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「これを2つくれ」
「えっ!?」
「まいどっ!」
レフィーナの戸惑うような声を聞きつつ、ヴォルフは代金を払ってホットドッグを受け取る。そうすれば、レフィーナもそれを受け取った。
「じゃあ行くか」
「……これ、美味しいの?」
「それは食べてみれば分かるだろ」
話しながら歩き出すと、レフィーナも後ろからついてくる。まだ見た目が異質とも言える食べ物に戸惑っているようだが、食べてみれば別に普通のホットドックだ。
暫く歩くと、目的の場所が見えてきた。
小さいながらも花が咲き乱れる綺麗な公園は、かつてザックと来た事のある場所だ。ここは人気がなく落ち着くにはいい。まぁ、相変わらず不快な視線を感じるから、今回は余り落ち着けないだろうが。
隅にあるベンチに並んで腰を下ろした。
「綺麗な場所なのに人がいないわね」
「この公園の近くに有名な大きな公園があるからな。そっちの方に人が流れて、こっちは静かなんだ」
「なるほど…」
納得したようにレフィーナが頷いた。花の香りと控えめに草木の葉が擦れる音を聞きながら、ヴォルフはレフィーナに声をかける。
「さぁ、食べるか」
「…ヴォルフは、これ食べたことあるの?」
「まぁな」
短く返事をして、ヴォルフはホットドッグにかぶりついた。先に食べて見せれば、レフィーナも自分の手元にあるホットドッグに視線を移し、恐る恐るといった感じで小さく口に含んだ。
「……ん…?」
不思議そうにレフィーナは緋色の瞳を瞬かせて、もう一口食べる。どうやら花のソースが何か分かったようで、じっとソースを見つめていた。
そんなレフィーナの様子を見ていたヴォルフはくすりと笑い声をこぼし、答えを口にする。
「…マスタードの味だろ」
不思議そうな表情でレフィーナは頷く。
「どうやって作ってるんだろう…」
「さぁな。プリローダで一番大きい商家が作り出したらしいが、製造の仕方は極秘らしい。だが、プリローダらしさが出ていて人気みたいだな」
「そうなんだ…」
レフィーナと会話をしながら、ヴォルフは大きな口で食べていく。先に食べ終わって、パクパクと食べるレフィーナを見つめる。どうやら味は悪くなかったようで、ホットドッグはあっという間に無くなっていった。
じっと見ていたせいか、こちらを向いたレフィーナとしっかりと目が合う。
ヴォルフはふとレフィーナの口元に視線を落とした。
ほんの少しだけケチャップが付いている。
「ふっ…ケチャップが口の端に付いてるぞ」
「ここ?」
レフィーナが自身の口端を拭う。しかし、そちらははずれだ。
持っているハンカチで拭ってやってもいいが、顔を赤くして恥ずかしがる姿をみたい。
そんな風に思ったヴォルフはそっとレフィーナとの距離を詰める。
「違う。じっとしてろ」
レフィーナの顔にすっと顔を寄せ、口の端に付いたケチャップをペロリと舐めとる。驚いたのか、レフィーナが体を震わせた。
「取れたぞ」
「な…なめ……っ!」
すぐに頬を赤く染めたレフィーナが、動揺しながら舐めた場所を手で押さえる。それを見てヴォルフは、意地悪そうに金色の瞳を細めて笑う。
不満だったのかレフィーナがじとっと睨むように見返してきた。
「……怒ったのか?」
「…何も舐めとる必要はなかったと思うけど…」
「生憎拭くものを持っていなくてな」
ヴォルフが困ったように肩を竦めれば、レフィーナの視線がつぃと自分の胸元に移動した。
そして、レフィーナが静かに口を開く。
「持ってるよね。それ」
「……いや、持っていないな」
レフィーナの指摘に、ヴォルフは胸ポケットから飛び出ていた布端をさっと中に押し込んで誤魔化す。
そんなヴォルフの様子が面白かったのかレフィーナが口元を緩めた。
「ふふっ。そんな…あからさまに…」
笑い声を上げたレフィーナの亜麻色の髪を、ヴォルフも微笑みを浮かべて優しく撫でる。心地よさそうに瞳を細めたレフィーナは、やがて仕方なさそうに小さく息を吐き出した。
「もう…」
可愛らしいレフィーナにヴォルフの気持ちも穏やかになる。
今なら話しにくい過去の事を話せる気がした。正直、過去の事は余り思い出したくないし、人に話して聞かせたいとも思えない。
だが、これからレフィーナとの未来を望むなら、きちんと話しておくべきだろう。
「…なぁ、レフィーナ。そのまま、リラックスして聞いてくれるか。…俺の事を話したい」
和んだ空気を壊さないようにヴォルフは、軽い口調でそう切り出した。そうすれば、レフィーナがゆっくりと頷く。
それを見て、ゆっくりと口を開いた。
「俺の母親は…俺が小さい頃は男と上手くいかなくなると、決まって俺に八つ当たりして手をあげていた。そして…俺が成長するにつれて今度は…俺を男として見るようになっていった。…そんな環境で生きているうちに…いつしか声が出なくなっていた」
随分と昔の事なのに、母親の自分を見る目や手を振り上げる姿が鮮明に浮かぶ。今までなら、それを思い出しただけで胸が気持ち悪くなって、呼吸が苦しくなっていた。だが、今はなんてこと無いように話せるくらい、あれを過去の物に出来ていた。
「えっ!?」
「まいどっ!」
レフィーナの戸惑うような声を聞きつつ、ヴォルフは代金を払ってホットドッグを受け取る。そうすれば、レフィーナもそれを受け取った。
「じゃあ行くか」
「……これ、美味しいの?」
「それは食べてみれば分かるだろ」
話しながら歩き出すと、レフィーナも後ろからついてくる。まだ見た目が異質とも言える食べ物に戸惑っているようだが、食べてみれば別に普通のホットドックだ。
暫く歩くと、目的の場所が見えてきた。
小さいながらも花が咲き乱れる綺麗な公園は、かつてザックと来た事のある場所だ。ここは人気がなく落ち着くにはいい。まぁ、相変わらず不快な視線を感じるから、今回は余り落ち着けないだろうが。
隅にあるベンチに並んで腰を下ろした。
「綺麗な場所なのに人がいないわね」
「この公園の近くに有名な大きな公園があるからな。そっちの方に人が流れて、こっちは静かなんだ」
「なるほど…」
納得したようにレフィーナが頷いた。花の香りと控えめに草木の葉が擦れる音を聞きながら、ヴォルフはレフィーナに声をかける。
「さぁ、食べるか」
「…ヴォルフは、これ食べたことあるの?」
「まぁな」
短く返事をして、ヴォルフはホットドッグにかぶりついた。先に食べて見せれば、レフィーナも自分の手元にあるホットドッグに視線を移し、恐る恐るといった感じで小さく口に含んだ。
「……ん…?」
不思議そうにレフィーナは緋色の瞳を瞬かせて、もう一口食べる。どうやら花のソースが何か分かったようで、じっとソースを見つめていた。
そんなレフィーナの様子を見ていたヴォルフはくすりと笑い声をこぼし、答えを口にする。
「…マスタードの味だろ」
不思議そうな表情でレフィーナは頷く。
「どうやって作ってるんだろう…」
「さぁな。プリローダで一番大きい商家が作り出したらしいが、製造の仕方は極秘らしい。だが、プリローダらしさが出ていて人気みたいだな」
「そうなんだ…」
レフィーナと会話をしながら、ヴォルフは大きな口で食べていく。先に食べ終わって、パクパクと食べるレフィーナを見つめる。どうやら味は悪くなかったようで、ホットドッグはあっという間に無くなっていった。
じっと見ていたせいか、こちらを向いたレフィーナとしっかりと目が合う。
ヴォルフはふとレフィーナの口元に視線を落とした。
ほんの少しだけケチャップが付いている。
「ふっ…ケチャップが口の端に付いてるぞ」
「ここ?」
レフィーナが自身の口端を拭う。しかし、そちらははずれだ。
持っているハンカチで拭ってやってもいいが、顔を赤くして恥ずかしがる姿をみたい。
そんな風に思ったヴォルフはそっとレフィーナとの距離を詰める。
「違う。じっとしてろ」
レフィーナの顔にすっと顔を寄せ、口の端に付いたケチャップをペロリと舐めとる。驚いたのか、レフィーナが体を震わせた。
「取れたぞ」
「な…なめ……っ!」
すぐに頬を赤く染めたレフィーナが、動揺しながら舐めた場所を手で押さえる。それを見てヴォルフは、意地悪そうに金色の瞳を細めて笑う。
不満だったのかレフィーナがじとっと睨むように見返してきた。
「……怒ったのか?」
「…何も舐めとる必要はなかったと思うけど…」
「生憎拭くものを持っていなくてな」
ヴォルフが困ったように肩を竦めれば、レフィーナの視線がつぃと自分の胸元に移動した。
そして、レフィーナが静かに口を開く。
「持ってるよね。それ」
「……いや、持っていないな」
レフィーナの指摘に、ヴォルフは胸ポケットから飛び出ていた布端をさっと中に押し込んで誤魔化す。
そんなヴォルフの様子が面白かったのかレフィーナが口元を緩めた。
「ふふっ。そんな…あからさまに…」
笑い声を上げたレフィーナの亜麻色の髪を、ヴォルフも微笑みを浮かべて優しく撫でる。心地よさそうに瞳を細めたレフィーナは、やがて仕方なさそうに小さく息を吐き出した。
「もう…」
可愛らしいレフィーナにヴォルフの気持ちも穏やかになる。
今なら話しにくい過去の事を話せる気がした。正直、過去の事は余り思い出したくないし、人に話して聞かせたいとも思えない。
だが、これからレフィーナとの未来を望むなら、きちんと話しておくべきだろう。
「…なぁ、レフィーナ。そのまま、リラックスして聞いてくれるか。…俺の事を話したい」
和んだ空気を壊さないようにヴォルフは、軽い口調でそう切り出した。そうすれば、レフィーナがゆっくりと頷く。
それを見て、ゆっくりと口を開いた。
「俺の母親は…俺が小さい頃は男と上手くいかなくなると、決まって俺に八つ当たりして手をあげていた。そして…俺が成長するにつれて今度は…俺を男として見るようになっていった。…そんな環境で生きているうちに…いつしか声が出なくなっていた」
随分と昔の事なのに、母親の自分を見る目や手を振り上げる姿が鮮明に浮かぶ。今までなら、それを思い出しただけで胸が気持ち悪くなって、呼吸が苦しくなっていた。だが、今はなんてこと無いように話せるくらい、あれを過去の物に出来ていた。
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