もしかして私ってヒロイン?ざまぁなんてごめんです

もきち

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シンという女

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 ローブを頭から被り、顔を隠し、平民が使う駅馬車までたどり着いた。平民に紛れ駅馬車に乗り込む。駅馬車は庶民がタクシーやバスの変わりにしている乗り物だ。シシリアキングスのシシリーまで5日間、魔の森を避け、野営しながら隣国まで行くことになる。駅馬車を利用するのにモグリベルではヴァナやヴァイは必要ない。
 一番安くシシリアキングスに向かう駅馬車を選んだ。それは男しかいない駅馬車だった。5日間、共に向かう事になるのは御者と数人の男の旅人と冒険者ギルドから雇われている護衛の数名だけだ。女子供がいない事で安く提供出来たらしい。シンフォニーは自分を守れるのは自分だけだと言い聞かせ気を抜かないようにした。

 汚いなりをしたローブ姿のものを誰も気にする事もなく駅馬車は進み最初の森の野営広場に到着する。ひとり1つの小さなテントとパンと干し肉を渡された。テントには魔獣や強盗よけの結界がしてあるので安心するようにと説明があった。しかし、テントから出れば後の事は責任は持たないとしてトイレもみんなで一緒にさせられそうになった。シンフォニーはなるべく水分は取らないようにしていたが、さすがに5日間は無理である。シンフォニーは男たちの後ろから見えない木の影を探しローブで隠して用を足した。

 なんとか5日間の旅を乗り切ったシンフォニーは、シシリアキングスの門が見えた事に安堵した。門には馬車のまま入り、そこでひとりひとり身分証明であるヴァナかヴァイを確認するようだ。シンフォニーは持っていない事を正直に伝えた。
「は?持っていないだって?なんでだ?」
「モグリベルを出た所まではあったんだが、途中で落としたらしい。今確認したら無くなっていた。すまない。どうすればいい?」
「ちっ!めんどくせいな!ここに名前を書け!商人ギルドに行ってヴァイを発行してもらえ!わかったな!」
「わかった、ありがとう」
 名前の欄に「シン」と書いて止まった。シンフォニーと書いたら怪しまれるのではと思った。しかし、門番は紙を取り上げ、「シン」だな、と確認し馬車はそのまま門の中に通った。駅馬車はシシリーの中心部まで進む予定だったが道の真ん中で止まった。
「あそこが商人ギルドだ。あんたはここで降りてくれ。ヴァイがない状態でウロウロされると俺らも罰金になる」
「わかった。すまない」
 シンフォニーはそのまま降りて商人ギルドに向かった。旅人のひとりが「俺も降ろしてくれ。冒険者ギルドに行きたいんだ」と言って降りた。冒険者ギルドは商人ギルドの真向いだ。
 
 商人ギルドに入るとヴァイの発行はこちらという矢印が見えた。
「こんにちは、ヴァイの発行をお願いします」
 と、受付の女性に声を掛けた。
「はい、はい、ヴァイですね」
 と、明るい感じの女性が出てきた。
 女性の方?ヴァイを無くしたの?モグリベルからひとりで旅を?大変でしたね。ああ、だから男装を?ここに名前を書いて、ここに指を通して、と内情を探られながら手続きは進んだ。

「はい、出来ました。もう失くさないように失くした場合はすぐに言ってね。力になれる事はお金以外でなら何でも言ってね、私はヨモよ。いつもここで暇しているから」
「え?ええ、ありがとう」
 人なつっこい女性である。
「コインの交換はした?2階で出来るわよ」
「ああ、そうだわ。ありがとう」
「いえいえ、最近同じような人いたから」
「同じような人?」
「ええ、その人は森の住民だったけど」
「そう、ちなみにその方のお名前は?」
「その人の?あ、ごめんなさい。規則で詳しい事は言えないの」
「そうなのね、いいの。仲良くなれたらと思っただけ」
 シンフォニーはその森の住民をアリアナではないかと思った。

「いえ、まさか。彼女はもう魔の森で死んだはず。それに生きていたとしてこんな遠くまで一人で来られるはずないじゃない」
 シンフォニー改め、シンは小さな声で独り言を言った。

 その時、巻き毛のキレイな水色の髪の女性とすれ違った。以前の自分を思い出す。その女性を目で追う。今では汚い身なりで男どもと混じって用を足し、短くなった髪を思い自分を惨めに思った。
 水色の髪の女性とヨモはなにやら楽しそうに話をしている。ヨモの友人なのかもしれない。私には友人と呼べる人なんていない。今も昔も…

 コインの交換を行った後、宿を取り次の日に商人試験を受けた。平民の暮らしも貴族は把握していなければならない。シンは試験を合格しなければ商人とは認められず売買が出来ない事も知っていた。勉強会は参加せずに試験を受けた。もちろんそく合格したものの商人とは認められたが売る物がない。

 もうすぐ冬になる。落ち着いて暮らせる場所が必要だ。シンはシシリアキングスの王都に向かう。絶対にこのままでは終わらない。そう心に刻むシンであった。
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