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理想世界
妄想構築
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……一ヶ月停学をくらった。
警察沙汰にはならなかったが、校内で暴力を振るったからだ。
喧嘩の理由はそいつらが俺の好きな子を傷つけたから。
その一件に関わった奴らを殴って怪我をさせた。
進学に必死にしがみつく気もないので、別にそれはどうでもいいし、後悔もしていない。
ただ宮尾に会えないのが不満だった。
この鬱憤をはらす為に趣味でやっていたゲームの製作をして過ごした。
黒板に張り出された、俺と宮尾がセックスしてるコラージュ写真。
出来は最悪。
あんな気持ち悪い汚い男優の体に俺の可愛い宮尾の顔をくっつけるとかあり得ない。
俺が本当の宮尾の可愛さを表現してやろうじゃないか。
俺の知る知識と技術で最高の宮尾を作り上げた。
『ショーリ君、大好き』
音声合成して……台詞を読ませているだけなのにドキドキしてしまう。
……宮尾作りに夢中になっていると一ヶ月なんてあっという間だった。
停学が明けて、やっと本物の宮尾に会えると胸を高鳴らせて学校へ行くと……。
そこに宮尾はいなかった。
ーーーーーー
高校一年の春。
新入生の歓迎として入学したてで行われた、スタンプラリーとかくそだるいだけのレクリエーション。
班決めとかかったるい。
4人1組になれと教師のやる気のない言葉に、教室の端で人と話すのが苦手なのか俯いて不安げな瞳……誰にも声をかけられず、班決めであぶれていた彼に声を掛けたのは気まぐれだった。
大人しそうなその雰囲気から頼めばなんでもいう事を聞きそうだと踏んで声を掛けると、縋る様に見上げられたその猫の様な大きな瞳が俺を真っ直ぐに見た瞬間……俺は恋に落ちた。
中学の頃に少々暴れ回っていたので顔なじみの多いこの学校でも、目を合わせるとよそよそしく目を逸らされるが、捕まえて声をかければ皆頷いていう事を聞くので俺に逆らわない残りの面子も集まった。
彼とどうにかして仲良く……友達以上の関係になりたかった。
見てるだけなんてもどかしすぎる……でも必要以上に近づくと距離を取られる。
宮尾……ミャオちゃん。
名前だけじゃなく本当に猫みたい。
雨の中、不良が猫を拾うなんてお決まりのパターンがあるけど……わかる。
あんな目で見詰められたら放ってなんていられない。
甘えて欲しいなぁ……慌てずゆっくり距離を縮めていこう。
……自分でもビックリするぐらい俺は気長だったみたいだ。
何もないまま3年になった。
高校に入って宮尾に嫌われたくなくて大人しくしていたが、いまだにしつこく俺に恨みを持っている奴らがいた……それでも真っ正面から立ち向かって来る様な奴はいなかったし、放っておいたが……もっとしっかりきっちりシメておくんだった。
廊下で偶々宮尾を見かけ、嬉しくて呼び止めた。
走っていたので勢いがついていて立ち止まった宮尾とぶつかりそうになる。
思ったより近くにある宮尾の顔。
見上げてきた宮尾が真っ赤に顔を染め……その顔があんまりにも可愛くて、宮尾が走り去った後……
「ミャオちゃん可愛い!!」
と声に出して身悶えてしまった。
周りに聞かれていて……俺に手が出せない奴らがこそこそと宮尾に嫌がらせをし始めたようだった。
俺と宮尾をホモだ何だと騒ぎ立て、ガキかと思う。
実際、俺は宮尾の事が好きだしホモだろうがゲイだろうがなんと言われようと気にしないが、宮尾が俺に全く近づかなくなった。
前は廊下ですれ違うと薄く笑みを浮かべてくれたりしたのに、それすら無くなった。
そしてあの日……俺と宮尾の顔を合成したセックスしてる写真が黒板に貼られ、宮尾の机にデカデカとハートマーク入りで俺の名前が落書きされた。
宮尾の傷ついた顔、泣き出しそうな顔、嫌悪感を露にしている。
そっか……俺が宮尾とそういう事したいと伝えたら……こんな顔で嫌悪される。
胸糞悪い写真を破り捨て、宮尾の目の前だと言うことも忘れてやった奴らを殴りつけ……駆けつけた教師に止められるまで、宮尾がいなくなっていた事にも気付かなかった。
そのまま停学をくらって親には見つかる様なヘマするなと注意された。
停学があけて、秋が過ぎて冬が来ても相変わらず宮尾は学校へ顔を出さない。
宮尾の家も知らない。
教師に聞いても教えてくれないし、誰も知らなかった。
明日は来るかも……明後日は……そう期待しながら過ごす毎日は、裏切られ続け……次第に大好きだった筈の宮尾にも苛つきを覚え始めた。
俺だけの宮尾をゲームの中で陵辱する。
はは……あんな嫌悪した顔したくせに、男に掘られてこんなに悦んでんじゃん、宮尾イヤらしいなぁ……。
宮尾と純粋に愛を育むだけだったゲームは、次第に総受け、輪姦、陵辱、何でも有りのゲームに変化していった。
犯され傷つけられ、必死に俺に許しを乞う宮尾……虚しさだけが募る。
駄目だよ……やっぱり宮尾には笑顔が似合う。
宮尾が幸せになれるゲームにしよう……その相手が俺じゃなくても……いや、出来れば俺が良いけど。
いかにも王子様な男、ひたすら優しい男、明るくてノリのいい男……恋愛ゲームを参考にいろんなタイプのキャラを作った。
宮尾の好みはわからない。
わかっていたらとっくに俺がそのキャラを演じてた。
何度も作っては消して……消しては作って……。
一通り満足できるキャラができて、スリープに入って真っ黒になっていたパソコンの前でぼんやりしていると……勝手にパソコンが起動した。
画面いっぱいの俺のミャオちゃん。
ミャオちゃんは男達に犯されてみせる淫美な微笑みではなく……廊下ですれ違う時に見せてくれていた微かな笑みを浮かべていた。
あぁ……やっぱりその表情が1番可愛い。
『ショーリ君も来て?』
宮尾が……手を広げて俺を呼んでる。
「宮尾……そこにいたんだ……俺を呼んでくれるの?」
伸ばした手をぐっと掴まれた。
え……?
気が付くと……俺は見慣れたゲームの世界に立っていた。
街の柱や敷石、所々に隠された肉球マークは見間違えるわけがない。
これは……ミャオちゃんが俺をゲームの中に呼んでくれたんだ!!
ミャオちゃんを探さなきゃ!!
待っててね、ミャオちゃん!!
俺は興奮して、物語の第一歩を踏み出した。
警察沙汰にはならなかったが、校内で暴力を振るったからだ。
喧嘩の理由はそいつらが俺の好きな子を傷つけたから。
その一件に関わった奴らを殴って怪我をさせた。
進学に必死にしがみつく気もないので、別にそれはどうでもいいし、後悔もしていない。
ただ宮尾に会えないのが不満だった。
この鬱憤をはらす為に趣味でやっていたゲームの製作をして過ごした。
黒板に張り出された、俺と宮尾がセックスしてるコラージュ写真。
出来は最悪。
あんな気持ち悪い汚い男優の体に俺の可愛い宮尾の顔をくっつけるとかあり得ない。
俺が本当の宮尾の可愛さを表現してやろうじゃないか。
俺の知る知識と技術で最高の宮尾を作り上げた。
『ショーリ君、大好き』
音声合成して……台詞を読ませているだけなのにドキドキしてしまう。
……宮尾作りに夢中になっていると一ヶ月なんてあっという間だった。
停学が明けて、やっと本物の宮尾に会えると胸を高鳴らせて学校へ行くと……。
そこに宮尾はいなかった。
ーーーーーー
高校一年の春。
新入生の歓迎として入学したてで行われた、スタンプラリーとかくそだるいだけのレクリエーション。
班決めとかかったるい。
4人1組になれと教師のやる気のない言葉に、教室の端で人と話すのが苦手なのか俯いて不安げな瞳……誰にも声をかけられず、班決めであぶれていた彼に声を掛けたのは気まぐれだった。
大人しそうなその雰囲気から頼めばなんでもいう事を聞きそうだと踏んで声を掛けると、縋る様に見上げられたその猫の様な大きな瞳が俺を真っ直ぐに見た瞬間……俺は恋に落ちた。
中学の頃に少々暴れ回っていたので顔なじみの多いこの学校でも、目を合わせるとよそよそしく目を逸らされるが、捕まえて声をかければ皆頷いていう事を聞くので俺に逆らわない残りの面子も集まった。
彼とどうにかして仲良く……友達以上の関係になりたかった。
見てるだけなんてもどかしすぎる……でも必要以上に近づくと距離を取られる。
宮尾……ミャオちゃん。
名前だけじゃなく本当に猫みたい。
雨の中、不良が猫を拾うなんてお決まりのパターンがあるけど……わかる。
あんな目で見詰められたら放ってなんていられない。
甘えて欲しいなぁ……慌てずゆっくり距離を縮めていこう。
……自分でもビックリするぐらい俺は気長だったみたいだ。
何もないまま3年になった。
高校に入って宮尾に嫌われたくなくて大人しくしていたが、いまだにしつこく俺に恨みを持っている奴らがいた……それでも真っ正面から立ち向かって来る様な奴はいなかったし、放っておいたが……もっとしっかりきっちりシメておくんだった。
廊下で偶々宮尾を見かけ、嬉しくて呼び止めた。
走っていたので勢いがついていて立ち止まった宮尾とぶつかりそうになる。
思ったより近くにある宮尾の顔。
見上げてきた宮尾が真っ赤に顔を染め……その顔があんまりにも可愛くて、宮尾が走り去った後……
「ミャオちゃん可愛い!!」
と声に出して身悶えてしまった。
周りに聞かれていて……俺に手が出せない奴らがこそこそと宮尾に嫌がらせをし始めたようだった。
俺と宮尾をホモだ何だと騒ぎ立て、ガキかと思う。
実際、俺は宮尾の事が好きだしホモだろうがゲイだろうがなんと言われようと気にしないが、宮尾が俺に全く近づかなくなった。
前は廊下ですれ違うと薄く笑みを浮かべてくれたりしたのに、それすら無くなった。
そしてあの日……俺と宮尾の顔を合成したセックスしてる写真が黒板に貼られ、宮尾の机にデカデカとハートマーク入りで俺の名前が落書きされた。
宮尾の傷ついた顔、泣き出しそうな顔、嫌悪感を露にしている。
そっか……俺が宮尾とそういう事したいと伝えたら……こんな顔で嫌悪される。
胸糞悪い写真を破り捨て、宮尾の目の前だと言うことも忘れてやった奴らを殴りつけ……駆けつけた教師に止められるまで、宮尾がいなくなっていた事にも気付かなかった。
そのまま停学をくらって親には見つかる様なヘマするなと注意された。
停学があけて、秋が過ぎて冬が来ても相変わらず宮尾は学校へ顔を出さない。
宮尾の家も知らない。
教師に聞いても教えてくれないし、誰も知らなかった。
明日は来るかも……明後日は……そう期待しながら過ごす毎日は、裏切られ続け……次第に大好きだった筈の宮尾にも苛つきを覚え始めた。
俺だけの宮尾をゲームの中で陵辱する。
はは……あんな嫌悪した顔したくせに、男に掘られてこんなに悦んでんじゃん、宮尾イヤらしいなぁ……。
宮尾と純粋に愛を育むだけだったゲームは、次第に総受け、輪姦、陵辱、何でも有りのゲームに変化していった。
犯され傷つけられ、必死に俺に許しを乞う宮尾……虚しさだけが募る。
駄目だよ……やっぱり宮尾には笑顔が似合う。
宮尾が幸せになれるゲームにしよう……その相手が俺じゃなくても……いや、出来れば俺が良いけど。
いかにも王子様な男、ひたすら優しい男、明るくてノリのいい男……恋愛ゲームを参考にいろんなタイプのキャラを作った。
宮尾の好みはわからない。
わかっていたらとっくに俺がそのキャラを演じてた。
何度も作っては消して……消しては作って……。
一通り満足できるキャラができて、スリープに入って真っ黒になっていたパソコンの前でぼんやりしていると……勝手にパソコンが起動した。
画面いっぱいの俺のミャオちゃん。
ミャオちゃんは男達に犯されてみせる淫美な微笑みではなく……廊下ですれ違う時に見せてくれていた微かな笑みを浮かべていた。
あぁ……やっぱりその表情が1番可愛い。
『ショーリ君も来て?』
宮尾が……手を広げて俺を呼んでる。
「宮尾……そこにいたんだ……俺を呼んでくれるの?」
伸ばした手をぐっと掴まれた。
え……?
気が付くと……俺は見慣れたゲームの世界に立っていた。
街の柱や敷石、所々に隠された肉球マークは見間違えるわけがない。
これは……ミャオちゃんが俺をゲームの中に呼んでくれたんだ!!
ミャオちゃんを探さなきゃ!!
待っててね、ミャオちゃん!!
俺は興奮して、物語の第一歩を踏み出した。
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