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第7夜 夢の最後《ゆめのさいご》
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空がポッカリ空いたと思ったら、君が勢いよくすり抜けていった。
落ちる 落ちる おちるぅーーーー!!
服もバタバタと波打って、髪も逆立って落ちてゆく。地面に向かって落ちていく。
ついに雲をすり抜けて、渡り鳥たちも君を避けて飛んでいった。
すっかり君の背中の羽は、コントロールを失っていた。
「これから、どうなってしまうの!?」
ねえ、“はじまり”を思い出して。
“飛行の砂”は君の力で形が変えられるでしょ?
「もうすぐ地面に落ちちゃうよ、早く教えて!!」
羽の先を片手づつに持って。
そして、パラシュートの形に変えるんだ。
もう疑う時間もない。もう、やるしかない。
「パラシュートに変われ!!」
君はギュッと目をつむった。
背中の近くで空気が溜まる感じがして、落ちていくスピードが遅くなった。
成功したんだ。ふう、よかったなあ。
そして、君はふわっと足が地に着いたのを感じた。
しっかり閉じていた目を開けると─
ドーーーン!!
と、凄い音がして、沢山の人の歓声が聞こえてきた。
打ち上げられた、カラフルな紙のリボンのテープが頭上から降ってきた。
「いったい何が起こっているの!?」
(あーあー、聞こえる?ここは君のステージだよ。僕は裏方をまかされてるんだ。)
片方の耳に手を当てると、そこから声が聞こえてきた。
「そんなの困るよ。練習もなにもしてないのに!」
(大丈夫だよ。もうすでに衣装には着替えているし。決まったことなんてなにも無いし…………はい、キッカケがでたら、音楽を流してください。)
「いったい何を言ってるの!?」
しかもこの服、ステージ衣装だったんだ。どおりで、いつもは着ないような服を選んでしまったと思ったんだ……
流れてきたのは、君のよく知っているメロディーだった。
(歌って踊ってステージを走りまわる!弾き語りなんてもいいかもね。ミュージカルをするのもいいかもしれない。)
「何をするかも決まってないの!?」
ここは君のステージ。
どんなことをするのも君の自由。
決まった振り付けなんて、ここでは意味のない世界。
(つぎ、君が観客席に手を振ったらステージの始まりだよ。)
「絶対に手なんて振らないからね!」
観客席から声援が、沢山の人たちがこちらに向かって手を振ってくれた。
君はそれに応えて、手を振り返した。
「しまった!!」
(さあ!君のライブのはじまりだ!)
「もう、どうにでもなれ!」
君は思いついた通りにすることにした。
あれ?意外と楽しいかもしれない。
体がかってに動き出す。
ああ、こういう動きがしたかったんだ。
こんな声を出したかったんだ。
僕はそれに合わせてライトをあてよう。
夜空の下のステージで、君が映えるように演出をしよう。
(そうそう、そこで君の背中の翼の出番。観客席まで飛んでみて。……あっこでそうそう、Uターンして─そして、そこで一回転。……上手い、うまい!)
最初は、ポップに虹の照明で演出するよ。
君は、映し出された虹の上を渡ってみたり、まわりをぐるぐる飛んでファンサービス。
観客席の歓声も最高潮!
すると、突然ライトが消えて真っ暗になった。あたりはシーンと静まりかえる。
(次はしっとりとした曲に変わるから、いったん暗転。さあ、舞台の真ん中に移動して。)
「わかった、この間に移動すればいいんだね!」
そして、オーロラの照明に切り変わった。どこからか無数の紙飛行機が飛んでくるのが見えた。
君は、舞台の真ん中で寝そべった。
舞台から見る景色も、いがいといいもんだ。
「このまま、寝ているのもいいかもしれない……」
すると、夜空に包まれた野外ステージはだんだんと明るくなっていった。
舞台から見ていたオーロラの照明も、それに合わせて消えていった。
(盛り上がっていたところだったのに、もう終演みたいだ……)
いつの間にか観客は居なくなっていた。
今はもう、ステージに居る君ひとり。
(お疲れ様。これを飲んで。)
差し出されたコップの水を飲むと、懐かしいレモネードの味がした。
(日の光に向かって舞台の花道がつづいているでしょ?)
「この真ん中にのびてる道のこと?」
(そうだよ。ここを歩いていけばいいみたい。)
君はゆっくり体を起こして、ステージに背を向け歩きだした。
降ってくる花びらのシャワー。日の光でキラキラ光ってる。
君が空を見上げると、紙飛行機に乗った僕は、その花びらを降らしていた。
「変なの………。」
花びらについた“忘却の砂”の効果なのか、僕のことも、もう忘れちゃっていくみたい。
だけど、これでスッキリ目覚められるね。
ああ、僕は日の光を見ると眠くなってしまうんだ。あくびが出てしまうよ。
それじゃあ、君と交代ね。僕が寝るとき君が起きる。君が起きると僕が寝る。そういう、システム─
【おはよう。そして、お休みなさい。また夜に会おうね。】
落ちる 落ちる おちるぅーーーー!!
服もバタバタと波打って、髪も逆立って落ちてゆく。地面に向かって落ちていく。
ついに雲をすり抜けて、渡り鳥たちも君を避けて飛んでいった。
すっかり君の背中の羽は、コントロールを失っていた。
「これから、どうなってしまうの!?」
ねえ、“はじまり”を思い出して。
“飛行の砂”は君の力で形が変えられるでしょ?
「もうすぐ地面に落ちちゃうよ、早く教えて!!」
羽の先を片手づつに持って。
そして、パラシュートの形に変えるんだ。
もう疑う時間もない。もう、やるしかない。
「パラシュートに変われ!!」
君はギュッと目をつむった。
背中の近くで空気が溜まる感じがして、落ちていくスピードが遅くなった。
成功したんだ。ふう、よかったなあ。
そして、君はふわっと足が地に着いたのを感じた。
しっかり閉じていた目を開けると─
ドーーーン!!
と、凄い音がして、沢山の人の歓声が聞こえてきた。
打ち上げられた、カラフルな紙のリボンのテープが頭上から降ってきた。
「いったい何が起こっているの!?」
(あーあー、聞こえる?ここは君のステージだよ。僕は裏方をまかされてるんだ。)
片方の耳に手を当てると、そこから声が聞こえてきた。
「そんなの困るよ。練習もなにもしてないのに!」
(大丈夫だよ。もうすでに衣装には着替えているし。決まったことなんてなにも無いし…………はい、キッカケがでたら、音楽を流してください。)
「いったい何を言ってるの!?」
しかもこの服、ステージ衣装だったんだ。どおりで、いつもは着ないような服を選んでしまったと思ったんだ……
流れてきたのは、君のよく知っているメロディーだった。
(歌って踊ってステージを走りまわる!弾き語りなんてもいいかもね。ミュージカルをするのもいいかもしれない。)
「何をするかも決まってないの!?」
ここは君のステージ。
どんなことをするのも君の自由。
決まった振り付けなんて、ここでは意味のない世界。
(つぎ、君が観客席に手を振ったらステージの始まりだよ。)
「絶対に手なんて振らないからね!」
観客席から声援が、沢山の人たちがこちらに向かって手を振ってくれた。
君はそれに応えて、手を振り返した。
「しまった!!」
(さあ!君のライブのはじまりだ!)
「もう、どうにでもなれ!」
君は思いついた通りにすることにした。
あれ?意外と楽しいかもしれない。
体がかってに動き出す。
ああ、こういう動きがしたかったんだ。
こんな声を出したかったんだ。
僕はそれに合わせてライトをあてよう。
夜空の下のステージで、君が映えるように演出をしよう。
(そうそう、そこで君の背中の翼の出番。観客席まで飛んでみて。……あっこでそうそう、Uターンして─そして、そこで一回転。……上手い、うまい!)
最初は、ポップに虹の照明で演出するよ。
君は、映し出された虹の上を渡ってみたり、まわりをぐるぐる飛んでファンサービス。
観客席の歓声も最高潮!
すると、突然ライトが消えて真っ暗になった。あたりはシーンと静まりかえる。
(次はしっとりとした曲に変わるから、いったん暗転。さあ、舞台の真ん中に移動して。)
「わかった、この間に移動すればいいんだね!」
そして、オーロラの照明に切り変わった。どこからか無数の紙飛行機が飛んでくるのが見えた。
君は、舞台の真ん中で寝そべった。
舞台から見る景色も、いがいといいもんだ。
「このまま、寝ているのもいいかもしれない……」
すると、夜空に包まれた野外ステージはだんだんと明るくなっていった。
舞台から見ていたオーロラの照明も、それに合わせて消えていった。
(盛り上がっていたところだったのに、もう終演みたいだ……)
いつの間にか観客は居なくなっていた。
今はもう、ステージに居る君ひとり。
(お疲れ様。これを飲んで。)
差し出されたコップの水を飲むと、懐かしいレモネードの味がした。
(日の光に向かって舞台の花道がつづいているでしょ?)
「この真ん中にのびてる道のこと?」
(そうだよ。ここを歩いていけばいいみたい。)
君はゆっくり体を起こして、ステージに背を向け歩きだした。
降ってくる花びらのシャワー。日の光でキラキラ光ってる。
君が空を見上げると、紙飛行機に乗った僕は、その花びらを降らしていた。
「変なの………。」
花びらについた“忘却の砂”の効果なのか、僕のことも、もう忘れちゃっていくみたい。
だけど、これでスッキリ目覚められるね。
ああ、僕は日の光を見ると眠くなってしまうんだ。あくびが出てしまうよ。
それじゃあ、君と交代ね。僕が寝るとき君が起きる。君が起きると僕が寝る。そういう、システム─
【おはよう。そして、お休みなさい。また夜に会おうね。】
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