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第3章 おてんば姫の冒険録

47 発想の転換

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 ♢♢♢
 数多の影から放たれる衝撃波を、次々と重ねた結界で防いでいく。その猛攻に、結界を張る手を休めることはできない。

(数が多すぎる!まだなのっ!)

 魔石のお陰で結界に供給する魔力は足りている。だが、次々に破壊されていくため、魔力の消費も激しい。

 真剣な表情で結界を維持するティアラを、ジャイルはもどかしい思いで見守っていた。

(結界を作ることは出来ねぇ。くそっ、結局こいつのそばにいたって何の役にも立てねぇじゃねぇか)

「こっからでも、アイツらに攻撃が出来ればいいんだけどな」

 ジャイルの呟きに防御一辺倒だったティアラはふと思いつく。

「そうよ、自分たちの攻撃をそのまま跳ね返して当てることができたら……いえ、魔力にそんな余裕は……でも待って。影の放った魔力をそのまま吸収して利用すれば……いけるかもしれない!」

 防御壁を組み込み直していくティアラ。しかし、急速に魔力を使ったため、激しい魔力消耗に体がふらつく。

「ティアラっ!」

 よろめくティアラを背中からしっかり支えるジャイル。

「ジャイル……」

「後ろは俺が支えてやる!お前は結界に集中しろっ」

「……ありがとう!」

 ティアラは全力で結界を組み直す。

(あれ、なんだかさっきより魔力が集めやすい)

 ふと、魔力を使いやすいことに気が付いた。

(よくわからないけど、これならイケるっ!)

 一気に加速していく防御結界。

(できたっ!)

 その瞬間、一斉に影が放った攻撃を跳ね返した。

 次々に自らが無作為に放った衝撃波によって消滅していく影たち。

「やった……やったわジャイル!」

「ああ。良くやった」

 トスンとジャイルに肩を預けると、支える腕に力が籠もった。

「ジャイル?」

「お前は、本当にすげぇよ」

「?ありがとう」

「もっと、お前の役に立ちてぇ」

「今だってこうして支えてくれてるじゃない?いつも感謝してるよ」

「それだけじゃ足りねぇんだよ……」

「ジャイル……」

 肩に置かれた手からジャイルの熱を感じて、どうにも落ち着かなくなったティアラ。

「え、えーと、と、とりあえず離してくれるかな」

「嫌だ」

「へ……」

 そのまま背中から抱き締められてしまう。

「ちょっ!」

「絶対に、俺はもっと強くなる。お前を守るために」

 悔しげに押し殺した声に、ジャイルの本気が伝わった。

(全くもう、負けず嫌いなんだから。でも、ありがとう)

「ちょっと!二人で何してんのさっ!」

 その後駆けつけたミハエルに無理やり引き剥がされるジャイルなのでした。
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