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空いた従者枠

やれば出来る子

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遮光性のないカーテンから突き抜けて顔に刺さる眩しさに目を覚ました。

目覚めはイマイチだけど、すごくいい夢を見た気がする。
「ん……ふぁぁ……」
大きく伸びをして起き上がって隣を見て、ビクッと肩が跳ね上がった。

「勝利君?……どうした?何があった?」
いつも爽やかに「おはよう」と言ってくれる勝利君なのに、今朝は目の下に深い隈を作り一点を見つめてブツブツ何かを呟いている。
俺の問いかけにも気付いてないみたいだ。

「勝利君!!勝利君、しっかり!!」
体を揺さぶると、キョトキョトとした目が俺の姿を捉えた。
「あ……ミャオちゃんおはよ……そっか……やっと朝か……」
力無く笑う勝利君……俺が寝てる間に何があったんだろう?

「勝利君、大丈夫?今日は先に進まないで休んでようよ」
おでこを触ろうとして勝利君の体が驚いたのか一瞬強張った……熱は無さそう。
むしろ布団にちゃんと入っているはずなのに冷たい。

「大丈夫……飴と鞭の連続で眠れなくて……いろいろ反省してただけ……」
起き上がっても頭がフラフラしているので今日は俺が朝食を用意すると言い張ってキッチンへ移動した。

キッチンからダイニングテーブルを見ると勝利君は机に突っ伏している。
具合が良くない時はやっぱり定番のお粥だな。
パネルを操作してお粥のレシピを探した。
炊飯器で出来るんだ……なんだ簡単じゃん!!

早速材料を用意する、米と卵と……白だし?が用意された。

【分量のお米を研ぎましょう】

お米の洗い方は勝利君のよぉく見てたからわかる。
……勝利君は簡単そうにしてたのに、結構な量のお米が流れていってしまった。

【お粥の目盛りまで水を入れ、白だし小2を加える、お粥モードで炊飯】

小2……小さいスプーン2杯だろ?どの小さいスプーンだろう?
一番小さそうなスプーンで2杯加えてお粥モードで炊飯ボタンを押した。
動き出した炊飯器……いい感じにできたんじゃなかろうか、ちょっと感動。

【炊飯後すぐに溶き卵を回し入れて蓋をして蒸らしてから混ぜ合わせる】

さて……最大の難関がやってきた。
しかし、俺だって頭を使えるんだ。
大きなお皿の上に小さめの丼を乗せ……前は強すぎたから軽く、軽~く丼の淵に卵をぶつけた。
コンッと軽い音がしたけどヒビすら入っていない、今度は弱すぎたか。
コココココッ……と連続して卵をぶつけながら徐々に力を強めていくと、いい感じにヒビが入った。
勝利君がしていた様に、慎重に親指を押し込み……あっ!!
……また力を入れ過ぎてしまったのか潰れてしまった。
潰れてしまったけどお皿にはちゃんと入ったし、どうせかき混ぜるから一応成功だ。

一応成功だけど殻がちらほら見える……取り除こうとするけど、殻が逃げる。
必死に殻と戦っているうちに炊飯器が炊き上がりを知らせた。
タイミングばっちりじゃん。
卵を入れ蓋をして炊飯器の前で待った。

上手にできたかな……大きな失敗はなかったと思うしきっと大丈夫。
数分待って、祈る様な気持ちで蓋を開けると……。
おおっ!!ちゃんとお粥っぽい!!
味見をしてみてもちゃんと食べれられる。

わくわくドキドキしながらお皿に移してダイニングへ運ぶと、勝利君は眠っていた。
起こすのは悪いと思い、キッチンへ戻ろうとすると勝利君の鼻がくんっと動いた。
「……ごめん、俺寝ちゃってた」
「おはよう……ご飯食べられそう?」
テーブルにお粥を戻すと勝利君は勢いよく体を起こした。
「お粥!!ミャオちゃんが作ってくれたの!?一人で!?」
「味見はしたし、多分大丈夫だと思う」
勝利君にキラキラした目を向けられ、嬉しいのにわざと何でもない風を装って向かいの席に座った。

「いただきます!!」
自分のお粥をスプーンで掬いながら、勝利君が口に運ぶのを緊張しながら盗み見る。
一口分、掬い上げられたお粥が勝利君の口の中へ消えていく……。
「うん、美味しい……優しい味が体に染み渡るよ」
勝利君はそう微笑むと、一口、二口と食べ進めてくれる。
「そっか……それはよかったよ」

どうしよう……すっごく、この上なく、最強に嬉しい!!
必死に無表情を作ろうと頑張るけど口元が緩んでしまう。

お粥を自分でも食べたけど、美味しそうに食べてくれる勝利君の表情を向けられるだけで、本当に美味しくできていたのかどうかわからないぐらい、胸とお腹がいっぱいだった。

……勝利君が元気になってくれて良かった。


「大事なミャオちゃんを守る役目があるのにヘマなんてできないからね」
食後、そう言って勝利君は自分の鞄から葉っぱを一枚取り出すとそのまま生で食べた。

「う……まず」
苦虫を噛み潰した様な顔っていうのはこういう顔を言うんだろう。
不愉快そうに何度か咀嚼をするとゴクンと飲み込みづらそうに飲み込んだ。

「お茶飲む?」
薬草的なものかな?良薬口に苦しって言うからね。
冷蔵庫からお茶を取り出して差し出すと勝利君は一気に飲み干した。

「あ~まずかった。睡眠と麻痺を回復する薬草なんだけど、薬草系もちゃんと作り込んでおけば良かったよ……」

薬草が効いたのか勝利君の目の下から隈は綺麗になくなり、垂れ目気味になっていた目元もキリッと元に戻った。
現実世界にあったらブラック企業が喜んだだろう。

「そんな薬草を飲んでまで頑張らなくても良かったんじゃない?」
俺には無理しなくて良いっていうのに自分のことに関しては不養生だな。

「今日中にこの森を抜けたいなって…………夜行性だから日没までに抜けなきゃ」
最後は独り言の様に呟いて従魔達を抱き上げた。
「一匹くらい俺が抱くよ?」
「でも今日は一日中歩く予定だから……限界きたらよろしく」

勝利君が限界が来るような状況なら、俺はすでに死んでるんじゃないだろうか?
そう思いつつ、無理やり奪って、バテてしまうとか情けなさすぎるので、声をかけられるまで大人しくしておこう。

モフルキャットと雪ウサギダイフクンを小脇に抱え、頭の上にスライムを載せて歩く姿を後ろから眺めてほのぼのとした気持ちになる。
抱えられたモフルキャットと雪ウサギダイフクンのフリフリと動くお尻が可愛い。
思わず飛び付きたくなるけど、そんな事をして足を止めさせるのは……勝利君の独り言からどうも夜行性の厄介な魔物がいるっぽい。

勝利君が避けようとするぐらいだから相当ヤバい奴なんだろう。
昨日やたら野営を勧めてきてたのはそれに関係があったのかもしれないな。

今日は足手まといにならない様に気を引き締めた。
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