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第51話

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 リアが夢中で薬草を採取している所へひとりの冒険者が現れた。

「リア、だったかしら。すごく熱心ね」
「え?」
 リアが振り向くとそこにはシンがいた。

「シン?びっくりしたわ。いつからそこに?」
 リアは慌てて薬草レンズを麻袋に入れ、麻袋をカバンにしまった。スカートの泥を払いながらリアは立ち上がる。

「さっきよ。ここは薬草が多く茂っている知る人ぞ知る場所よ。私も最近教えて貰ったのよ。まさかあなたがここにいるなんてこっちこそびっくりよ。どうやって知ったの?」
 リアが慌てて何かを隠す行動に不信感を抱きながらシンはリアに話す。

「薬草を探していたらたどり着いたのよ。誰にも聞いてないわ。ここは誰でも採取していい所よね?」
「ええ、もちろん。誰のものでもないわ」
「それなら私が採取しても問題ないわね」
 リアはニコリとする。

「問題はないけど…この森の中でも結構、獣や弱い魔獣も少しは出るのよ?そんな無防備な恰好で来るなんて信じられないわ。悪い事は言わない送って上げるから帰りましょう」
 シンはスカート姿のリアを見て呆れて言う。
「そうなんだ。でもナイフも持ってるわ」
「そんな刃の短いナイフなんの役に立たないわよ」
「まあ、いいじゃない。私も冒険者の登録をしたから、これでも冒険者よ。自分の身は自分で守るわ」

「親切で言っているんだけど」
「そうよね。ごめんなさい」
 リアはシンフォニーにされた事を忘れていない。でもシンフォニーであるシンは黒のショール姿をしているリアは分からない。リアはくるりとシンと正反対の方向を向き、またさきほどの薬草を採取し続けた。

「仲良くする気はないようね」
 ふうとため息を吐き腕組みをしてリアに問いかけた。
「ヨモの前だけは仲良くするわ。それ以外はあまり関わりたくない」
「どういう事?」
「ヨモは誰でも受け入れる明るいいい人よ。そのヨモの交友関係に口出ししたりしないわ。でも私は違うの。シンの事は受け入れられない」
「理由を聞いても?」
「私はモグリベル出身よ」
「えっ…」
 リアは薬草を採取し続ける。早くどっかへ行かないかなぁと思っていた。

「…そう、あなたは私の事を知っているのね…」
「ええ、だから…」
 しつこいなと思いつつ、リアは振り返り自分に構わないでほしい事を伝えようとした。しかし、リアが見たものは、すぐ後ろにシンがいて、剣を振り上げている所だった。
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