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第三部 立ち止まらぬ世界
第48話 友人との再会
しおりを挟む行きたくなかったけど、こうなった以上足を向けずにはいられない。
俺たちは用意された家へと向かった。
けども。
「私たち、どういう関係だと思われてるのかしら」
「恋人とか……?」
「恥ずかしい事いわないでよ!」
キャロに脛を蹴られた。ちょーいたい。
彼女は赤くなって、顔を手で覆っている。
まあ、気持ちはわからなくはない。
なんせ用意されてるのが、一軒の家。だもんな。
不思議そうに見つめている子供たちにhs、引っ越しだとか言って説明。
家の中へ上げる。
何もなかったらどうしようかと思ったけど、生活に必要なものは一通りそろってるみたいだ。
食べ物とかはさすがになかったので、買い物にいかなければならないが。
(硬貨とかお札、使えるかな)
とりあえずの処置として、スズネとユキタカは俺達の家に居候させる事になっ。
こっちも不自由してるから、色々と手伝ってもらわなければならないのが情けないが。
一番の問題は身分だな。
見張りが付いている事を考えて、「孤児」という仮の身分を与えたものの、正式な住人表はない。勝手に言っているだけという状態だ。
しかるべき機関に調べられたら一発でアウトだろう。
さてそれからはどうやって行こう。
そんな折りに、俺達の元に懐かしい顏が現れた。
知り合いがいるはずのない世界で、玄関のチャイムがなったもんだから驚いた。
変な組織の奴らかと思っていたけど……。
キャロと共に、出迎えに出て顔をのぞかせたのは、懐かしい顔だった。
「お久しぶりですね。先に目覚めたと聞いていましたが、元気そうでなによりです」
「「クオン!?」」
聞けば、重大な怪我を負ったクオンは過去の時代の治療技術では治す事ができなかったため、俺達のようにコールドスリープ処置が施されたと言うのだった。
その話を聞いたキャロが心配そうにする。
「怪我はもう平気なの?」
「おかげさまで。でも、不思議ですね。もう貴方達には会えないと思っていましたのに。こうしてまた顔を合わせる事が出来るなんて、嬉しいです」
「私もよ」
俺もうれしかった。
あの時代の人間とはもう二度と会えないと思っていたからな。
姿は俺たちが知っているころ彼女と変わらないようだが。
「何だがクオン変わったか?」
以前のクオンよりも雰囲気がやわらかくなったような気がした。
「何がですか。オルタライズ・バンカーチェイス。私は何も変わってはいませんよ」
けれど、俺に対する態度は相変わらずのようだった。
しかし、そんなノリすら、無条件でうれしくなってしまう。
「いや、気のせいだったかも」
「困っている事があるなら、何でも言ってください。私に出来る事があれば力になります」
「ありがとな、クオン。この時代でもお前と会えてよかったよ」
しかし、彼女のその心遣いは嬉しかったが、スズネ達の事はどうしても言う事ができなかった。
その後は彼女も交えて、家で小さなパーティーを開いた。
最初に来た時はなじめそうにないと思った家だけど、五人も集まると案外悪くないように思えた。
適当な材料を買って鍋パーティーをした後は、限界が来た子供たちを(俺達用に用意されたベッドで。しかも大きなのが一つ)寝かしつけた。
珍しくお酒を飲んでいるキャロがクオンといろいろ話し込んでて、そっちはソファーで寝落ちしてたな。
(人工呼吸とかファーストキスがどうとか言ってたけど、何の話をしてたんだ?)
俺たちのポッドが移動していた件についてはクオンが知っていたようだ。
元居た場所が自然災害で水没したためだとか。
彼女が色々手を回して、俺たちのポッドを水底から回収してくれたらしい。
つまり彼女は、俺たちの命の恩人という事だ。
クオンには感謝しないとな。
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