過去に繋がる電話

兎月悠

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「洸太!」
 高校2年1学期の始業式。部活が無いためそのまま帰ろうと校舎を出ると、後ろから声がかかる。
「今帰り?」
 一緒に帰ろう、と言う彼の笑顔が眩しく輝く。
 部活で交流はあったが、ただのチームメイトという関係だった。
「クラス同じだね」
「うん、よろしく」
「よろしく」
 2人で帰るのは初めてだし、悪くはないが特別仲が良い訳ではなかったこともあり、気まずくなってしまうことを心配した。しかし会話は途切れることなく心地よいテンポで続いた。
「うちここだから」
 チームメイトの話、新しい担任の噂話、散歩中の犬の話。そんなことを話しているうちに家の前までやって来てしまった。
 そういえば、彼の家は何処だろう。まさか逆方向なんてことはないよな?
 急に不安になり尋ねると、電車に乗るのだと言う。
「駅に行くんじゃさっきの大通りで曲がらなきゃ!」
「こっちからでも行ける」
「でも遠回りだよ」
「そんなに変わらない。洸太と少しでも長く話したかったんだ」
 なんだか照れくさくなる。自分だけではなく、優輝も楽しいと感じてくれていたんだ。
「なにそれ。でも楽しかった」
「うん、また明日」

 翌朝、家から出ると優輝の姿があった。確か昨日、朝は何時に家を出るか聞かれた気がするがまさか待っているとは。
 それから一緒に登下校することが増えた。毎日くだらない話をして、たまに休みの日に出かけたりもした。
 それでも足りず、何かある度に交わすメッセージを眺め、これじゃあまるで恋人だな、なんて考える。
 仲の良い友人ではなく、恋人。何故そんな思考になったかなんて簡単だ。俺は優輝のことが、そういう意味で好きになっていた。


        ◇


「もうかかって来ないかと思いました」
 数日後、電話をかけると寂しそうな声が聞こえてきた。優輝の方からかけてきても良いと伝えると、それは不可能だと返ってくる。
「一応番号控えておいたけど、俺からは発信できないみたいで…光さんからかかってきて安心しました」
 彼はようやくスマホに替えたそうだ。周りがみんなスマホを持っているのにまだ使えるからという理由で結構粘ったのだ。
 番号は変えていないが、電話がかかってきたのはガラケーのほうだったらしい。解約したのに繋がるのは不思議ですけど、という彼の言葉につい笑ってしまう。本当にそうだ。最初は驚いたが、今ではもう慣れてしまって当たり前のようになっていた。
 それからも数日に一度、取り留めのない会話をした。優輝からは連絡頻度が低いと小言を言われたが、毎日かけるのは少し気が引けた。
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