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「…でもな…お前がミリー嬢に言い返してくれて、俺の事を知った上で気持ち悪くない、って言ってくれて嬉しかった。その時に俺は…レフィーナ、お前のことがどうしようもなく好きになったんだ」
母親の影に苦しんでいたヴォルフを、レフィーナの言葉が掬い上げてくれた。その時、母親の影に苦しむ感情よりも、レフィーナを想う気持ちの方が大きくなって…どうしようもなくレフィーナの事を好きになっていたのだ。
「……ヴォルフ様…」
「レフィーナ、お前が好きだ。だから、友人なんて嫌だし、恋人として側に居たい。俺はもうお前以外を好きになんてなれない。レフィーナ…お前に側に居て欲しい」
この想いが伝わるように、ヴォルフは真っ直ぐな瞳でレフィーナを見つめた。
レフィーナはヴォルフを拒んでいた訳ではなかった。ただ、戸惑っていただけ。だから、もう少しだけ頑張ってみようと、ヴォルフは言葉を尽くす。
「好きだ。…まだ不安や怖さがあるなら、お前が整理できるまで、いつまでも待つ」
ヴォルフの言葉に偽りはない。レフィーナがどんな答えを出すとしても、その時までレフィーナを想い続けようと心に決めた。
しかし、そんなヴォルフの言葉にレフィーナがゆっくりと首を横に振った。それからレフィーナは横になっていた体を起こすと、ヴォルフの手をその小さな手で包み込む。
握られた手にドキリと、一度心臓が弾んだ。
「レフィーナ?」
「私、初めてで、分からない事が多くて。色々と考えて、怖くなって…。でも、私はヴォルフ様の事が…その、好き…です…」
最後の方は消え入りそうな声だった。それでも、たしかにレフィーナの言葉はヴォルフへと届いていた。
レフィーナもヴォルフの事が好き。
その事にありえないくらい鼓動が早くなって、喜びが体を震わせた。高まった感情のままに、ヴォルフは自身の手を包み込んでいたレフィーナの手を掴んで、ぐっと抱き寄せる。
「わっ…!」
「レフィーナ、ありがとう。大切にする」
初めて抱きしめたレフィーナの体は柔らかく、熱かった。そして、早い鼓動を刻んでいた。
混じり合っていく体温に心地よさを感じていれば、レフィーナの手が躊躇いがちに背に回される。さらに、ヴォルフの胸の辺りにあるレフィーナの頭が、甘えるように顔を擦り付けてきた。
「……っ。あんまり…煽るなよ」
「?」
甘えるレフィーナの仕草が可愛すぎて、ヴォルフの顔や耳に一瞬で熱が宿る。感情が揺さぶられすぎて、色々と余裕が無くなりそうだ。
ヴォルフの余裕をガリガリと削っているレフィーナは、ヴォルフの言葉の意味が分からなかったのか、きょとんと見上げてきた。
見上げてくるレフィーナは上目遣いだし、熱のせいか頬は赤く色づき…思わず唇を奪いたくなってしまって、ヴォルフはレフィーナの体をぐいっと離す。
「…っ。ほら、もう寝ろ!」
離したレフィーナをベッドに寝かせ、落ちてしまっていた布を冷やし直して、レフィーナの額に押し付けた。
急なヴォルフの仕草にレフィーナは不思議そうだ。
「ヴォルフ様?」
「風邪を引いてるんだから、早く休め。…ついていてやるから」
「……はい」
強引に話を逸らしたが、レフィーナは追求してこなっかたので、こっそりと胸を撫で下ろした。体を離したお陰で余裕を取り戻したヴォルフは、優しくレフィーナの頭を撫でる。
数回撫でてやれば、心地よかったのか、レフィーナの瞳がとろんとしていった。
やがて目を閉じたレフィーナに、愛しさがあふれてくる。気持ちが通じたからこそ、今までよりも可愛く見えて、手放したくないという感情がヴォルフを支配した。
「……もう、離してやれそうにはないな…」
苦笑いと共にポツリと呟く。レフィーナに愛想をつかされないようにするしかないか、とヴォルフは静かな寝息を立てるレフィーナの顔を見ながら考えた。
しばらくの間、飽きることもせずにレフィーナの頭を撫でていたヴォルフは、控えめなノックの音にその手を離した。そして、レフィーナを起こさないように静かに移動して、扉を開ける。
「レフィーナの様子はどうですか?」
扉の前に居たのはカミラで、レフィーナの様子を聞きに来たらしい。
「先程簡単な食事と薬を飲ませました。今は眠っています」
「そうですか。…看病はどうしますか?変わることも可能ですが…」
「……もう少し、側に居たいので、俺が看病します」
ヴォルフの言葉にカミラがおや、と片眉を上げた。それから何かを悟ったのか、すんなりと頷く。
「分かりました。では、引き続きお願い致します。それと、ついでなので空いた食器は下げておきますよ」
「助かります」
カミラの気遣いに感謝して、ヴォルフは食器をカミラに手渡す。カミラは食器を受け取ると、お辞儀をしてから去っていった。
ヴォルフはカミラを見送って扉を閉めると、またベッド横に置いた椅子に腰掛ける。
レフィーナの様子を伺いながら、ヴォルフは看病を続けた。
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