初めまして婚約者様

まる

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卒業パーティーのエスコートは必須ではないので、気心の知れた友人達と今日この日を迎えられた事を共に喜んだ。


「さあペトラ!わたくし達はこの会場の食べ物を制覇しますわよ!」

「アウレーナがそう言うと思ってリーザベト様が料理は特に気合いを入れたと言っていたわ」


まあ!楽しみですわ。うふふと飲食コーナーに行き目を輝かせて盛り付けをした所で殿下からの卒業生代表の言葉が始まった。


「空は深く澄み渡り、この良き日に卒業を迎えられる事に感謝する。しかしこの日を迎えるに当たって相応しくない者もいる。リーザベト・レンブルク公爵令嬢、前に出ろ!」


一体何事でしょう。ふと殿下の方に気を取られていると隣から短い悲鳴が聞こえた。


「きゃ!な、何をなさるのですか!離して下さい!!」

「大丈夫だよペトラは何も心配しないで」

「俺達が守るから安心してくれ」


ペトラが壇上の方に連れ去られて行った。咄嗟だった事と片手にお皿、もう片手はフォークと塞がっていたので何も出来ずに見送るしかなかった。


「一体これは何事ですか。殿下はこの様な事をしでかして許されると思っているのですか」

「それはこちらのセリフだ!お前は公爵家という立場を利用し、私の愛するこのペトラ・ヘルネを嫉妬し不当に虐げていたな!その行いは断じて許しがたい。よってこの場でお前との婚約を破棄する!」


ペトラったら凄い勢いで首を横に振っておりますわね。
それにしても婚約破棄?一体どういう事なのかしら。

リーザベト様はそれはそれは絞り出す様なため息をして殿下に告げた。


「殿下とは婚約破棄は出来ません。わたくしは王太子妃ですので」

「何を言っているんだ?だからお前は王太子妃に相応しくないから婚約破棄をすると言っているではないか!」


また深いため息をされた。


「よろしいですか、ジュリアム2殿わたくし殿と婚約をしているのです。ジュリアム第2王子殿下とは婚約破棄なんて出来ないのですわ。殿下とは婚約なんてしていないのですから」

「は?」


え、何故殿下はあんな反応を?


「まさかとは思いますが一応説明いたします。昔に王が倒れた時に国王の椅子を巡り王子達で激しい争いが起きたのです。国は疲弊し、沢山の命が失われてしまったのです。もう同じ過ちは繰り返さないと、即位した王が王太子を定め、子を成すまで他の王位継承を有する者は婚姻を認められていないのです。その為女性側に配慮され現在王位継承を持つ王弟殿下、そして第2王子殿下の婚約者は定められておりません」

「は?わ、私の母は王妃だ!兄上の母は第2妃なんだ。王妃の母は元隣国の王族だろうが!私が王太子の筈に決まっている!」

「王太子の条件として生を受けた順、母親の元の爵位が一定以上である事。人格、能力と共に精査され貴族院で可を受けた者がなります。ウィリウス様はその条件を全て満たし16歳を迎えられた3年前、王太子の発表とともにわたくしとの婚約を祝う祝賀会が行われた事をお忘れですか?」


貴族の誰もが、まして王族なら常識なのにご存知無かったのですね。しかもリーザベト様とご自分がご婚約されていると勘違いなさるだなんて、うっかりさんですのね。
もぐもぐとお皿に取った料理を消費していると、呆然とする殿下の前に4人の令息が立った。


「イーザンナ・デンハイム辺境伯令嬢前に!」

「ザブリーネ・ロイヒェン伯爵令嬢前へ!」

「ダニエルナ・ライスナー伯爵令嬢同じく前に!」

「アウレーナ・ノイハイム伯爵令嬢、ここへ!」


と何故か私も呼ばれてしまいました。ペトラと友人だからかしら。
口の中に残っていた料理を飲み込み、いそいそ壇上付近に行った。


「貴女方はレンブルク公爵令嬢の権力を笠に着てペトラに悪質な嫌がらせを繰り返していた。違うか!」

「「「「違いますわ」」」」


友人にそんな事する筈ないですわ。
一応作成しておいて良かったですわね。リーザベト様のメイドが預けていた書類を持って来てくれた。


「発言よろしいかしら?」

「言い訳とは見苦しいな」

「ペトラに嫌がらせをしていた方はこちらでリストにしております。既に謝罪、和解を済ませている方も多くいらっしゃるのでこの場での読み上げは致しませんわ。勿論事実であると証言して下さるお約束をいただいております。必要でしたらわたくし達の行動の証言をして下さる方もいらっしゃいます。よってここに呼ばれた方々はペトラ様に誰も無体なんてしておりませんわ」


書類を受け取ると目も通さずぐしゃぐしゃにしながらブルブル震え私を指差し叫んだ。
あらまあ。それ複写ですから構いませんけど証拠として提示しているのですから、大事に扱ってほしいですわ。


「この様な小賢しい書類を作り、撹乱させ自分の非を認めないなんて…!なんて卑しい心根なんだ貴女は!私は決して貴女の様な女を伴侶に選ばない。アウレーナ・ノイハイム伯爵令嬢との婚約を破棄する!」

「俺もだ!ペトラに謝りもせずしらを切りやがって。イーザンナ・デンハイム辺境伯令嬢との婚約なんて破棄をする!」

「ザブリーネ・ロイヒェン伯爵令嬢ってば最低だよ。婚約破棄するからね!」

「ダニエルナ・ライスナー伯爵令嬢、見損ないました。婚約は破棄させていただく」


あれ、今私に婚約破棄を叫んだ方ってモーリック・ルトブルク侯爵子息ですわよね。
あらそれじゃあ…。


「まあ!ルトブルク侯爵子息がわたくしの婚約者でしたのね!」

「君は一体何を言っているんだ…?」


半歩程後退りながら絞り出す様に言われた。


わたくし、幼少の頃に父から婚約した事を告げられましたので婚約者がいる事は知っておりましたわ。ですが今日までお手紙は勿論、一度もお会いした事はなかったものですからルトブルク侯爵子息がそうだったとは存じ上げませんでしたの」

「え、いや、あの、そ、それは…」

「まさか初めてお会いして自己紹介よりも先に、婚約破棄を言われるだなんて思いませんでしたわ」


思わずふふふと笑ってしまいました。


「そこまでだ!」


怒りに満ちた威厳のある陛下の声が響き渡る。


「あの者達を下がらせろ」


すぐ様兵が殿下、御令息を捕らえ何処かに消えていった。


「皆の者!この様な輝かしい日を祝う場を曇らせてしまった事が心苦しくてならない。よって後日もう一度祝いの席を設ける。新しい一歩を飾るに相応しい場を用意しよう」


まあ!また美味しい物に沢山出会えるのね!



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