溺愛BL童話【短編集】

藤雪たすく

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人魚姫は海の泡の中でどんな夢を見るのか

裏の裏1話

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昼休み何となく始めたババ抜きで負けたら罰ゲームのルール。

負けたのは渚、クジの中から引いたのはウソ告。

俺達が呼び出した相手に渚が告白をすることになった。

全くもってこいつにとって罰ゲームにならないモノを引きやがった。
いつも女の子をとっかえひっかえしているあいつにとって、何の痛手にもならないだろう。

何となく思い付きで閃いた、俺にとって面白いこと。

相手は俺が選んでくる。
そいつが現れてからのお楽しみだと、俺は相手の下駄箱を探した。

あいつなら……きっとやって来るだろう。


放課後、俺の予想通り現れたの魚住 結人。
男子生徒だ。

「マジかよ、お前エグいなぁ」

三階の窓から見下ろしながら、大笑いする。

渚はそれでも罰ゲームを敢行する様で、手を差し出して頭を下げる。
二言三言会話を交わしたあと、結人が辺りを見渡しこちらに気付いた。

すぐに渚に向き直り何かを話している。
俺が罰ゲームの告白の相手にお前を選んだと気付いただろう。

さぁ……どうでる結人?
ここまで乗り込んで来て怒るか、泣き出すか……。

ポカンとした顔で差し出したままだった渚の手を結人が握り。
大きく口を開けて驚く渚の耳元に口を寄せて何かを伝えると結人はその場を去っていった。


戻って来た渚はポカンと狐につままれた様な顔をしたままである。

「何か……付き合うことになった」

周りの奴等は大笑いしていたが、俺は予想外の展開に驚いた。
まさか結人が付き合うという選択をするとは思わなかった。

みんなと一緒に笑いながらも心は悶々としていた。

ーーーーーー

次の日、渚が結人と付き合いだしたと広まっていた。
ちっ……広めたのは一緒に見ていた奴等だろう。

渚はクラスの奴等から何処が良いんだ?と質問責めに合いながら「どこと言われても……」と答えに詰まっていた。
そりゃあそうだ……お前はあいつの事を何も知らないんだから。

昼休みになると周りの奴等から、彼女の所に行けよとからかわれて、渚は渋々向かっていった。

すぐに追い返されて戻ってくるだろうと思っていた渚は、休み時間終了間近になって、にこにこしながら帰って来た。


放課後、校庭の端を校門へ向って並んで歩いてくる2人の姿を見つけた。

会話を交わしている様子はない。
渚がヘラヘラしているのはいつもの事だから置いておくとして……。

結人……。
俺の姿に気付いたらしい……青ざめた顔で立ち竦んだ。

俺の目を気にして怯える表情……やっぱり……お前はまだ俺に未練があるんだろう。
男と付き合ったフリなんかして、俺の事は諦めたフリをしているだけなんだろう……。

「……央司君?大丈夫?怖い顔してどうしたの?」

「……何でもない」

俺はわざと見せつけるように彼女の腰に手を回して抱き寄せながら学校を後にした。

ーーーーーー

次の日、俺は渚の質問責めに合った。

「なぁなぁ?魚住と央司ってどんな関係なんだ?」

「小学校からの同級生」

昔はどんな子だったかとか、好みとか趣味とか……根掘り葉掘り聞かれて俺が何となく答える度に、へぇ~、そっかぁ~と、笑顔で想いを馳せている。

しつこい渚にイライラする。
そんな心情を知ってか知らずか、渚が無神経に聞いてくる。

「魚住が……お前に告った事があるっていってたけど、その時何かあった?」

伺う様な目。
本当に聞きたかったことはこの事なんだろう……結人が話したのか?今まで誰にも言わなかったあいつが……こいつには話したのか?

「知らねぇよっ!!魚住、魚住って!!あいつの事ならあいつに聞けよ!!」

椅子を蹴飛ばして、教室を飛び出した。

これでは何か有りましたと言っているようなものだが、心に落ち着く余裕は無かった。
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