77 / 97
77
しおりを挟む
翌日、ヴォルフ達はロト湖へと出発するために城門にいた。
見送りにはフィーリアンと、レイが来ている。ヴォルフは護衛の為にレオンの後ろで待機していた。
ずっと俯いていたレイがドロシーの近くに控えていたレフィーナの前まで来ると、そっと顔を上げる。
「レフィーナ…」
「レイ殿下…」
少し躊躇った様子を見せたレイの視線が、一度ヴォルフに向けられる。
それからレイはレフィーナを見て、にっこりと明るい笑みを浮かべた。
「レフィーナ。僕、レフィーナを好きになって良かった」
「え?」
「誰も僕の事を気にしてくれてないと思い込んでいたけど、レフィーナはそうじゃないって教えてくれた。…レフィーナが僕を好きになってくれなかった事は悔しいけど…でも、レフィーナが好きな人と一緒にいることが大事だよね…」
「レイ殿下…」
「だから、僕は…レフィーナの事、好きだけど、諦めるよ」
レイの言葉にレフィーナが驚いた様子を見せる。そんなレフィーナにレイがぎゅっと抱きついた。
「ありがとう、レフィーナ!」
「レイ殿下…私の方こそ、好意を寄せてくださってありがとうございました」
「うんっ。…ヴォルフに意地悪されたら僕に言ってね!こらしめるから!」
涙声でそう言ってレイは、ゆっくりとレフィーナから離れて笑みを浮かべる。
それからレイはヴォルフの前にやって来て、びしっと指を突きつけ、にやりと笑った。
「約束忘れないでね!忘れたらレフィーナは僕が貰うから!」
舞踏会での交わしたレフィーナを幸せにするという約束だ。もちろん忘れてなどいないし、破るつもりもない。
「…はい、レイ殿下」
ヴォルフはすっと胸に片手を当てて、頭を下げた。
頭を上げれば、レイは満足そうな表情を浮かべている。そんなレイにフィーリアンが声をかけた。
「さぁ、レイ。もうそろそろ、出発のお時間だから…」
「はい」
「レオン殿下、どうか残りの滞在も我が国で楽しんで下さい」
「はい、ありがとうございます」
レオンは笑顔でフィーリアンと握手を交わし、ドロシーと共に馬車に乗り込んだ。
それを見送ったフィーリアンは、馬車からレフィーナへと視線を移す。
「レフィーナさん。ボースハイト伯爵や貴族の令嬢達が失礼な事を言ったと聞きました。…私が代表してお詫びします。申し訳ありません」
「フィ、フィーリアン殿下、頭を上げてください!」
頭を下げて謝ったフィーリアンにレフィーナが慌てる。
「気にしていませんから。…それでは、私もそろそろ馬車に乗ります」
「ありがとうございます。お気を付けて」
「じゃあね、レフィーナ!」
「フィーリアン殿下、レイ殿下、ありがとうございました」
フィーリアン達に頭を下げ、レフィーナも馬車に乗り込んだ。ヴォルフはレフィーナの乗った馬車の扉を閉めてから、二人に向き直る。
「それでは、失礼いたします」
「またね、ヴォルフ!」
「お気をつけて」
ヴォルフは頭を下げると、自分の馬へと跨がり、出発の合図を出したのだった。
◇
目的地のロト湖は美しかった。湖畔はもちろんのこと、水底にまで花が咲き乱れている。
ヴォルフは視線を湖から今回滞在する宿へと向けた。2階建ての真っ白な宿は、金色の柵に取り囲まれている。景観を意識した建物は、この湖に美しく馴染んでいた。
「もうすぐ宿に到着する。事前に取り決めたように、護衛する者と荷物を運び込む者に分かれろ」
「はい」
ヴォルフが声をかければ、騎士達は一様に頷いた。
それから少し経ち、無事に宿に到着した。
騎士達はヴォルフの指示通りにテキパキと動き始める。ヴォルフが馬から降りると、宿から人が出てきた。
「お疲れ様でございます。遠い所、ようこそおいでくださいました。私は宿の支配人でございます」
「副騎士団長のヴォルフです。部下達に荷物を運ばせるので、部屋に案内していただけますか」
「はい、承知いたしました」
支配人は深く頭を下げ、振り返る。そして、少し後からやって来た従業員達に指示を出した。そうすれば、従業員達が荷物を持つ騎士達に近づき、案内を始める。
それを見届けた支配人が再びヴォルフの方に向き直った。
「レオン殿下にもご挨拶を……」
「あちらの馬車に乗っておられます」
「ありがとうございます。では、失礼いたします」
去っていく支配人に頭を下げ、ヴォルフは荷物を運ぶ騎士に手を貸す。
騎士に指示を出していると、ふと視線を感じた。
視線を感じる方へぱっと顔を向けると、レフィーナが何やら慌てた様子で不自然に顔を背ける。一瞬の事だったが、レフィーナは確かに自身の頭に……亜麻色の髪をまとめているレースリボンに触れていた。
その事に嬉しさが胸を満たす。
ヴォルフはレフィーナから視線を逸らし、少しだけ口元を緩めながら荷物を持ち上げる。
「副騎士団長、荷物はそれで最後です」
「そうか。では、お前たちは見回りと警備につけ」
「はい」
さっと立ち去った騎士を見送り、ヴォルフは荷物を持ってレオン達の部屋へ向かう。ノックをして中へ入ると、レフィーナがお茶の用意をしている所だった。
見送りにはフィーリアンと、レイが来ている。ヴォルフは護衛の為にレオンの後ろで待機していた。
ずっと俯いていたレイがドロシーの近くに控えていたレフィーナの前まで来ると、そっと顔を上げる。
「レフィーナ…」
「レイ殿下…」
少し躊躇った様子を見せたレイの視線が、一度ヴォルフに向けられる。
それからレイはレフィーナを見て、にっこりと明るい笑みを浮かべた。
「レフィーナ。僕、レフィーナを好きになって良かった」
「え?」
「誰も僕の事を気にしてくれてないと思い込んでいたけど、レフィーナはそうじゃないって教えてくれた。…レフィーナが僕を好きになってくれなかった事は悔しいけど…でも、レフィーナが好きな人と一緒にいることが大事だよね…」
「レイ殿下…」
「だから、僕は…レフィーナの事、好きだけど、諦めるよ」
レイの言葉にレフィーナが驚いた様子を見せる。そんなレフィーナにレイがぎゅっと抱きついた。
「ありがとう、レフィーナ!」
「レイ殿下…私の方こそ、好意を寄せてくださってありがとうございました」
「うんっ。…ヴォルフに意地悪されたら僕に言ってね!こらしめるから!」
涙声でそう言ってレイは、ゆっくりとレフィーナから離れて笑みを浮かべる。
それからレイはヴォルフの前にやって来て、びしっと指を突きつけ、にやりと笑った。
「約束忘れないでね!忘れたらレフィーナは僕が貰うから!」
舞踏会での交わしたレフィーナを幸せにするという約束だ。もちろん忘れてなどいないし、破るつもりもない。
「…はい、レイ殿下」
ヴォルフはすっと胸に片手を当てて、頭を下げた。
頭を上げれば、レイは満足そうな表情を浮かべている。そんなレイにフィーリアンが声をかけた。
「さぁ、レイ。もうそろそろ、出発のお時間だから…」
「はい」
「レオン殿下、どうか残りの滞在も我が国で楽しんで下さい」
「はい、ありがとうございます」
レオンは笑顔でフィーリアンと握手を交わし、ドロシーと共に馬車に乗り込んだ。
それを見送ったフィーリアンは、馬車からレフィーナへと視線を移す。
「レフィーナさん。ボースハイト伯爵や貴族の令嬢達が失礼な事を言ったと聞きました。…私が代表してお詫びします。申し訳ありません」
「フィ、フィーリアン殿下、頭を上げてください!」
頭を下げて謝ったフィーリアンにレフィーナが慌てる。
「気にしていませんから。…それでは、私もそろそろ馬車に乗ります」
「ありがとうございます。お気を付けて」
「じゃあね、レフィーナ!」
「フィーリアン殿下、レイ殿下、ありがとうございました」
フィーリアン達に頭を下げ、レフィーナも馬車に乗り込んだ。ヴォルフはレフィーナの乗った馬車の扉を閉めてから、二人に向き直る。
「それでは、失礼いたします」
「またね、ヴォルフ!」
「お気をつけて」
ヴォルフは頭を下げると、自分の馬へと跨がり、出発の合図を出したのだった。
◇
目的地のロト湖は美しかった。湖畔はもちろんのこと、水底にまで花が咲き乱れている。
ヴォルフは視線を湖から今回滞在する宿へと向けた。2階建ての真っ白な宿は、金色の柵に取り囲まれている。景観を意識した建物は、この湖に美しく馴染んでいた。
「もうすぐ宿に到着する。事前に取り決めたように、護衛する者と荷物を運び込む者に分かれろ」
「はい」
ヴォルフが声をかければ、騎士達は一様に頷いた。
それから少し経ち、無事に宿に到着した。
騎士達はヴォルフの指示通りにテキパキと動き始める。ヴォルフが馬から降りると、宿から人が出てきた。
「お疲れ様でございます。遠い所、ようこそおいでくださいました。私は宿の支配人でございます」
「副騎士団長のヴォルフです。部下達に荷物を運ばせるので、部屋に案内していただけますか」
「はい、承知いたしました」
支配人は深く頭を下げ、振り返る。そして、少し後からやって来た従業員達に指示を出した。そうすれば、従業員達が荷物を持つ騎士達に近づき、案内を始める。
それを見届けた支配人が再びヴォルフの方に向き直った。
「レオン殿下にもご挨拶を……」
「あちらの馬車に乗っておられます」
「ありがとうございます。では、失礼いたします」
去っていく支配人に頭を下げ、ヴォルフは荷物を運ぶ騎士に手を貸す。
騎士に指示を出していると、ふと視線を感じた。
視線を感じる方へぱっと顔を向けると、レフィーナが何やら慌てた様子で不自然に顔を背ける。一瞬の事だったが、レフィーナは確かに自身の頭に……亜麻色の髪をまとめているレースリボンに触れていた。
その事に嬉しさが胸を満たす。
ヴォルフはレフィーナから視線を逸らし、少しだけ口元を緩めながら荷物を持ち上げる。
「副騎士団長、荷物はそれで最後です」
「そうか。では、お前たちは見回りと警備につけ」
「はい」
さっと立ち去った騎士を見送り、ヴォルフは荷物を持ってレオン達の部屋へ向かう。ノックをして中へ入ると、レフィーナがお茶の用意をしている所だった。
16
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた
夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。
そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。
婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。
【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします
紫
恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。
王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい?
つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!?
そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。
報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。
王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。
2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……)
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
※小説家になろう様にも掲載させていただいています。
※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。
※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。
※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。
※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。
※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。
※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。
※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる