【本編完結】自分が作った世界で自分が理想の勇者を育てたら、予想以上にかっこよくて好きになっちゃいました

黒滝ヒロ

文字の大きさ
24 / 91
第1章

23話 騎士団で突っぱねられる俺

しおりを挟む
結局店で注文したのは、3人とも牛肉のタルタルとポテトフライ。この街で住む人がおすすめするものを素直に食べた方がいいという結論に達したし、いい加減お腹が空いていたからだ。

牛肉のタルタルは生の牛肉のたたきにオリーブオイルや刻んだネギが混じったシンプルな料理だ。これにトマトソースやマスタードなどを好みで混ぜて食べる。味付けはシンプルだが、牛肉そのものが美味しい上にいろいろな調味料と混ぜて味の変化を楽しむことができる。
カゴに盛られたバゲットの上に乗っけて、サラダと交互に食べる。うわ~美味しいなあ。

ポテトフライはこの店の自家製らしく、ほんのりと塩味が感じる程度に塩がふられている。これもトマトソースやマスタードをつけながら食べたけど美味しかった。

「牛肉のタルタルというこの料理は確かに美味いな。」
「そうだね。あたしも初めて食べたよ。新鮮な肉じゃないとここまでにはできない。」
「喜んでもらえてよかった。王都には世界中の素材を使った料理が楽しめるから、今度他のおすすめの店も紹介するよ。あ、そうだちなみに滞在場所は決めてあるか?」

初めこそ警戒してしまったが、キーレンはここまでの会話の中でとても気さくな人柄だということがわかった。
フードから垣間見える顔つきはとても整っており、フードを取ったら余程の美男子なのではないだろうか。
王都に辿り着いてからまっすぐギルドに向かったのでまだ宿は取っていない。これだけ大きな街だからどうとでもなると思っていたが、騎士団にいった後では遅いだろうか。

「それなら宿もこの後押さえてから騎士団の庁舎に行こう。値段の割に料理も美味しいおすすめの宿があるんだ。」
「それは助かる。任せてもいいだろうか。」
「もちろんだ。むしろそちらの方がギルバートに頼まれた役目だ。」

美味しいランチを食べ終えた後、キーレンの案内にしたがって一緒に宿に向かって2部屋の予約を1週間分取った。
持っていた荷物を部屋において、身軽になった上で騎士団の庁舎に向かう。


騎士団の庁舎もギルドと同様、カツールに比べてとても大きい。4階建ての庁舎で所々格子が見える。
俺はカツールの騎士団庁舎であったことを思い出して、身じろぎしてしまう。

「大丈夫か、タケル。」

クリスは俺の心情の機微に聡い。俺が困っているとき、嫌がっているときにさっと言葉をかけてくれる。
彼は自身が過酷な人生を歩んできたにも関わらず人には果てしなく優しい。
そんなところに惚れ込んだ。必ず彼を守って平和な世界を築くんだ。

「大丈夫です。ありがとう、クリスさん。」

ふっとクリスに向けて微笑むとクリスもふっと微笑んで俺の頭を撫でる。

「2人はとても仲がいいんだな。」
「タケルは俺の救世主なんだ。タケルは俺が守ると決めた。」
「へえ…そう思うまで何があったのか今度詳しく聞きたいものだな。」
「落ち着いたらな。」
「さあついたよ。キーレンどこに行けばいいんだい?」

庁舎の前でしばらく会話していたところにベレッタが口を挟む。きっと普段は落ち着いて見える彼女も内心では焦っているのだろう。彼女は誘拐事件の関係者でもある。
気を取り直して騎士団庁舎に入る。キーレンは慣れた足取りで入って右手に進んでいく。遅れないように後をついていくと、『生活安全課』と書かれた看板のついた部屋の前にたどり着いた。

コンコンとノックをすると中から「どうぞ」という声が聞こえる。目の前にはカウンターがあり、そこで話をするようだ。

「冒険者ギルドから派遣されたキーレンという。ギルド長より依頼書を預かってきたのであらためて貰いたい。」

カウンターで応対する騎士は不審げな顔でキーレンから渡された依頼書を眺める。しばらく読んでから思案げな表情を浮かべて、依頼書を持ったまま奥の方にいってしまった。

「持っていっちゃいましたね。」
「うん。彼では判断できないからだろう。きっと部署のトップが出てくるよ。」

キーレンの言う通りしばらくすると最初に応対した騎士がかったるそうに戻ってきた。

「課長が対応するとのことなので、あちらの部屋で少しお待ちください。」

いきなり課長が対応するとは、騎士団ではそれなりに大きい扱いなのだろうか。
騎士の指示通り入ってきたドアの反対側にある応接室と書かれた部屋に移動して、10分ほど待った。

「お待たせしましたな。」

ガチャっとドアが空き姿を見せたのは腹の突き出た課長だった。
彼はふうふうと言いながら、汗を拭きつつ正面の席に着いた。

「突然の申し出で悪いが、誘拐事件の情報について共有させてもらいたいんだが。」
「その事件につきましては、騎士団でも極秘に捜査を進めているところでして、みだりに外部には漏らせない情報も多いのです。ギルド長の依頼といえど、外部の民間組織に慎重な対応が求められる本件について提供できる情報はありません。申し訳ありませんがお引き取りください。」
「緊急時の相互協力協定があるはずだが。」
「上層部より本件に関しましては相互協力協定の範囲外と指示されております。従って私の判断で情報を出すわけにはいきません。」

言葉の上では丁寧だが、言っている内容は協定を無視して、大人しく帰れというものだ。

「騎士団が一方的に協定を反故にすると言うことか!?」
「誘拐された子供たちを助けたくないのかい?ここは協力し合って一刻も早く救出するべきだろ?」

キーレンとベレッタが詰問する口調で目の前の課長に詰め寄る。課長は冷や汗をかきながらふうふう言っている。
しかし顔からは明らかに拒絶の顔色を示している。

さて、課長のステータスを確認して彼が今考えていることが何か調べてみよう。
心の中で「ライブラリー」と唱えると、視界にウインドウが立ち上がり目の前の課長のステータスが表示される。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ダンカン・ビアージョ
属性 水 LV 15
王都 騎士団所属 警ら隊 生活安全課長





『あああああ、もう早く帰ってくれ』
『この件に関わるとろくなことにならん!』
『あの方に目をつけられたらおしまいだ』




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

余計な情報は飛ばして、彼の思考に関する部分だけ注目した。
案の定迷惑に感じているようだ。「あの方」?あの方というのが騎士団の内部の人間なのかどうかはわからないが、課長よりも上位の人間であることは間違い無いだろう。

しばらく課長たちと言い合いをしたが、課長の拒絶の姿勢は頑なでしまいには無理矢理追い出されてしまった。
これ以上の情報は集められるわけではなさそうで、今日のところは諦めて帰るしかなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 透夜×ロロァのお話です。 本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけを更新するかもです。 『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も 『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑) 大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑) 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

絶対に追放されたいオレと絶対に追放したくない男の攻防

藤掛ヒメノ@Pro-ZELO
BL
世は、追放ブームである。 追放の波がついに我がパーティーにもやって来た。 きっと追放されるのはオレだろう。 ついにパーティーのリーダーであるゼルドに呼び出された。 仲が良かったわけじゃないが、悪くないパーティーだった。残念だ……。 って、アレ? なんか雲行きが怪しいんですけど……? 短編BLラブコメ。

処理中です...