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しおりを挟む板張りの床に、四方を鏡面で囲まれた特徴的な一室。
そこに集まるのは、一様に身体にぴたっと張り付くような不思議な衣装を纏った天子達。
「いち、に…」と掛け声に合わせて手足を曲げ伸ばしする幼い彼らの中に、
一人だけ、大人の晴君が混じっていた。
……なんで??
話は少し前に遡る。
「合格おめでとう千晴くーーん!♡」
千晴が再試験に合格したという知らせを聞き、真っ先に自宅まで駆けつけたのは桜鈴だった。
彼は扉を開けるなり勢いよく千晴に抱き着いて、全身でその喜びを表現する。
「雷君がああ言ってたからちょっと不安だったけど、ぼくは信じてたよ!千晴くんは絶対合格するって!」
「ありがとう。雷君に会うよう促してくれた桜鈴のおかげだ。あの時はっきり言ってもらえて良かった。すぐ解決……できたし……」
「なんか顔赤いよ?」
そんな二人の天子の仲睦まじい交流を、晴君は微笑ましく眺めていた。
千晴の合格をまるで自分のことのように祝ってくれるだなんて、やっぱり桜鈴ちゃんはいい子だ。
ニコニコと見すぎていたせいか、その視線に気づいた桜鈴はハッ、と慌てて千晴の背中に隠れる。そこから少しだけ顔を出して、おそるおそる様子を窺うように覗かれた。
……うん。桜鈴ちゃんの僕に対しての反応はいつもこうだ。
照れているだけと思いたいが、以前盛大に泣かせた前科があるためどうにも強く出れない。
う…幼い子にこうも警戒されると、案外心にくる。
今回も密かにショックを受けていると、少しの間の後、控えめで酷く可愛らしい声がかけられた。
「は、晴れの君も、改めて署名、してくれたんですね…」
「えっ?あ、ああうん。天徒になった千晴をいっぱい褒めてあげたくて」
「……っふー…。ありがとうございます……」
「……何で桜鈴ちゃんがお礼言うの…?」
「わっ!なんでもありませんっ!」
桜鈴は焦ったように手を振ると、またも千晴の背にすっぽり隠れてしまう。
よ、余計な返ししなきゃよかった…。何が余計かも分からなかったけど……。
項垂れる晴君を他所に、桜鈴は改めて千晴に向き直った。そこで「次の試験も千晴くんなら楽勝だよ!」と激励の言葉をかけて──、
……次?
「えっと、もう二人は天徒なんじゃないの…?」
晴君の素朴な疑問に、桜鈴の目が驚愕で大きく見開かれた。
──そこから始まったのは、桜鈴先生による緊急説明会である。
「いいですか?天徒になるための試験は①筆記試験、②実践試験、③面接試験と全部で3つあります!ぼく達はまだ第一試験を突破しただけにすぎません!」
晴君と千晴、その机を挟んだ向こう側で、試験項目が書かれた厚紙をドンッと立てた桜鈴が捲し立てる。彼は筆で『①筆記試験』という文字を囲むようにぐるぐる円を描き、そこをこれでもかという程強調させていた。
何というか、鬼気迫る勢いだ…。こんな桜鈴ちゃん見たことない。それほど僕の疑問がまずかったということなんだろう。
晴君は心して聞こう、といそいそ背筋を正した。
「筆記試験は天人としての必要最低限の知識を問うだけのものなので、毎回ほとんどの天子が通過します。反対に、一番合格者を絞ってくるのが次の実践試験なんです」
「実践試験は何をやるの?」
「いい質問です晴れの君」
「えっ、あ、ありがとう……えへ」
思いがけず褒められたのが嬉しくて、思わず緩んだ笑みを返す晴君。
しかし桜鈴はどこまで行っても真剣だった。
「実践試験の内容は、剣舞です」
剣舞。その名の通り、剣を使った舞のことだろう。
それが試験……?
あまりピンとこなかった晴君だが、それは千晴も同じようだった。顔を見合わせた二人は同じ向きに首を傾げる。
桜鈴もその反応は織り込み済みだったのか、説明は淀みなく続けられた。
本当に気が利く子だな。
「剣舞と言っても舞自体が純粋に評価されるわけではなくて、その実、一対一で行われる攻撃妨害ありの対戦試合なんです。一般的な試験対策としては神力の操作性を上げることが推奨されているんですが、最終的な合否の判定は当日の観戦客による投票で決まるそうなので、見苦しくない程度の剣舞の完成度も求められるんですよ」
「すごい、説明が大人びてる!」
「桜鈴ですから」
「千晴からの信頼もすごい!」
「ら、雷君の受け売りですぅ…!」
褒められた桜鈴は、ひゃーっと恥ずかしそうに顔を覆う。
あ、いつもの桜鈴ちゃんだ。
彼の分かりやすい説明のおかげで、実践試験の概要は掴めた。大きな括りとしては、神力の操作能力を評価するための試験なのだろう。
晴君がそう納得できたところで、先程までもじもじと恥ずかしそうにまごついていた桜鈴が、勢いよく身を乗り出した。
「ぼっ、ぼくも今雷君に剣舞を習ってる最中だから、まだ遅くないよ千晴くん!一緒に練習しよう!」
「えっ?あ、ああ…」
「晴れの君も!」
「……えっ?」
──そんな提案をされたのが昨日の話。
「……それで、千晴の練習はわかるけど、何で僕まで……?」
「シッ。晴君、私語厳禁ですよっ」
隣に座った桜鈴に小声で諫められる。
彼が目をやった先を辿ると、そこには、嫌悪の目で晴君を見下ろす剣舞の講師こと雷君の姿があった。
あ、雷君は普通の格好なんだ…。
目が合ったのに無反応なのもどうかと思い、ひとまずへら、と笑いかけるが、秒速で舌打ちが返ってくる。
空気を轟かせんばかりの音が鳴ったそれに、周囲の天子達はびくうっ!と肩を揺らし、一斉に背筋を正した。
いつもこんな感じ…?それとも、僕がいるからこんなに張り詰めた空気感になってたりする?だったら本当に申し訳ない……。
室内には15人ほどの天子が居た。
晴君が見かけたことのない顔の子も多く、おそらく天候区以外からも集まってきているのだろう。それほど雷君の指導が優れているということだ。
すごいな。
雷君がこうして舞の講習をやっていただなんて全く知らなかった。筆記試験の監督も任されているみたいだし……、僕そんな役回り一回も頼まれたことないんだけどな?
天候区には現在、晴君、雨君、雷君、雲君、雪君の5人の君が存在している。
中でも雨君と雷君は、区の創設時に晴君が各所から引き抜き、君へと据えた二人で、当時からよく働いてくれていた天候区の主力である。
最初は二人とも晴君に対して敬語で、それなりに澄み切った目を向けてくれていたような気もするが、今や見る影もない。
雷君なんかは特に、嫌悪が露骨だ。
まあそれも当然である。
彼らが色々と手を広げて多忙にしている最中、何故か僕はその講習の生徒として紛れていたりするんだから……。
何だかもう色んな意味で恥ずかしいよ。君としても、千晴の師事者としても。
晴君は大人しく足を開いて柔軟を始めようとするが、身体が硬く、全く前に屈めなかった。
……身体も硬い。なんて情けない奴なんだ僕は。
自己嫌悪が更に増した。
その時、隣で「ふっ」と優しい吐息の音がする。
桜鈴とは逆方向のそちらに視線をやると、そこには晴君と同じ姿勢で、しかし明らかに柔らかく上体を倒した千晴の姿。
彼は下からこちらを見上げるような体勢のまま、小声で囁く。
「先生、全然曲がってない」
可笑しそうに、珍しく満面の笑みを見せた千晴に、きゅーんと晴君の心臓が心地よく痛む感覚があった。
あ゛ーーーこの世の誰よりも可愛いーーー!!
「え、えー、恥ずかしいなあ」なんて言いながら、口元はでれ、とだらしなく緩んでしまって戻らない。
千晴がこんな風に笑ってくれるなら、むしろ身体が硬くて良かった。晴君は結構本気めにそう思った。
状況も忘れ、千晴で和んでいると、晴君はふと周囲が静まり返っていることに気付く。
近くにいた天子達は皆ピリつき、緊張に身を硬くしているようだった。
一体何が…?そう思い軽く周囲を見回すが、原因はすぐに判明した。
晴君の背後には、いつの間にか威圧感のある雷君が立っていた。
雰囲気の問題だろうか。なんだか周囲に暗雲が立ち込めている気がする。
髪の隙間から覗いた鋭い眼圧に、晴君は反射でひえっと息を呑んだ。
私語が目に余ったのだろうか。折角の講習を邪魔してしまったのなら完全にこちらの落ち度だ。
咄嗟に謝罪しようと居住まいを正した晴君だが、それよりも雷君の口が早かった。
「ワザとらしい」
「……へ?」
「違います。この人は本当に身体が硬いだけの人です。貴方に注目して欲しくてやってるわけじゃありません。やめてください」
呆気にとられた晴君の代わりに、何故か千晴が言い返す。
しかし、その内容が内容だった。
な、何言ってんの千晴!?「注目して欲しくてやってるわけじゃありません」って当たり前だよ!雷君そんなこと思ってないと思うよ!?
千晴(とついでに晴君)はあくまで雷君に舞を習わせてもらっている立場だ。ここで雷君の気分を害して、千晴に不利益が生じてしまうのはどうしても避けたい晴君だった。
何とか千晴の発言を誤魔化さないと…!
「講習の邪魔してごめん!ら、雷君は僕と違って身体柔らかいんだろうな~、いいなぁ~……なんて…」
「は?……想像しないでくれる。気色悪いな」
「してませんから。被害妄想やめてください」
「こらっ、千晴!」
「もごごっ」
「これが見たかった…っ、くぅう~~っ」
「桜鈴ちゃん??」
何故か更に混沌としてしまった空間。
攻撃的な発言をする千晴の口を物理的に塞いだはいいものの、これからどう収集をつければ良いのかわからない。
というか今がどういう状況なのかもさっぱり分からない!僕が謝れば済む話?どうなの!?何なの!?
何だかもう雷君にはそもそも限界まで嫌われてそうだから、何しても悪い方向に働く気しかしないんだけど!
内心で盛大に焦っていると、突如、雷君から強い力で腕を引っ張り上げられた。
「わっ!?」
強制的に立ち上がらされた身体。
足元もおぼつかない内に、やや強引に腕を引かれ、晴君は部屋の中心部まで移動させられる。
こ、公開処刑ってことですか!?
皆の前でボコボコに殴られる想像をして、一気に血の気が引く晴君。
その直後、壁側で少し屈んでいた雷君から、練習用の模造剣が何とも無造作に投げ渡された。
「!?」
晴君は動揺しつつも、自分に向かって飛んでくるそれをわっ、たっ、と少々危なっかしく受け取る。
そして今一度、正面に立つ雷君を窺った。
「いい機会だから、おまえ達に見せてあげる」
その言葉は周囲の天子らへと向けられたものだ。
しかし、自分用の模造剣を手元で器用に回した雷君は、手に馴染んだその銀色の切っ先をまっすぐ晴君へと差し向ける。
「えっ」
自然と晴君の表情が引き攣った。
「剣舞は神を楽しませる行為だ。醜い舞は許されないよ」
トン、
雷君が酷く軽やかな動作で踏み込む。
次の瞬間にはもう、彼は晴君の眼前に迫っていた。
刃が振り下ろされる。
ギンッ!!と鉄同士が激しくぶつかり合う音がして、細かな火花が弾けた。
重なった剣越しに見える金色の眼が、微かに細められる。
「旋回の振りは大きく。関節をしっかり曲げ伸ばしして、出来るだけ動きを大胆に見せること」
雷君はすぐに剣を弾くと、蝶が舞うような静かな動作で後退した。
それはただの移動ではない。
足の運び、腕の配置、重心の位置、表情、視線、服の靡き、髪の流れ、それら全てが細部まで洗練された、魅せるための舞であった。
「雑なのは絶対駄目。軸はブラさず、指先、足先まで意識してしなやかに」
天子に教えを説きながら、様々な角度から剣撃を打ち込み、優美に舞い踊る雷君。晴君はその動きに思わず見惚れながら、彼の剣を受け続けることだけに専念した。
これは講習だ。雷君は今、自ら天子達に舞の手本を見せている。
そのために晴君を利用してくれているのなら、全力で役に立ちたかった。
……これで千晴の失礼な発言とか全部なかったことにしてくださいお願い!
「力の込め具合と速さには適度に緩急をつけて。等速でもたもた舞われても退屈なだけ」
雷君の動きは、限界まで無駄が削ぎ落とされた美しいもの。だからこそ、その視線と剣に加わる力の具合で、彼が次にどう動こうとしているのか、晴君にはそれが手に取るように分かった。
「そして美しい静止は、舞の質を跳ね上げる」
また一歩、距離を詰めてきた雷君。
晴君はあえて退かず、喉に刃を突き付けられたまま、のけ反るように背を逸らす。
途中で腰が支えられて、ぐっと雷君の身体に引き寄せられた。
密着することで安定した身体は、揃ってぴたりと静止する。
布擦れの音すら耳に響く、張り詰めた間があった。
次の瞬間、周囲を一斉にわあっ!という歓声が満たす。
パチパチ、天子達から次々と巻き起こる拍手に、晴君はホッと胸を撫で下ろした。
良かった。何とか無様を晒さずに済んだみたいだ。
終わりの気配を察知して、晴君はそのまま上体を起こそうとする……が、喉元に突き付けられた剣は退けられず、それどころか余計に近づけられて、更にのけ反らざるを得ない状況にさせられた。
雷君へと預けられる体重が増したせいか、腰に添えられた手がぐっと力強さを増す。
「あ、あの、」
「美しい舞に必要なのは、動きの可動域を広げられる柔軟さと、あらゆる体勢を可能にする体幹、あとは、身体の静と動を支配出来るだけの筋肉。それが揃えば自然に身体は出来上がる。……それと…」
「ら、雷君?あの、ちょっとこの姿勢…、辛い…っ」
「……ド変態が」
「ド変態はアンタだ!顔見過ぎなんですよ!早く先生を離してください!」
「雷君と晴君が密着?……これは現実?ぼくの妄想?晴君は雷君で密着で密着が密着でらいくんでせいくんがみっちゃくとみっちゃくにみっちゃ、みっちゃ、」
「本気で背骨折れる折れる折れるッッ!!」
もう限界、というところで雷君の手は離され、晴君はそのままべちゃっと床に落とされた。
「大丈夫ですか」駆け寄ってくれる干晴にぎこちなく笑みを返しながら、晴君はこちらに背を向けた雷君を見やる。
彼は「おまえ達はこんな無様な姿を晒さないようにね」と最後の晴君の失態を天子達に言い含めているところだった。
分かり辛いが、機嫌はそこまで悪くなさそうだ。
周りの天子達の空気も最初と比べて随分和やかになっている。
何はともあれ、少しでも貢献出来たのなら良かった。
晴君が仕事をやり終えた風に力を抜いていると、いつの間にかこちらを振り返っていたらしい雷君が、くつろいでんじゃねぇよ、と言わんばかりに冷たく睨みつけてきた。
はい。ごめんなさい……。
*
「疲れたぁ…」
講習からの帰り、晴君の口からは溜息と共にそんな心からの声が漏れる。
……何故僕が疲れているんだろう。剣舞の試験を受ける予定もないのに。
現状を少し訝しむ晴君だった。
「それにしても、みんなすごく上手だったね。千晴も覚え早いって桜鈴ちゃんに褒められてたし。僕が1番ぎこちなかったな~」
あははと笑い飛ばしながら千晴に話しかけるが、返事はない。
隣を歩く彼は、手に持った紙に集中しているようだった。
気になった晴君は上から覗き込む。
「何それ?」
「毎日舞の講習をやっているらしくて…」
受講者を募るための用紙だったようだ。
桜鈴か誰かに勧められたんだろう。
「いいね。ありがたく教えてもらっておいでよ」
「はい。でも先生はもう来ないでください」
「え!?い、いや行く気はなかったけど…、でもなんかそうやって突き放されるとちょっと悲しい!僕のことが恥ずかしかった!?そりゃ身体は硬かったけどお!」
「それはそうなんですけど」
「そ、それはそうなんだ…」
威厳がなくてごめん…。
どよん、と自身の情けなさに若干気分を暗くしていると、少し経って、千晴が言い辛そうに口を開いた。
「あの……、先生は雷君のことどう思ってますか?好きですか?」
「へ?」
「正直に答えてください」
唐突な質問に目が瞬く。
質問内容に似合わず、千晴の表情はどこか気迫を感じさせるような真剣なものだった。
「そ、そうだね。いつも世話になってるし…、好き、かな?」
「……も、ですか…?」
「え?」
「俺よりもですか……?」
開いた口がふさがらないとはこのことか。
顔のあらゆる部位をかっぴらいた晴君は、上目でそんなことを聞く千晴から目が離せなかった。
どうしてそう君は可愛いことしか言わないしやらないのか。この謎、一生かけて解き明かしたい……。
「…先生?」と不安そうに窺われて、晴君は自身の意識を無理矢理現実へ引っ張り戻す。
そして、もう随分前から決まり切っている答えを口にした。
「千晴が一番大好きに決まってるよ」
「……、よ、よろしい…」
「上司かな?」
照れを隠すようにむっと口を噤む千晴。真っ赤になって逸らされる顔が可愛い。
はあー……可愛い。
……、はあっ、はあっ、駄目だ可愛い!一瞬抑え込めるかと思ったけど無理だった愛おし過ぎて!何今の一連の可愛い言動!
だ、大丈夫かこんなに分かりやすく可愛くて!誰かに攫われたりしないこんなの!?こんな小さくて可愛くてしかたないの!皆欲しがるんじゃない!?
急に周囲を警戒し出した晴君を、すっかり熱の引いた千晴が怪訝な顔で見ていた。
それからしばらくして、何とか興奮を収めた晴君。
……それにしても、いいなあ雨君と雷君。こんなに可愛い千晴に教えられるものがあって。こんなに可愛い千晴にキラキラした尊敬の目を向けられたりして。
思考はそんなところに落ち着いていた。
雨君は神力の扱い方、雷君は舞、それなのに千晴の師事者である筈の晴君は何一つ彼に対して試験に役立つものを教示出来ていないのだ。二人を羨ましく思うのも当然だった。
何だかすごく悔しい。僕も千晴に頼られたいのに。
「僕も千晴に何か教えたいな~」
「何が出来るんですか?」
「何が出来るんだろう、僕って……」
悪気など一つも含んでいないであろう純粋な千晴の言葉が、胸にグサッと来た。
役立たず、ここに極まれり……。
少し肩を落としながらトボトボ歩みを進めていると、半歩程小走りで晴君と距離を詰めた千晴が告げる。
「……さっきの、…その、舞……き、綺麗でしたよ」
「そうだね。どのくらい練習すればあんな風に踊れるんだろうね」
「……」
「ち、千晴さん?何だか急に紙が顔にぶつかりだしたんですけど…」
「はあ。風向きですかね」
「い、いや、故意ぃ…」
「……舞とか、先生も教えられるんじゃないですか?」
「え?僕は無理だよ。踊ったことないし」
「? さっきのは?」
「? 雷君とのやつなら、僕はただ剣を受けただけ……、って、それだ!!」
突然の大声に、千晴はびくっと身体を揺らした。それを申し訳ないと思いつつ、しかし、溢れる歓喜が止められない。
「見つけた!僕が千晴に教えられること!」
「?」
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