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 数日後に薬屋から封書が届いていた。発表会で使用するピアノに仕込まれていた針の分析結果だ。やはり毒が塗られていた。更に恐ろしいことにその毒の成分はチューリップだそうだ。チューリップは人を殺すほどの殺傷能力を持つほどの毒は持っていない。といっても、呼吸困難に陥るリスクがあったらしい。

 困ったことに毒の成分がチューリップということでは、クリスティーヌが犯人だという証拠にはなりえない。ほかでもない、私がチューリップをいつも部屋に飾っていたのだから。

 私が刺さって倒れても、針なんて証拠になりようがないもの。私がそうしたようにクリスティーヌも回収するはず。私の体内の毒の成分が分かったとしてもいつもチューリップを飾っているのは私だから、自殺として処理されるかもね。

 仮に私以外の人が刺さった場合も犯人は私。いいえ、クリスティーヌ自ら針に刺さるかもしれないわね。魔族なら呼吸困難ぐらいでは死なないでしょうし。そうすれば針を仕込んだ犯人は私と訴えていたでしょうね。

 あー、成分が魔族の潜む辺境の地の毒キノコの毒だったなら証拠になったのに。

 なにはともあれ、針に気づけて良かったわ。もう、チューリップを生けるのもやめときましょうか。

 でも、ほんとに分かりやすい子。宣戦布告は確かに受けたわよ。もう仕掛けてくるなんて、早いのね。私の処刑される未来も早まってるのかしら? 

 きゃああ!

 廊下から侍女たちの悲鳴と慌ただしい足音がする。え、朝から何か起きたの?

 部屋から飛び出すと火の手が見えた。

「また、火事なの? あれはまさか!」

 思わず口を覆った。私の絵……私が燃やされている。お母様の部屋へと通じる廊下に飾られたお父さまと幼い私が描かれた肖像画。私の肖像画はあの一枚しかないのに。ついに、私がこの家から消えるような、一抹の不安を覚える。めまいがして足がすくむ。座り込むとコラリーとフルールが駆け寄ってきた。

「アミシアさま!」

「しっかりして下さい!」

 私はこの屋敷には必要のない人間なんだ。そう思うと熱を持った意識が遠のいていった。
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