2 / 3
+02 当たり前の便利さ
しおりを挟むずっと昔は、隣の町までいくのにもすっごく時間がかかったんだろうな。
町の展望台に上った時、たまにそう思うんだ。
きっと昔の人にとって、世界はうんと広かったに違いない。
なんでこんな事考えてるかって?
今、電車に乗ってるから。
とまってる、やつにね。
何気なく使っている電車が遅れて、みんながイライラしてる。
三分。五分。
「会社に送れる」とか「今日は試験があるのに」とか、皆暗い顔でぶつぶつ。
こっちは大事な用事なんてないのに、どうしてだか私まで暗い気持ちになってしまう。
文明の発達とか、科学技術の向上とかで、皆すごく豊かになったと思うよ。
でも、その反面。
すごく大事な事を忘れちゃってる気がするな。
たとえば、そう……感謝とか?
電車が遅れるのはもちろん駄目な事だと思うよ。
運転手さんとか駅員さんとか誰かがミスしたのなら、しっかりしてって思うし、誰かが小石をなげたり障害物を置いたりして、そういういたずらするのもいけないと思う。
けど、「間に合ってあたり前」って思っていない?
私は、皆がたくさん苦労して「不便が当たり前」であるはずなのを「便利で当たり前」に変え続けてくれているんだと思ってる。
水も、電気も。
ひょっとしたらガスとかも。
昔よりずっと便利で、思った所にすぐいけるのに、便利なのが、出来るのが普通って思うのはなんだかとても失礼だと思う。
なんて考えてたら。
運転手さんの声。
放送だ。
車内にほっとした雰囲気。
ゆら、と動き出す車体。
あ。
もう解決したんだ。
ガタゴト。音を立てて早くなっていく電車の中で、私は周りの人達の顔を見る。
大変な人じゃなくていい、余裕がある人でいいから、「大変だったね」、「ありがとう」って思っててほしいな。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる