最凶のダンジョンで宿屋経営

藤雪たすく

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勇者という名の殺人鬼の話

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ヒュウガのもふもふに思う存分、顔を埋めて癒されている。
アスの触手をぷにぷに握ったり伸ばしたりして癒されている。

「……ねぇ、ヒュウガも……人間を殺す?」

俺の質問にヒュウガは人の姿に変わり、無言で俺の頭を撫でてくれた。俺が本当に聞きたいことを分かっているのだろう。

アスには聞けないのに……ヒュウガにはかなり甘えてるな……俺。

座るヒュウガの腰にしがみついて、撫でてくれる手に甘える。

「魔物に……安息の地なんて無いからな……」

脇の下に手を差し込まれ持ち上げられて抱き締められた。

「人間がみんなカラスマみたいだったら殺さなくてすむだろうな」

「……俺みたい?性奴隷?痛っ!!」

デコピンされた。面の上からだとヒュウガの方が痛いだろうに。

「性奴隷って言うほど俺はやらせてもらってないぞ」

ブスッとしてヒュウガは俺の面を少し持ち上げキスをした。

「こんなに愛されてる奴隷なんていないだろ?」

触手もそうだと言わんばかりに、顔に擦りついてくる。

「ほら、家の中でじっとしてるから変な考えが浮かぶんだ」

狼になったヒュウガは俺に背中に乗れと促してくる。

草原をヒュウガの背中に乗って駆けていく。頬を掠める風が気持ちいい……。

「………ありがとうヒュウガ」

ヒュウガにギュッと抱きついた。

ーーーーーー

この場所には俺に害を与える者は入れないのだと思っていた。

俺のためにスキルが作ってくれた俺の場所だと思っていた。

斬りつけられて血を流し倒れるヒュウガ。
細かく斬られ動かない触手。

ここにいれば命の心配は無いのだとそう思っていた。

ーーーーーー

「俺は勇者ジークフリート」

突然、襲いかかって来た殺人鬼は勇者と名乗った。

勇者を名乗ったその男は俺に剣を向けている。

勇者って無抵抗な人間を殺す人だっけ?

「人を惑わす穢れた魔物よ……地に還れ!!」

勇者は縦一閃に剣を振り下ろした。

あぁ……俺、死んだな。

烏天狗の面が真っ二つに割れて落ちる。
烏丸と烏天狗……同じ烏で気に入ってたのにな……。

額から流れ落ちてくる血が口の中に入る。不味い。気分が悪くなる。

「魔物……何故抵抗しない?」

俺の後ろには横たわるヒュウガ。
俺が避けるとヒュウガに攻撃があたるじゃないか。

俺は魔物か……リーダーにも言われたな……。

勇者の剣のその切っ先が俺の唇に触れる。

「それもお前の術のうちか?正体を現せ」

人間だと言った俺を勇者は魔物だと言い切った。人狼のヒュウガも魔物に付くなら所詮、亜人も魔物と斬り捨てた。

魔物ではない、人ではない……俺は何なのか。

蔑みの眼差し……。
俺は魔物では無いけれど……魔物だと決めつけられて問答無用に切りつけられる。

ヒュウガの安息の地なんて無いとはこういうことか。

殺さなければ、殺される。
アスに人を殺すなと言うことはアスに死ねと言うことか……。
口にしなくて良かった。
安堵して思わず笑みが溢れる。

「…………っ!!」

勇者の剣が揺れて俺の唇を傷付ける。
勇者の瞳に一瞬、動揺が宿った。

勇者の腰にヒュウガがしがみつき、俺を逃がそうとしてくれる。

「カラスマ……逃げろ……」

そんなヒュウガに勇者は剣を何度も降り下ろす。

リンフィのとは違う悪意の無い殺意に戦いた。俺は咄嗟に剣を持つ勇者の腕にしがみついた。

「やめてっ!!死んじゃう!!殺さないで!!」

俺は命乞いをした。
俺の知っている勇者という人物像は慈悲深く、分け隔てなく愛を与える人。

「魔物のくせになぜ他を庇う?……この狼が本体か?違うな……この感じ、お前の正体は淫魔か?何を企む?」

融通が利かない。
俺の意見等聞く耳も無い。

勇者の剣が俺の服を切り裂いた。

「なっ……何を!?」

「その正体……俺が暴いてやろう」

悪意も欲望も何の感情も無い目が俺を見下ろしていた。
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