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第11話【極振りの末に】
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その次の日、俺は本来の目的である哲の救出の為にH.E.A.V.E.N.での外見を聞こうとする。
ーーが、そんな日に限って哲は営業で回っている為に不在だった。
大分、H.E.A.V.E.N.での戦いにも慣れたし、もうそろそろ哲を救出しに行こうとしたのにタイミングが悪い。
仕方なく、その日は家に帰り、彩菜ちゃんのアバターことカエデちゃんとH.E.A.V.E.N.の中でトレーニングを行う。
「先輩はスピード重視なんですね?」
一緒にスクワットしている最中、カエデちゃんが唐突に尋ねて来る。
「スピード重視と言うか、スピードに極振りしているって感じかな。
力とか精神は初期状態のままさ」
「つまり、先輩の力自体は弱いままなんですね……成る程」
カエデちゃんはスクワットをやめて、何やら考え込んでから頷くとスズキさんを見る。
「えっと、スパーリングとかはプレイヤー同士でも出来るんですか?」
『残念ながら、そう言う類いは戦闘行為になります。
スパーリングをお望みなら、私がしましょう』
「では、スズキさんーーでしたね?
申し訳ありませんが、先輩のスパーリングをお願いします」
『構わないが、今更、私が彼に教えられる事はないと思うのだが……』
「ちょっと気になる事があるので。
もしかすると先輩はもっと上に行けるんじゃないかと」
カエデちゃんがそう言うとスズキさんはわざとらしく、肩を竦めてからミットを手に構える。
俺はいつも通り、ステップを踏んでスズキさんのミットにジャブを叩き込み、素早くバックステップで元の位置に戻る。
「先輩」
「なんだい、カエデちゃん?」
「どうして、手数で攻めないんですか?」
「え?」
その問いに俺もスズキさんも思わず、カエデちゃんの方を向く。
「先輩の素早さなら、もっと手数を増やせられるんじゃないですか?
どうして、それをしないんですか?」
「それは考えた事なかったな」
「例えば、相手にカウンターを狙うとしても先輩の素早さなら、ジャブを十発以上叩き込んでから離れられるんじゃないですか?」
成る程な。ちょっと試して見るか……。
「スズキさん」
『構いませんよ。どうぞ』
俺は素早さを最大まで引き出す。
今までは現実に合わせて、速度を落としていた。
だが、此処は仮想の世界だ。
現実に出来ない事が可能な世界なのである。
俺が素早さを最大まで生かすと時が止まった。
以前、何かの漫画で読んだが、光速を超えて時を止めるなんて能力とか言うのがあったな。
俺はそんな事を考えながら大きく息を吸うとスズキさんのミットに限界まで拳を叩き込み続け、息を吐き出すと共にスズキさんから離れる。
次の瞬間、時が動き出し、スズキさんのミットが手から弾かれた。
『お、おおっ!?』
「え?あ?」
ミットが弾かれて驚くスズキさんと何が起きたか分からずに困惑するカエデちゃん。
そんな二人をよそに俺は自身の胸を押さえて膝をつく。
「先輩!?」
「……だい……じょうぶ」
俺はなんとか、カエデちゃんにそう告げるとスズキさんに顔を向けた。
スズキは俺の様子を黙って観察する。
『……素早さを最大まで極振りして、それを最大まで引き出す事で時を超えましたか』
「……はい……その様です」
『此処まで素早さに極振りした例はないので、此方も少々戸惑っていますが……かなり、身体に負荷が掛かる様ですね?』
「……ええ。かなり来ます。特に心臓の辺りが」
俺が胸を押さえながら呟くとスズキさんは「ふむ」と分析する。
『急激な加速でH.E.A.V.E.N.の機能が処理落ちしているのか、それともクレハさんのVRキットが対応出来なかったからか……いずれにしても極振りした素早さを最大まで引き出すとプレイヤーの身体に過度な負荷が掛かって危険だと言う事が解りました』
「そんな事は良いから、先輩を助けないと!」
分析するスズキさんにカエデちゃんがそう言うと俺の視界に強制ログアウトのカウントダウンが始まる。
それはカエデちゃんーーいや、彩菜ちゃんにも見えているのか、見えない何かをつついている。
『メンテナンスの為に強制ログアウトを行います。
次までにはH.E.A.V.E.N.での極振りの対策をして身体に負荷が起きぬ様にして置きます』
「その言い方だと、この世界のNPCって、やっぱり、運営さんなんですか?」
『まあ、それについてはご想像にお任せします、クレハさん』
スズキさんがそう言って笑うとH.E.A.V.E.N.へのアクセスが強制的に遮断され、周囲がブラックアウトする。
俺はH.E.A.V.E.N.に対応しているVRキットを外すと大きく深呼吸してベッドに腰を下ろす。
程なくして、彩菜ちゃんから安否の心配をされるメッセージが届いたのは言うまでもない。
それにしても、時を超えた攻撃か……本当に漫画みたいな体験だったな。
俺はそんな事を思いながら、彩菜ちゃんとの話に花を咲かせた。
ーーが、そんな日に限って哲は営業で回っている為に不在だった。
大分、H.E.A.V.E.N.での戦いにも慣れたし、もうそろそろ哲を救出しに行こうとしたのにタイミングが悪い。
仕方なく、その日は家に帰り、彩菜ちゃんのアバターことカエデちゃんとH.E.A.V.E.N.の中でトレーニングを行う。
「先輩はスピード重視なんですね?」
一緒にスクワットしている最中、カエデちゃんが唐突に尋ねて来る。
「スピード重視と言うか、スピードに極振りしているって感じかな。
力とか精神は初期状態のままさ」
「つまり、先輩の力自体は弱いままなんですね……成る程」
カエデちゃんはスクワットをやめて、何やら考え込んでから頷くとスズキさんを見る。
「えっと、スパーリングとかはプレイヤー同士でも出来るんですか?」
『残念ながら、そう言う類いは戦闘行為になります。
スパーリングをお望みなら、私がしましょう』
「では、スズキさんーーでしたね?
申し訳ありませんが、先輩のスパーリングをお願いします」
『構わないが、今更、私が彼に教えられる事はないと思うのだが……』
「ちょっと気になる事があるので。
もしかすると先輩はもっと上に行けるんじゃないかと」
カエデちゃんがそう言うとスズキさんはわざとらしく、肩を竦めてからミットを手に構える。
俺はいつも通り、ステップを踏んでスズキさんのミットにジャブを叩き込み、素早くバックステップで元の位置に戻る。
「先輩」
「なんだい、カエデちゃん?」
「どうして、手数で攻めないんですか?」
「え?」
その問いに俺もスズキさんも思わず、カエデちゃんの方を向く。
「先輩の素早さなら、もっと手数を増やせられるんじゃないですか?
どうして、それをしないんですか?」
「それは考えた事なかったな」
「例えば、相手にカウンターを狙うとしても先輩の素早さなら、ジャブを十発以上叩き込んでから離れられるんじゃないですか?」
成る程な。ちょっと試して見るか……。
「スズキさん」
『構いませんよ。どうぞ』
俺は素早さを最大まで引き出す。
今までは現実に合わせて、速度を落としていた。
だが、此処は仮想の世界だ。
現実に出来ない事が可能な世界なのである。
俺が素早さを最大まで生かすと時が止まった。
以前、何かの漫画で読んだが、光速を超えて時を止めるなんて能力とか言うのがあったな。
俺はそんな事を考えながら大きく息を吸うとスズキさんのミットに限界まで拳を叩き込み続け、息を吐き出すと共にスズキさんから離れる。
次の瞬間、時が動き出し、スズキさんのミットが手から弾かれた。
『お、おおっ!?』
「え?あ?」
ミットが弾かれて驚くスズキさんと何が起きたか分からずに困惑するカエデちゃん。
そんな二人をよそに俺は自身の胸を押さえて膝をつく。
「先輩!?」
「……だい……じょうぶ」
俺はなんとか、カエデちゃんにそう告げるとスズキさんに顔を向けた。
スズキは俺の様子を黙って観察する。
『……素早さを最大まで極振りして、それを最大まで引き出す事で時を超えましたか』
「……はい……その様です」
『此処まで素早さに極振りした例はないので、此方も少々戸惑っていますが……かなり、身体に負荷が掛かる様ですね?』
「……ええ。かなり来ます。特に心臓の辺りが」
俺が胸を押さえながら呟くとスズキさんは「ふむ」と分析する。
『急激な加速でH.E.A.V.E.N.の機能が処理落ちしているのか、それともクレハさんのVRキットが対応出来なかったからか……いずれにしても極振りした素早さを最大まで引き出すとプレイヤーの身体に過度な負荷が掛かって危険だと言う事が解りました』
「そんな事は良いから、先輩を助けないと!」
分析するスズキさんにカエデちゃんがそう言うと俺の視界に強制ログアウトのカウントダウンが始まる。
それはカエデちゃんーーいや、彩菜ちゃんにも見えているのか、見えない何かをつついている。
『メンテナンスの為に強制ログアウトを行います。
次までにはH.E.A.V.E.N.での極振りの対策をして身体に負荷が起きぬ様にして置きます』
「その言い方だと、この世界のNPCって、やっぱり、運営さんなんですか?」
『まあ、それについてはご想像にお任せします、クレハさん』
スズキさんがそう言って笑うとH.E.A.V.E.N.へのアクセスが強制的に遮断され、周囲がブラックアウトする。
俺はH.E.A.V.E.N.に対応しているVRキットを外すと大きく深呼吸してベッドに腰を下ろす。
程なくして、彩菜ちゃんから安否の心配をされるメッセージが届いたのは言うまでもない。
それにしても、時を超えた攻撃か……本当に漫画みたいな体験だったな。
俺はそんな事を思いながら、彩菜ちゃんとの話に花を咲かせた。
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