もしかして私ってヒロイン?ざまぁなんてごめんです

もきち

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シンの事情 Ⅰ

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 リアを襲った次の日、シンは目が覚めた。そこは罪人が収容される様の病室だった。もちろん、牢の中である。
 気が付いたシンは自分が牢の中にいる事に焦った。
「なぜ、私が牢に!?私が何をしたというの?」
 シンはリアを襲った事を一時的に忘れていた。見れば来ていた服はほぼ黒焦げになっていて半裸に近い状態だった。シンは近くにあった布で体を隠し何があったのか思い出そうとしていた。
 しばらくすると朝食が運ばれてきた。監視の兵士に事情を聞いても答えてはくれなかった。しばらくすると男が面会に来た。

「気がついたと連絡を貰った。体調はどうだ?俺は冒険者ギルドのギルド長のサベチだ。俺はあんたを知っているがあんたは俺の事は知らんだろうな」
 牢の外からサベチは話かけた。
「なぜ、ギルド長が私に…」
「キレイに火傷の跡が消えているな。マオがあんたのために高い魔法陣を使ってくれたからだが…」
 サベチは露わになっているシンの肩に目をやった。
「火傷?」

「昨日の事を覚えているか?」
「昨日?」
 シンは自分が何をしたのか徐々に思い出していた。

 そう、あの時リアは自分の事を知っていると言う口ぶりだった。モグリベル出身…それはユグンの街で味わった恐怖を思い出された。逃げ遅れていたらどうなっていたか分からない。シン先生と受け入れられていたのに罪人だったと知ると掌を返された。職を失い、街を追い出された。私はどこまで逃げればいいのか…
 そして私はリアに素性を知られているとわかって剣を静かに抜いた。リアの背後にそっと近づき狙いを定めた。リアを亡き者にするために。ここは誰もいない森の中だ。死んだとしても誰にも分かりはしない。

 シンはあの時の光景を思い出した。リアを殺そうと剣を振り下ろした所まで思い出したのだ。殺そうとしたのだ。

 自分のこの手で。

 魔に取り付かれたとしかいいようがない。

「思い出したか?」
 サベチはシンに言った。

 ここは牢の中、私はリアを殺そうとして逆に攻撃を受けたようだ。リアに反撃されたのだろうか。そして治療をして助かった。
「私は攻撃を受けたと言う事でしょうか?」
「そうだ」
「誰にです?」
「マオだ」
「マオ…?なぜ、マオが?」
 あの場に居ただろうかと考える。

「マオはおまえさんが背後から女を斬ろうとしている所に偶然通り掛かったようだ。レインボーボアの帰りだったと言っていたが…まあ反対の丘だから序に薬草でも取りに来たのだろう」
「マオが私に攻撃を…」
 少なからずショックだった。マオは自分に好意があったはずだ。それなのにあんな地味な女を助けるために自分に攻撃をした。

「あんたらは恋仲だと思っていたから意外だったが、背後から女を襲ったのは認めるか?」
「い、いえ、私はマオから教わった剣術を見せていただけです。襲っただなんて…」
「しかし、マオは女がしゃがんで薬草を採取していた所を後ろから襲ったと言っていた」
「け、剣術を教えてほしいとリアが言っていたから、模擬として見せていたの。背後から斬りかかれたらという対処法よ」
 シンはムリな言い訳をした。

「…そうか、その女にも話を聞かねばならんから、しばらくはここにいて貰う事になる。着替えは後で持ってこさせよう。マオに会う事があれば礼を言うんだな。治療費を出したのはマオだ。高い魔法陣を惜しげもなくおまえさんに使ったんだからな」
「マオが間違って攻撃をしたんでしょう?当然じゃない?」
「俺はおまえさんの味方だぜ。いい女がいるだけでその場が活気着くというものだ。だが、マオはBクラスの冒険者だ。Fクラスのおまえさんよりマオの方が優先される。二人に何があったのかは知らんがマオを怒らせたんじゃないのか?素直にマオの女になれば、この牢からも出られるんじゃないか?」

「痴情のもつれだと言いたいの?」
「俺は忙しいんだ。面倒事はごめんだ。マオだっておまえさんを鉱山送りにしたいわけじゃないだろう」
「鉱山?」
「罪人は鉱山送りだよ」
「なぜ私が!?」
「背後から女を襲ったとなれば当然罪人だ。罪人は罪の重さで掘る石のグラムやキロが変わる。重い罪はダイヤモンドを何グラムとか、ゴールドが何キロとか言われるな。おまえさんの場合は…未遂だからまぁ…ゴールドを10キロって所だろう。ゴールドは比較的見つけ易い、早ければ数日で出て来れるぞ。マオと仲直りするか、罪人になるかを選べばいい」
「マオとケンカなんかしてないし、リアが剣術を教えてほしいと言ったのをマオが勘違いしたのよ!」
 サベチは、面倒なと言いながら牢から去った。

 牢に取り残されたシンはまたしても、牢送りになった事を呪った。

 どうして自分から罪人に手を染めようとしたのだ。マオが止めなかったらモグリベルの出身というだけの女を殺していた。リアは無防備だった。自分に背を向け仲良くする気はないと言っただけだ。
 ヨモや誰かに言いふらす言い方ではなかった。バカな真似をした。しかしマオに攻撃をされたとしても助けられた。そして気の弱そうな地味なリアの事だ。私が剣術を教えてほしいと言ったと言えばそうだと言うかもしれない。
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