神力の使い方がわからないのです……信者もいませんし……誰も救ってはあげられない」
情けない発言にもトリフェンさんはその青い瞳を優しく細めた。
「では私と練習いたしましょう。この世界中の誰もが貴方を嫌っていたとしても、このトリフェンのいる限り、貴方の神力が尽きる事はあり得ませんから……」
トリフェンさんは神力の事に関しても精通しているのか。
「トリフェンさん……お願いいたします。僕は……この国を豊かな国にしたいです。マラカさん、麦の種を分けてくれたおじいさん、キュイ達が飢えることの無い国にしたいです」
「貴方が望めばこの国……世界を変えられますよ。今は休んでください……明日から二人で特訓ですね」
世界を変えるなんて……そんな大それた事までは望んでないけれど……トリフェンさんが言うと本当にそうなってしまいそうで思わず笑ってしまった。
幻でも見せられているのかと家を眺めていた僕の姿を見つけて、明るい声でトリフェンさんが走ってきた。
「……家ですね」
「はい、いくらロードフォクスの毛皮が暖かいとはいえ、これから冷える季節が来れば体を壊してしまします。ロードフォクス達の部屋も用意してありますので、どうぞこちらへ……」
トリフェンさんに抱き上げられる。
包帯の間から除く青い瞳はやはりどこまでも真っ直ぐに優しい。
「汚れてしまいますよ」
川の造成で泥だらけだった僕をトリフェンさんは全く気にせず抱き上げている。
「汚れたままだと貴方は汚してしまうと家に入って来てはくれないでしょう?お風呂の支度もできております。そこまでお連れいたしますのでゆっくり汚れと疲れを落としてきてください」
トリフェンさんに抱き上げられたまま家の中へ入ると……室内もきちんと作られていた。
扉や家具などは流石になかったけれど、いくつかの部屋に分かれている。
部屋を案内される前にそのまま浴室まで運ばれた。
ーーーーーー
暖かいお湯にのんびり浸かるなんて何日ぶりだろう。
火を起こすのも何となくの記憶でやって見たけれど、煙すら立たず断念したのだけれど……。
「温かい……」
人並みの生活……良いのだろうか?僕が犯してきた罪はまだまだ償いなんて出来ていないはず。
そんな僕がこんな快適な暮らしをしても良いのだろうか?
亡くなった方への償いは出来ないけれど、せめて今生きている街の人々達の生活の為に全てを捧げると誓ったのに。
……なのに。
ーーーーーー
ひんやりとした物がまぶたの上に乗せられた。
「気持ちいい……」
「気が付かれましたか?」
トリフェンさんの声に目を開けたけれど、目の前は真っ暗。
まぶたの上に乗せられていた冷たい布を持ち上げられるとトリフェンさんがこちらを見下ろしながら団扇で扇いでくれていた。膝枕……?
「お風呂で逆上せてしまっていたんですよ。逆上せる前に声を掛けられなくて申し訳ありません」
トリフェンさんが申し訳なく思う必要は全くない。
「久々のお風呂ではしゃいでしまったようです……迷惑をおかけしてすみません」
起き上げようとした体を軽い力で戻される。
「私はこの国の人間ではありませんので、どうか私の前だけでもゆっくりお休みください」
ゆっくりと、ゆっくりと髪を乾かしながら櫛で梳かしてくれている。
「貴方の命を削る事が国民への償いにはなりませんよ。例えどんな悪政であっても人間は神に従うのみ……貴方が今すべき事はその体を崩す事ではなく、同じ過ちを繰り返さずに体調を整え……神力でこの国を豊かにする事でしょう」
ルーンヴェイン様かマラカさんに事情を聞いているのか、トリフェンさんは僕の事にとても詳しい。
一応神である僕がこんな事を人間であるトリフェンさんに聞いてどうなるかわからないけれど……。
「僕は神力の使い方がわからないのです……信者もいませんし……誰も救ってはあげられない」
情けない発言にもトリフェンさんはその青い瞳を優しく細めた。
「では私と練習いたしましょう。この世界中の誰もが貴方を嫌っていたとしても、このトリフェンのいる限り、貴方の神力が尽きる事はあり得ませんから……」
トリフェンさんは神力の事に関しても精通しているのか。
「トリフェンさん……お願いいたします。僕は……この国を豊かな国にしたいです。マラカさん、麦の種を分けてくれたおじいさん、キュイ達が飢えることの無い国にしたいです」
「貴方が望めばこの国……世界を変えられますよ。今は休んでください……明日から二人で特訓ですね」
世界を変えるなんて……そんな大それた事までは望んでないけれど……トリフェンさんが言うと本当にそうなってしまいそうで思わず笑ってしまった。
10
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
【本編完結】処刑台の元婚約者は無実でした~聖女に騙された元王太子が幸せになるまで~
TOY
BL
【本編完結・後日譚更新中】
公開処刑のその日、王太子メルドは元婚約者で“稀代の悪女”とされたレイチェルの最期を見届けようとしていた。
しかし「最後のお別れの挨拶」で現婚約者候補の“聖女”アリアの裏の顔を、偶然にも暴いてしまい……!?
王位継承権、婚約、信頼、すべてを失った王子のもとに残ったのは、幼馴染であり護衛騎士のケイ。
これは、聖女に騙され全てを失った王子と、その護衛騎士のちょっとズレた恋の物語。
※別で投稿している作品、
『物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら』の全年齢版です。
設定と後半の展開が少し変わっています。
※後日譚を追加しました。
後日譚① レイチェル視点→メルド視点
後日譚② 王弟→王→ケイ視点
後日譚③ メルド視点
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
感想ありがとうございます。
長い前置きも終わり、サイドに若干の鬱展開も挟みつつ……メインは愛され無双に入れそうです。