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〇31 気が付いたら一か月以上前に婚約破棄されてた。こんな事ってある?
しおりを挟むお か し い
こんな事ってある?
私いがいの皆。
ねぇある?
なんでか分からないけど、私しらない間に婚約破棄されてた。
婚約者、終了してた。
行きつけのお店が突然閉店してた事に気が付いたような心境だけど、驚きはその比じゃないわ。
ぜんぜん気が付かなかったんだけど。
なんで?
いつのまに?
その婚約破棄、一か月前、されてたみたい。
あれ?
その連絡されてないよ。
私、聞いてない。
これっぽっちも。
だから詳しい事情を聞こうと思って、婚約者の屋敷に言ったら、門前払いされた。
無理やり面会しようとしたけど、庭にケルベロスみたいな狂暴な犬がいるから、諦めた。
この間まで、その犬もっと別の所にいたよね。
なんで玄関前で飼育してるの。
ふにおちない。
なっとくできない。
連絡、どこで止まってたの?
手紙とか書いた?
もらってないわよ?
とりあえず使用人に聞いてみた?
「いえ、そんな話は知らないですけど」
彼等は、困惑顔をしてそう言った。
うん、聞いてなかったみたい。
その様はとても演技には見えなかった。
次に両親に聞いてみた。
「おかしいわね。聞いた事ないわ」
うん、こっちも聞いてないって。
こっちの顔も、とても演技には見えない。
じゃあ、どこで連絡が泊まってたのよ!
頭を抱えていたら、窓を何かが叩いた。
鳩のくちばしだ。
鳩がやってきていたらしい。
その鳩に違和感を感じた。
足だ。
足に何かを括り付けられていた。
それは紙だった。
なら、この鳩は伝書鳩?
もしや、と思い鳩を部屋に入れて、その紙を開ける。
手紙だ。
そこには「もうこれ以上つきあってられないので、婚約破棄(略)!」と書かれていた。
鳩はちょっと疲れ切った様子だった。
もしかして今までどこかで迷子になっていたのかも。
それで手紙が届くのが遅れたのだろうか。
私は、つっこんだ。
大切な知らせなら人を使え!
こんなんですぐ伝わるか!
俺は、どうしても婚約破棄したい。
けれどこの国では、婚約破棄してから一か月以内だったら、またその婚約を簡単に結びなおせるようになっている。
なんでも昔、痴話げんかで何度も離婚しまくった王族がいて、手続きが面倒だったとかなんとか、
そんな事があったらしい。
だから、真正面から婚約者に「婚約破棄だ」なんて言ったら、うるさい婚約者に結婚の約束を結びなおされてしまう。
俺は自慢じゃないが意思が弱い。
だから、相手に強く言われたら好きでもないのにまた婚約してしまいそうだ。
なので、あいつが旅行で出かけているうちに、婚約破棄してしまおうと考えた。
相手の家も婚約破棄に了承したみたいな書類を偽造して、旅行のスケジュールも調べて、時間をかけて綿密な計画を立てた。
あとはちゃんと婚約破棄したという手紙も(迷子癖のある鳩五羽くらい使って)言い訳の為に出した。
何度もこっちは確認したんだから、一か月以内に関係修復できなかった相手の方が悪い。
そう言い逃れをするために。
そして、婚約破棄してからとうとう一か月が経った。
やったこれで、あいつと結婚せずに済む。
そう喜んでいたけれど。
浮かれて屋敷を出た所で、あいつにとっつかまった。
犬!
仕事して!
何のために玄関の近くに移動させたんだよ。
そう思っていたら我が家のペットは、のんきに昼寝していた。
昼食の後で、ちょうど眠くなる時間帯だったらしい。
うっかりしていた。
俺は襟首をつかまれた状態で冷や汗をかく、元婚約者となった女性に睨まれながら。
「お話しましょ?」
「ひぃっ」
「こんな卑怯な手を使う相手となんて結婚したくないから、婚約破棄はどうもしないわ。けど、知ってるかしら?」
彼女は猛獣を思わせるような笑みを浮かべた。
「やられたらやりかえせ! が私の家の家訓なのよ」
「ひぃぃぃぃ!」
その後、物陰に引きずり込まれてボロ雑巾のようになった俺は、屋敷の者達に発見されるまでその場を動けなかった。
「まったく何で婚約破棄なんてしたのよ」
自分の拳見て。
あと服も。
返り血で真っ赤だよ。
そういうとこがあるから、婚約破棄したんだよ!
やったらやり返されちゃうから、今までの過去の中の僕はいつもぼろぼろだよ。
何だよ、ちょっとオヤツとっただけじゃん。
ちょっと服汚しただけじゃん。
ちょっと宝石とっただけじゃん。
それくらい許せよな。
そう思っていたら、その感情が顔にでていたらしい。
「私の家訓、その2。人になめられるな」
後は分かるわよね?
と、言ってにこりと笑う元婚約者。
あっ、俺今日しぬかも。
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