人生最後のセックス

皐月 ゆり

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第三話

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 力が抜けてあがった息を整えていると、彼が膝立ちになって私の手を引く。
「口でしてくれないかな」
 その言葉に彼を見るとこれでもかというくらいにそそり立っている股間のモノに目を奪われた。
 彼の前に四つん這いになって口を近づける。
 ぴくぴくと跳ねるモノを下から舐め上げると彼が切なげに息をこぼす。
 フェラはあまり得意ではない。
 彼のモノを舐めることや口に含むことに少し抵抗があってあまりしてこなかった。汚いと思っているわけではないと思うのだが、彼もそんなにしてといってくることはなかったし、いいかと思っていた。
 先からは汁が溢れてきている。舐めとると少ししょっぱい。
 これが最後だし。思い切って口に含んで先端を舐め回す。あまりそういった学習をしてこなかったので、少ししかない性知識を総動員して彼のモノを愛撫した。
 歯は立てない。唾液はなるべく多く。上下に動きながら竿に舌を這わす。一所懸命に首を振っていると彼が頭を優しく撫でてくれた。
「気持ちいいよ。ずっといわなかったけど、口でされるの好きだったんだ。するのあまり好きそうじゃなかったから、気を使ってさせることになったら嫌でいわなかったんだけど」
 今更いうなんて酷い。もっと勉強しておけば、自分からしてあげてればって、ただでさえいっぱいの後悔がもっと増えてしまうではないか。
 どうすればもっと気持ちがよくなるのか分からなかったが、舐めたり、奥までくわえ込んでみたり、手でもしごいてみたりと頑張った。
「んぅっ、そんなにされたら……」
 頭を撫でていた手に少し力が入る。彼の腰が動く。先が喉を突く。涙と唾液が溢れてくる。
「んっ、んぅ……はぁ」
 満足したのか頭から手が離れ、彼のモノから口を離した。座って息を整える。苦しかった。
 私の顔を両手で包み、彼が優しく口づける。目尻から伝う涙を拭いながら彼はいう。
「ごめん、苦しかったよね。でも、一所懸命してくれて嬉しかった。気持ちよかったよ」
 首を振って言葉は飲み込んだ。どうして今までいってくれなかったの。あなたが望むならもっと勉強したし、頑張ったのに。でも、いってしまってどれかが彼の帰りに繋がってしまったらと思うと口を開けなかった。
 抱きしめられながら押し倒される。
「もう、いれてもいいよね。我慢できない」
 私は頷いた。彼は肉棒に手を添えながら穴の入り口に先を当てる。腰を動かしながらなんとなくあたりをつけて差し込むのではなくて、ちゃんと丁寧に挿入してくれる。そういうさりげない優しさが、大切にされていると感じていつも嬉しかった。
 なんの抵抗もなく彼のモノがするすると中に入っていく。それだけで声がもれて涙が出る程気持ちがいい……。
「んぅっ……あっ、んぅっ」
 奥まで入ると彼は腰を動かさず、覆いかぶさって舌を絡ませてくる。
 動けばすぐに終わってしまうことが二人とも分かっているから、キスに夢中になっている振りをしていた。それでもむずむずと動きたい欲求が大きくなっていって、この一回だけと彼に腰を押しつけた。
 彼のモノが奥に届く。力を抜けば少し出て行く。いつもと変わらない動き。それなのに快感はいつもの数倍だった。
「動かれたら我慢できなくなるじゃん。動いて欲しいの?」
 まだまだこのまま繋がっていたい。でも体は快感を求めて動き出そうとしている。めちゃくちゃに突かれたい。いっそ最後に私を壊して欲しい。これが私の人生最後のセックスなのだから。
 私の腰がもう一度動く。
「たくさんして?」
 彼が上体を起こして後ろに手をついた。
 腰が動く。気持ちのいいところが擦られて、私の腰も勝手に動き出す。
「はっ、あぁ、あっ、気持ちい……」
 彼と繋がっていることが嬉しかったし、この体位も気持ちがいいのだが、顔が遠い。もっとよく見ていたい。もっと近くに感じたい。
「正常位でして……? 抱きしめて、たくさん突いて」
 優しく擦られる快感に悶えながらなんとか言葉をこぼす。
 手を私の頭の横について上から見下ろす彼。この状態で見る彼の顔が一番男に見える。一番かっこいい。興奮がさらに高まって早く動いて欲しいのに、なかなか動いてくれそうにない。
「一つ、約束して欲しいことがあるんだ」
 真剣な顔で見つめられて、何を約束するんだろうと思うと同時に、焦らさらないで早く動いてと焦れったくて仕方なかった。
「菜乃葉はとっても弱いから、早く好きな人を作って、一緒になって。俺は、守ってやれないから、他に守ってくれる人を見つけて。俺のことを気にして、一人で生きようとするなよ」
 彼の精一杯の言葉。心配だから、愛してるからこその約束。分かった上でできない約束に、私は彼をじっと見つめることしかできなかった。
 黙って見つめるだけの私の目からまた涙がこぼれる。彼のいない残りの人生を考えるとただただ悲しかった。
 綺麗な景色も、美味しいご飯も、喜びも悲しみも、もうこの先の人生で彼と共有することはできないのだ。一人で感動して、味わって、溜め込んでいかなければならない。
 頭を優しく撫でられる。おでこに唇が押しつけられる。
「無理をしない。一人で抱え込まず、誰かと助け合って生きていくって約束して」
 彼の目が私に頷くこと以外許してくれない。私のことを誰よりも分かっている彼は、一人を選んで生きていこうとする私を何よりも心配して、その選択を許してくれないのだろう。こんな時にいうなんて、ずるい。私はあなた以外と生きるつもりはないのに。
「陽斗も約束して。一人で勝手に生まれ変わらないで待ってて。来世があるなら、また陽斗と生きたい」
 天国とか神とか来世とか信じてなかった。でも、彼が会いに来てくれたから、死んだ次の世界に希望が持てる気がした。
 彼は頷きゆっくりと動き出す。
「いつまでも待ってるから。ゆっくりおいで」
 もう一度おでこにキスをして、ゆっくり大きくストロークを繰り返す彼は、その一回一回をじっくり味わっているようだった。
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