上 下
7 / 8

7 絶対に逃がさない

しおりを挟む

「あ、あの、あの人たちは……」

「ん?ああ、気にしないで。僕の影だから」

(王家の影というと諜報部員……も、もしかして私、ガイル殿下に監視されてた……?)

「エリーゼ?」

「ひっ!は、はいっ!」

 ガイルに名前を呼ばれて思わず体が跳ねる。優しい初恋の王子様は、いつからこんな凄みを持つ男に変わってしまったのだろうか。普段のガイルとはまるで別人。……もしかして、最初から?

「怖がらせちゃったかな?ごめんね……」

 しかし、シュンとした表情で肩を落とすガイルを前に、なんだかちょっと怖いと思う気持ちは簡単に吹き飛んだ。

「いえ!いいえっ!あの、ガイル殿下が来てくれて、嬉しかったです……」

「本当に?」

 綺麗な紺碧の瞳にまっすぐに見つめられて、体中がかあっと赤くなる。恥ずかしい。とても、ガイルの顔を見られない。今でもガイルが好きだと自覚してしまったから。それでも、きちんとお礼を言わなければならない。

「助けてくれて、ありがとうございます。あんな男に口付けされるぐらいなら、死んだ方がましだと思いました。本当に、気持ち悪くて、吐きそうでした」

「そんな男でも婚約破棄はできないと言っていたのに?」

「……アルバート様にも、もう婚約は解消すると、はっきり申し上げましたわ。わたくしが間違っていました。あんな男と生涯を共にするぐらいなら、死んだ方がましです」

 エリーゼの言葉にガイルは満面の笑みを浮かべる。

「偉いね、エリーゼ。良く決心したね!」

 そのまま抱きしめられてよしよしと頭を撫でられるエリーゼ。

「はい。もう自分の気持ちに嘘をつくのはやめることにしました」

 ポツリと呟いたエリーゼの言葉に、ガイルはうんうんと深く頷く。

「だから、殿下……私達、もう一度おとも……」

 エリーゼがもう一度友達から始めよう。と口にする前に、がっと後頭部を支えて深く口付けをするガイル。

(ん、ん、んん~~~~~~~~~~~!?)

 突然のできごとに目を白黒させるエリーゼ。

「おや、今何か言いかけた?ふふ。エリーゼがあまりに愛らしくて、思わず口付けてしまった。男らしく責任をとってこの場で婚約を申し込もう。お前たちが証人だ。いいな?」

 いつのまにか戻ってきた影の人たちが周りを囲み、ぱちぱちと手をたたいている。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

騎士になりたい貧乏庶民の少年が、付呪された鎧で成り上がる話

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:30

貴方達から離れたら思った以上に幸せです!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:221,407pt お気に入り:12,323

“不吉な”聖女、母国を追放されて幸せになる・完

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:325

あなたの世界で、僕は。

BL / 連載中 24h.ポイント:1,463pt お気に入り:53

《色物ハウス》は穏便に

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

婚約者に嫌われた伯爵令嬢は努力を怠らなかった

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:606

離婚が決まった日に惚れ薬を飲んでしまった旦那様

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:25,945pt お気に入り:413

処理中です...