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〇11 かつてでくのぼうだった少年は、虐げられたお姫様のために復讐の道を突き進む

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 その少年は騎士だった。

 騎士とは勇気を示して、敵の前に立たなければならないもの。

 しかし、少年はいつも他の仲間の後ろにいた。

 臆病で怖がりだったため、任務ではまったく役に立たなかったのだ。

 だから「でくのぼう」と呼ばれ、馬鹿にされていた。

 けれどそんな少年には、好きな人がいた。

 それは騎士である少年が守らなけれなならない存在、国のお姫様だった。

 お姫様は誰にでも分け隔てなく、優しく接する人間だった。

 だから少年は、どうにかしてお姫様の力になりたいと思っていた。

 どうにかして、奮い立とうとしていたのだった。

 しかし、戦争をしかけてきた敵国に少年がいた国が敗北した。

 そして、お姫様は囚われの身になってしまった。

 無事は分からず、何をしているのか分からないまま数週間が過ぎた。

 少年はその時になってようやく、自分自身を叱咤して、立ちあがる。

 立ち止まっていた時間をとりもどすかのように、一心不乱に修行に励んだ。

 少年は、弱い自分に別れをつげ、毎日過酷な修行をこなしていく。

 やがて少年は、右に出る者はいないと言われるくらい強くなった。

 だから、少年はお姫様を助けに行くことにした。

 しかし、それは残念ながら。

 間に合わない。

 少年が助けに行った時にはすでに、お姫様の心は壊れていたからだ。

 過酷な拷問を受けた捕虜は、そうなる運命だった。

 少年は自分の力のなさを悔いた。

 立ち上がる瞬間が遅かったことを悔いた。

 そして、お姫様を虐げた敵国の者達に復讐する事を誓った。

 自分にも優しくしてくれたお姫様。

 他の人にも平等に笑顔をみせていたお姫様。

 その存在は少年の光だった。

 光を奪われたなら、あとは闇に包まれるしかない。





 少年は生き残った国の者達を集めて、お姫様を虐めた国を攻撃した。

 一人で何百人分の働きをした少年は、生きた戦の神と呼ばれた。

 戦場に出るたびに、多くの者達を血まつりにあげていく。

 しかし、それだけでは国を潰す事などできない。

 だから少年は、次の手をうった。

 暗殺者の技術を身に着けて、直接要人達を殺す事にしたのだ。

 そうすると国を動かす者達が少なくなるため、敵国は次第にまわらなくなっていった。

 後は、国の内部に多くのスパイを送り込んで、内部で破壊活動を行った。

 敵国の治安は一気に悪くなり、内部からゆっくりと瓦解していった。

 生き残った王族達は、自分達だけで脱出しようとしたが、少年はそれを許さなかった。

 彼等を生け捕りにした少年は、お姫様がされた仕打ちと同じように拷問を行った。

 水責めをしたり、火であぶったり、電気で感電させたり。

 生き物にかじらせたり、猛毒をあおらせたり。

 やがて狂った王族達は死んでいった。

 少年は復讐を完遂した。

 上に立つ者がいなくなった、その国は自然と滅亡していった。
 民達は路頭に迷い、国を復興することなく、他の場所へと流れていった。




 復讐をやりとげた少年は無力感につつまれたが、そこに奇跡が起こった。

 闇に包まれていた少年の心に光が差し込んだのだった。

 心を病んでいたお姫様が、奇跡的に正気を取り戻したのだ。

 その後、お姫様の国は復興し、多くの人々が喜んだ。

 少年は、その国を守るために尽力し、お姫様がもう二度と苦しい目にあわないために、死ぬまで頑張り続けていた。

 そして、少年はその思いをお姫様に伝える事は、生涯なかった。

 お姫様は、優しいどこかの王子様と一緒になって、幸せに余生をすごしていた。


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