初恋の相手に再会する話

兎月悠

文字の大きさ
2 / 2

2

しおりを挟む
「はーるちゃん」
「あはは!やめろよぉ」
 コツン、とランドセルに小石がぶつかる。
 日頃から受けるからかいにはもう随分と慣れた。頻度は彼らの気まぐれで毎日ではないし、内容も大したことはなかったから我慢できる。
 昔から可愛いものが好きだった。青よりピンク。ボールよりお人形。幼稚園の頃は女の子に混ざっておままごとをしていた。それが当たり前だったのに、小学校に上がるとだんだん"変わり者"として扱われるようになった。
 それから他の男の子と一緒にサッカーやドッチボールに参加しないのはもちろん、女の子たちと関わるのもやめた。
 休み時間も、移動教室もずっと1人。それは中学校に入学しても変わらなかった。だったらずっと、ほっといてくれたらよかったのに。

「なぁ、あいつやべーよ」
 卒業を間近に控えた朝、教室から男子の声が聞こえる。
「あいつって?はるちゃん?」
「そうそう!」
「何がヤバいん?」
 嫌な予感がする。
「あいつ、たくみのことが好きなんだってー!」
「なにそれ!」
 違う。彼のことを好きだなんて思ったことはない。ただ、昨日の放課後廊下の角から飛び出してきた彼とぶつかっただけで話したことすら無い。
 人間という生き物は噂が大好きで、時には根も葉もないことをでっちあげてしまう。
 静かで弱い僕はその標的にされて、助けてくれる人なんていない。必死に否定したところで軽くあしらわれてしまう。
「男が男の事好きっておかしくね?気持ち悪ー」
 その言葉が胸に深く突き刺さった。よく分からないけど、自分はゲイとかそういうのではないと思う。それなりに異性に興味はあるし、男の人に性的興奮を覚えるわけではないから。じゃあ何故今ショックを受けているのか。それには心当たりがあるから。
 今まで恋人が出来たことは一度もなかった。この学校で好きな人が出来たことすらない。でも、一人だけ。ずっと昔に恋をして、今でも忘れられない人がいる。しかし無情にも、その人は同性だった。
 確かに、そうだよな。教室に向けていた足を反転させる。悲しくて、悔しくて、目頭が熱くなる。気づいた時には自分の部屋で泣いていた。
 それから学校に行くことは無くなった。卒業式にも出席せず、前から決めていた通信制の高校に進学した。

 僕には名前も知らない好きな人がいる。偶然再会できたけど想いを伝えることはしなかった。だって好きな人に気持ち悪いって思われたくないから。初恋は綺麗な思い出として胸にしまっておきたい。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

ある日、友達とキスをした

Kokonuca.
BL
ゲームで親友とキスをした…のはいいけれど、次の日から親友からの連絡は途切れ、会えた時にはいつも僕がいた場所には違う子がいた

ポメった幼馴染をモフる話

鑽孔さんこう
BL
ポメガバースBLです! 大学生の幼馴染2人は恋人同士で同じ家に住んでいる。ある金曜日の夜、バイト帰りで疲れ切ったまま寒空の下家路につき、愛しの我が家へ着いた頃には体は冷え切っていた。家の中では恋人の居川仁が帰りを待ってくれているはずだが、家の外から人の気配は感じられない。聞きそびれていた用事でもあったか、と思考を巡らせながら家の扉を開けるとそこには…!※12時投稿。2025.3.11完結しました。追加で投稿中。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

奇跡に祝福を

善奈美
BL
 家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。 ※不定期更新になります。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...