71 / 97
71
しおりを挟む
穏やかな表情のレフィーナは話を続ける。
「神様はきっと…私がこの世界で一人ではないって教えてくれていた。まぁ、全然そんなの気づいていなかったのだけど」
「…両親には会いたいか?それに…確か兄も居たな」
「…公爵家を追い出された時は何とも思っていなかったけど…今はちゃんと家族って思える。だから、そうね…会えるなら会いたい、かな。もちろん、兄にもね」
「そうか。いつか、ちゃんと会えるといいな」
「…えぇ。ちゃんと謝って…家には戻れないだろうけど…許してもらえたら嬉しいわ」
そう言ってレフィーナは少し困ったような笑みを浮かべた。
今のレフィーナは貴族としての身分を失っている。実の娘とはいえ、公爵家に帰ることは許されていない。公爵家から呼び出し等があれば会えるだろうが、今まで何の連絡も無いという事はアイフェルリア公爵も相当な覚悟でレフィーナを公爵家から追い出したのだろう。
それでも、こんな風にレフィーナとして家族を想えるなった彼女に、一度は会ってもらいたいとヴォルフは思う。
「えっと、私の話はこれくらいかな。何か聞きたい事とかある?」
何処と無くしんみりとした空気に、レフィーナが明るく話を変える。ヴォルフはレフィーナの言葉に、少し考えてから質問を口にした。
「そうだな…この世界とあちらの世界で共通するものとかあるのか?」
「ヴィーシニアの味噌とか醤油!」
ヴォルフが質問を口にすれば、レフィーナが緋色の瞳を輝かせながら即答する。
真っ先に食べ物を答えた事が面白くて、ヴォルフは口を片手で押さえて笑う。
「くっ…。即答で食い物関係な所が…」
「わ、笑わないでよ…。あれは本当に嬉しかった共通点なんだから」
笑うヴォルフに、レフィーナが少しむっとしたような表情を浮かべた。
不満げなレフィーナに、ヴォルフは笑みを消して声をかける。
「笑って悪かったな」
そう謝ってから、ヴォルフはヴィーシニアを思い浮かべる。確かにヴィーシニアには自国やプリローダにも無いような物が多いと聞く。
「…もしかしたら、ヴィーシニアにはもっと共通の物とかがあるかもしれないな」
「そうかも…。神様の趣味らしいけど…ヴィーシニアを中心にあちらの世界の物を取り入れたのかもしれないわね。私達の国では見かけないし、プリローダでも見ないし…」
「なるほどな…」
レフィーナの言葉に、ヴォルフは少し考え込む。雪乃の世界にあった物がある国。ヴォルフ達の国にも多少はヴィーシニアの物が流通しているが、やはり実際に行った方が色んな物が見られるだろう。
レフィーナが喜ぶのなら、ヴォルフも連れて行ってやりたいと思う。そして、出来ることなら……。
深く考え込み過ぎたのか、レフィーナが不思議そうにヴォルフの名を呼ぶ。
「ヴォルフ?」
「…いつか、一緒に行くか。ヴィーシニアに二人で」
「え?」
「そうだな…例えば、新婚旅行、とかどうだ?」
突然の言葉に驚いたのか、レフィーナが無意味に口を開いたり閉じたりする。それから少し戸惑い気味な視線をヴォルフに向けた。その戸惑いの視線に、少々早急過ぎたかと思えばヴォルフは段々と照れくさくなってきてしまう。
これじゃあ、ヴォルフばかりが未来を考えているようで、空回りしているような気がする。
気が急いてしまうのは、姿も見たことがない父親が引き離そうとしていると、知ったせいでもあるだろう。
一度気持ちを落ち着けようとした所で、飲み物屋の屋台が目についた。
「あの、ヴォルフ…?」
「あぁ、ちょっと待ってろ」
「え?」
少し離れて落ち着こうと、ヴォルフはレフィーナの手をさっと離して人混みに紛れた。
今日はいい天気なので、レフィーナも喉が渇いているだろう。しかも、城門を出る時に息を荒げていたし。そんな事も考えながら、ヴォルフは屋台で飲み物を二つ購入する。
それを持ってレフィーナの所に戻ろうとした所で、ヴォルフはピタリと足を止めた。しかし、それも一瞬の事で、すぐに足を動かす。
「……つけられているな…」
ボソリと、誰にも聞こえない声量で呟く。不快な視線が背に纏わり付くようについてくる。
こんな事をされる心当たりは一つだ。おそらく、昨日レフィーナに接触してきた父親を名乗る男の手先だろう。ヴォルフとレフィーナの仲を引き剥がしたがっていたのだから、何か付け入る隙がないか探っているのかもしれない。
「ほらほら、行こう」
レフィーナの所に戻れば、これまた不快な場面が視界に飛び込んできた。
二人組の男がレフィーナに絡んでいる。しかも、男の一人がレフィーナの手を掴み、体を引き寄せた。
それを見たヴォルフはすっと金色の瞳を細め、足早に近づく。少々……いや、かなり殺気が出ていても仕方ないだろう。なんせ、ヴォルフの一番大切なものに気安く触れたのだから。
不快な視線のせいで気分を害していたヴォルフは、さらに不快な場面を見せられて、そんな物騒な事を考えながら声をかけた。
「神様はきっと…私がこの世界で一人ではないって教えてくれていた。まぁ、全然そんなの気づいていなかったのだけど」
「…両親には会いたいか?それに…確か兄も居たな」
「…公爵家を追い出された時は何とも思っていなかったけど…今はちゃんと家族って思える。だから、そうね…会えるなら会いたい、かな。もちろん、兄にもね」
「そうか。いつか、ちゃんと会えるといいな」
「…えぇ。ちゃんと謝って…家には戻れないだろうけど…許してもらえたら嬉しいわ」
そう言ってレフィーナは少し困ったような笑みを浮かべた。
今のレフィーナは貴族としての身分を失っている。実の娘とはいえ、公爵家に帰ることは許されていない。公爵家から呼び出し等があれば会えるだろうが、今まで何の連絡も無いという事はアイフェルリア公爵も相当な覚悟でレフィーナを公爵家から追い出したのだろう。
それでも、こんな風にレフィーナとして家族を想えるなった彼女に、一度は会ってもらいたいとヴォルフは思う。
「えっと、私の話はこれくらいかな。何か聞きたい事とかある?」
何処と無くしんみりとした空気に、レフィーナが明るく話を変える。ヴォルフはレフィーナの言葉に、少し考えてから質問を口にした。
「そうだな…この世界とあちらの世界で共通するものとかあるのか?」
「ヴィーシニアの味噌とか醤油!」
ヴォルフが質問を口にすれば、レフィーナが緋色の瞳を輝かせながら即答する。
真っ先に食べ物を答えた事が面白くて、ヴォルフは口を片手で押さえて笑う。
「くっ…。即答で食い物関係な所が…」
「わ、笑わないでよ…。あれは本当に嬉しかった共通点なんだから」
笑うヴォルフに、レフィーナが少しむっとしたような表情を浮かべた。
不満げなレフィーナに、ヴォルフは笑みを消して声をかける。
「笑って悪かったな」
そう謝ってから、ヴォルフはヴィーシニアを思い浮かべる。確かにヴィーシニアには自国やプリローダにも無いような物が多いと聞く。
「…もしかしたら、ヴィーシニアにはもっと共通の物とかがあるかもしれないな」
「そうかも…。神様の趣味らしいけど…ヴィーシニアを中心にあちらの世界の物を取り入れたのかもしれないわね。私達の国では見かけないし、プリローダでも見ないし…」
「なるほどな…」
レフィーナの言葉に、ヴォルフは少し考え込む。雪乃の世界にあった物がある国。ヴォルフ達の国にも多少はヴィーシニアの物が流通しているが、やはり実際に行った方が色んな物が見られるだろう。
レフィーナが喜ぶのなら、ヴォルフも連れて行ってやりたいと思う。そして、出来ることなら……。
深く考え込み過ぎたのか、レフィーナが不思議そうにヴォルフの名を呼ぶ。
「ヴォルフ?」
「…いつか、一緒に行くか。ヴィーシニアに二人で」
「え?」
「そうだな…例えば、新婚旅行、とかどうだ?」
突然の言葉に驚いたのか、レフィーナが無意味に口を開いたり閉じたりする。それから少し戸惑い気味な視線をヴォルフに向けた。その戸惑いの視線に、少々早急過ぎたかと思えばヴォルフは段々と照れくさくなってきてしまう。
これじゃあ、ヴォルフばかりが未来を考えているようで、空回りしているような気がする。
気が急いてしまうのは、姿も見たことがない父親が引き離そうとしていると、知ったせいでもあるだろう。
一度気持ちを落ち着けようとした所で、飲み物屋の屋台が目についた。
「あの、ヴォルフ…?」
「あぁ、ちょっと待ってろ」
「え?」
少し離れて落ち着こうと、ヴォルフはレフィーナの手をさっと離して人混みに紛れた。
今日はいい天気なので、レフィーナも喉が渇いているだろう。しかも、城門を出る時に息を荒げていたし。そんな事も考えながら、ヴォルフは屋台で飲み物を二つ購入する。
それを持ってレフィーナの所に戻ろうとした所で、ヴォルフはピタリと足を止めた。しかし、それも一瞬の事で、すぐに足を動かす。
「……つけられているな…」
ボソリと、誰にも聞こえない声量で呟く。不快な視線が背に纏わり付くようについてくる。
こんな事をされる心当たりは一つだ。おそらく、昨日レフィーナに接触してきた父親を名乗る男の手先だろう。ヴォルフとレフィーナの仲を引き剥がしたがっていたのだから、何か付け入る隙がないか探っているのかもしれない。
「ほらほら、行こう」
レフィーナの所に戻れば、これまた不快な場面が視界に飛び込んできた。
二人組の男がレフィーナに絡んでいる。しかも、男の一人がレフィーナの手を掴み、体を引き寄せた。
それを見たヴォルフはすっと金色の瞳を細め、足早に近づく。少々……いや、かなり殺気が出ていても仕方ないだろう。なんせ、ヴォルフの一番大切なものに気安く触れたのだから。
不快な視線のせいで気分を害していたヴォルフは、さらに不快な場面を見せられて、そんな物騒な事を考えながら声をかけた。
16
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた
夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。
そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。
婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる