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シンの事情 Ⅱ

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 サベチが来てから4日後「出ろ」と兵士から言われ、ようやく解放されるのだとシンは思った。
 そして兵士から罪状が読み出された。
「お前は背後から女性を襲ったとして罪人となった。この国では罪人は鉱山送りの刑となる。鉱山でゴールドを10キロ掘れば解放する」
「ちょっとまって、私が罪人ですってそんな…」
「お前の言い分は通らなかった。女は剣術など教えを乞うてなどいないし、なぜ急に斬り付けられたのか理由は知らないとした。またBクラスの目撃者は殺気をもって女に攻撃をしていたと言っている」
 兵士は罪状を読み上げ、シンに言った。

「斬り付けた理由を言えば、内容を考慮して貰えてゴールドのキロ数が減るかもしれんぞ」
 リアはその理由を言うかどうかはシンに任せることにしたようだ。しかしシンはモグリベルの元罪人だとバレるのが怖かったとは言えなかった。
「…」
「理由を言う気がないならこのままだ。連れていけ」
「は!」
 シンは鉱山に連れて行かされる事となった。ゴールドを10キロ掘らなければ解放されないのだ。

 鉄格子の馬車にシンは乗せられアンバーにある鉱山に連れて行かされるようである。その馬車には数人の女が乗っていた。

「あんた、キレイな顔して何したのさ。男でも騙そうとしたのかい?」
「そんなとこ、あんたは」
「あたしは盗みだよ。働いていた店の売上をちょっとね、ちょっとだよ?それでダイヤ5グラムだって。ダイヤって難しいんだよ。ああ稼げると思って王都まで来たってのにさ。あたしはテム、あんたは?」
「シンよ。ゴールドは難しくないの?」
「あんたゴールドなの?いいねぇ初犯?ゴールドは比較的簡単だよ。結構どこから出るか限られてくるし、川や湖にもあるしね。あんた水属性なら簡単に探せるんじゃないかい?」
「水属性だけど、ゴールドの探し方は知らないわ」
「やっている内にコツを掴むよ」
「あんたは何回目なの?」
「あたし?3回目、等々ダイヤにさせられたよ。あはは」
 テムは笑っている。
 鉱山送りになって重く考えていた自分がバカのようだ。そうだ早くゴールド10キロを掘って脱出しよう。シンはそう思った。

 アンバーの鉱山には数日掛かった。1日2回の食事は出るしトイレ休憩もある。わりと快適な旅だった。連れて来られたシンは鉱山なのだからてっきり山奥に行くのだと思っていた。
「何だい、ここは?ずいぶんと変わったね」
 テムはいぶかしげに見ている。
「変わった?」
「ああ、前までは汚い小屋に放り込まれて山で朝から晩まで掘らされてたんだけど…」
 見る限り汚い小屋はなく、整備された道に貴族の邸のような家が並んでいる。そしてまだまだ建設中のものもあった。
 そしてその奥には小さいながらも真っ白な美しい城があった。

 連れて来られた罪人達は驚いた。
「鉱山って言うから汚い所で作業させられると思ったのにキレイな所だねぇ」
 一緒に来ていた別の女の罪人が言った。この女も初犯のようだ。

「いや、2年前はそれこそボロボロの宿舎に放り込まれて衣服も限界になるくらいまで支給されないくらいだったのに、いつのまにこんな小さな街になってんだい」
 テムは2年前の光景を思い出しながら言った。

「おい、女達はこっちだ」
 ひとりの見張りが手を上げる。
「あれ?あんたは…」
「なんだ、テムじゃないか。また戻って来たのか。まぁいい時に戻って来たな。やっと俺達にも運が巡って来たぜ。ひっひっひ」
「なんのこったい」
「まあ、後で分かる」
「おっそっちは美人だねぇ、ダンナが気に入るだろう」
 見張りはひっひっひと下品な笑い方をし、城へと案内した。

「見張りと仲がいいのね」
 シンは不愉快な見張りの男を見ながらテムに話しかけた。
「あいつは見張りじゃないよ。同じ罪人だよぉ」
「え?」
「あたしにだって訳わかんないよ。どうなってんだか」
 女達はあの白い城に案内された。

 女達は恐る恐る中に入ると、そこには大理石で作られたような真っ白で鏡のような床や壁が一面に広がっていた。そしてその奥には数段の階段があり、王が座るような椅子が一脚置いてある。

 跪いて待つように言われ、数人の女達は訳も分からずに跪いて待った。

 そして、何人かの人間を従わせてひとりの男が現れた。真っ白な衣装にマント、白銀の長い髪を靡かせてながら、中央の椅子に座った。その男は金色の瞳を輝かせているユリウスだった。
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