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第二章 ロルフとリリアの危険な冒険!?

第13話 デートはいつも危険がいっぱい!

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 ◇◇◇

「わーい!今日は3人で一緒にお出かけです!」

「ふふ、フェン、良かったねえ。おいしいものもいっぱい食べようね!」

「はいです!おにくが食べたいです!」

「よーし、じゃあおいしい肉串屋さんに連れて行ってあげるね!」

 張り切って歩くフェンを微笑ましく眺めていると、ふいに石につまづいて転けそうになる。

「わ、わ、わっ……とっ!」

 こけるっと思った瞬間ひょいっとロルフに抱き抱えられなんとかこけずにすんだ。

「ほら、危ないぞ?」

 ロルフはリリアをそっと降ろすと、そのままリリアの手を取って何食わぬ顔で歩き出す。繋いだ手が暖かくて、でも恥ずかしくて。

「ろ、ロルフ、手離しても大丈夫だよ?」

「駄目。リリアは目え離すと危ないからな」

「もうこけないってば!」

 恥ずかしそうに頬を赤らめるリリアを横目で見ながら、ロルフは油断なく周囲に目を光らせる。よく見ると街のそこかしこから何やら不穏な視線が送られてくるのにリリアはちっとも気がついていない。

 獣人とは諦めの悪い生き物なのだ。一度狙った獲物をそう簡単に諦めることなどできない。惚れた女ならなおのこと。こうしてロルフの存在をアピールすることでライバルたちを牽制しているのだ。

「ほら、まずはフェンの服を作ってやろう」

 ロルフに連れていかれた店は、小さいけれど格式の高そうな立派な店構えの洋服店だった。

「え?ここで買うの!?なんか、すっごい高そうなんだけど……」

「俺がいつも世話になってる店だから問題ない。オーナーは変態だが腕はいいから安心しろ」

 店に入りながらロルフが失礼なことを言ってると、

「ちょぉっとぉー?だーれが変態ですって?その生意気な口にキスするわよ?」

 立派な角を持つ羊獣人の男性がロルフをじとっと睨みつけてくる。しかし、後から入ってきたリリアとフェンに気がつくとみるみる目を輝かせた。

「まあまあまあ!可愛いお嬢さん!あなたがロルフの運命の恋人なのね?素敵!素敵よぉー!なぁんて可愛いのかしらっ!もう、食べちゃいたいっ!」

 そう言ってリリアを上から下まで採寸し始める。

「え、え、ええ~~~!?」

「おいこら、リリアに近づくな。殺すぞ?」

 ロルフのイライラした様子を気にする風もなく、今度はフェンの採寸を始める。

「あらあらまあまあ!なんって可愛い子犬ちゃんっ!ああ、アイデアが溢れてくる!さいっこうの逸材よっ!」

 フェンはどうしていいか分からずに途方に暮れた目でリリアとロルフに助けを求めていた。

「おい、変態っ!落ち着けっ!」

「はっ!つい癖で……」

「今日は二人の服を作りにきた。こっちがリリアでこっちがフェンだ。日常生活で必要な枚数だけオーダーする。後、二人とも俺と同じ冒険者で一緒にパーティーを組むことになった。重たい装備は無理だから冒険用に必要な動きやすく丈夫な服も揃えてくれ」

「まぁ!まぁまぁ!任せてくれるのね?腕がなるわぁー!」

「急がないからいいのを作ってやってくれ。あと、今日いくつか買っていくから、似合いそうなのを見せて貰えるか?」

「わかったわ!さぁさぁ、こっちにいらっしゃい!まずはどんな服が似合うか見てみましょうねぇー怖くないわよぉー?」

「ろ、ロルフ!?」

「あ、兄貴!?」

「よし、行ってこい!」

「「ふぇぇぇぇーーーー」」

 二人の縋るような視線に多少の罪悪感を感じつつ、ロルフはにっこり笑って送り出した。変態だが腕は確かなのだ。最初この店に入ったときは体中をすみからすみまで採寸され辟易したものだが、出来上がった服をみると全く文句の付けようがない出来だった。以来服はここで買うと決めている。

 ◇◇◇

 店内を一通りぶらぶら眺めていると、オーナーから声がかかった。

「どう?どうかしら?とっても可愛いと思わない?」

 体にぴったり合った冒険者服を身に付けたフェンは嬉しそうにブンブン尻尾を振っている。

「うん。似合うな。俺が前使っていたものはフェンには大きかったからな」

「この服すっごく軽くて動きやすいです!後、布が伸びるから体を思いっきり動かしても痛くありません!」

「だろ?一度ここの服を着ると他の服は着れなくなる」

「あら、嬉しいわ。さて、お次はリリアちゃんよぉ」

「え、ちょっと待って!私は服買わなくていいってばっ」

「ほぉーら!女は度胸よっ!」

 そうして更衣室から出てきたリリアはスラリと脚をみせたベージュの短いズボンに、たっぷりのレースを使った白いチェニックを合わせたファッションだ。

「こ、こ、こんなに脚見せたら恥ずかしいっ……」

 真っ赤になるリリアだったがロルフの目は釘付けだ。

「なぁーにいってんのよぉ、これくらい普通よ!普通!いまどきおへそ出す子だっているのよぉ。リリアちゃんは抜群に脚が綺麗なんだから見せなきゃもったいないわよ!ナチュラルで清楚な仕上がりがリリアちゃんにびったりよぉ!ね、ロルフ?」

「あ、ああ、その、凄く、似合ってる……」

「あ、あ、ありがと……」

「さぁーて、ドンドンいくわよぉー!」

 こうして着せかえ人形よろしく、どこから出してきたのかと不思議になるほど次々と大量の服を押し付けられるリリアとフェン。完全にスイッチの入ってしまったオーナーのいいおもちゃと化していた。

「ちょ、ロルフ、こんなにいらないって!」

「いや、全部欲しい。着たやつ全部くれ。ああ、フェンのもな」

「ぼく、疲れたです……」

「はぁーい、お買い上げありがとうごさいまーす!沢山買ってくれたからうんとオマケしちゃうわ!」

 目をキラキラさせるロルフとオーナーとは逆にリリアとフェンはどっと疲れていた。

(ろ、ロルフがこんなに洋服好きとは思わなかった!)

 リリアは基本田舎で、みんな似たような服を着て育ってきた。服なんて着れればいいと思っていた口だ。最近はロルフがくれた服を着るようになって自分でも垢抜けたかな?と思っていたのだが、オーナーのこの勢いに慣れるには時間がかかりそうだ。

「疲れたか?」

「うん……はっ!お代!」

「これは俺からのプレゼント。一緒に暮らすお祝いだな」

「え、こ、こんなに悪いよ」

「俺が買ったものをリリアが身に付けてくれるの嬉しいから」

 何だかんだと理由を付けてはロルフはリリアのものを買ってくれる。リリアとて冒険者の端くれ。自分のものは自分で買える!と思うのだが、金額をみたとたん真っ青になった。

「ろ、ろ、ろ、ロルフ?これ、こんな大金……」

「うん?いったろ?俺は甲斐性なしじゃねえって」

 ゆうにリリアの一年分位の給料が吹き飛んでいきそうな金額だ。しかも、この後オーダー品まで作るとなるとどれほどの金額が掛かるのか想像もつかない。

「服ってこんなに高いのぉ?」

「気にすんな。どれも凄く、似合ってた」

 蕩けるように甘く微笑まれてしまうともう何も言えない。

「大切にさせていただきます……」

「おう」

 こうして上機嫌のロルフとは逆に、精神的にもぐったりして店を後にするリリアだった。

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