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1章 異世界転移
偽記憶喪失者
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※ 地の文を1人称に変えました。先に読んでくださっていた方々には申し訳ありません。 投稿済みのものも随時一人称に改稿ずみですが、お話自体の変更はありません。
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「お待たせ、って何店広げてるの?」
解体が終わったらしいアリーセが、リュックの中身をぶちまけている俺を見て聞いてくる。
「あ、いや、何が入ってるのかなー?って思って……」
「ああ、なるほどね~、ってこれで全部なの? 基本的な野営道具しかないじゃない、しかもどれも新品に見えるくらい綺麗ね」
まごうことなき新品である。
「そーだね、食料も入ってないし……、なんでかはわからないけどね!食料も入ってないし」
「まあ、最後に憶えてるのが街を外の草原から見てたっていうなら、その街から出たばかりか、出るつもりで準備していた最中とかだったんじゃないの?」
「え? あーそうかもしれないね。そ、それはともかく、ここから街までは遠いのかな?」
さり気なく食べ物がありませんアピールをする俺だったが、アリーセは俺の記憶の考察に入ってしまった。即興で作った記憶喪失設定なので、その辺りをいろいろと突っ込まれるとボロが出かねないので、慌てて別の話題を振る。
「そこまで遠くないから安心していいわ、今は昼過ぎくらいだけど、夕方前には街に着けると思うわ」
「それは良かった。けどアリーセは冒険者なんだろ? 何か別に依頼を受けてここに来てたんじゃないのか? それを済ませるくらい待つのは構わないけど」
「あ、それは心配しなくて大丈夫よ。弓を新調したらちょっと懐が寂しくなっちゃって、新しい弓を試しがてら、薬草採取と増えたモンスターの間引きに来ただけだからね。薬草は採取済みだしアルマベアーもちょうど仕留めたから問題なし。そもそも、イオリを街まで連れて行って報酬を貰うほうが割が良いもの」
金属製らしきうっすらと青みがかった銀色の弓を自慢気に見せながら自分がこの場所に来た経緯を語るアリーセだったが、俺は自分が手も足も出なかった3mもあるようなデカブツをたったの一撃で屠るような弓とアリーセの腕前を思い出し、可愛く見えてもモンスターが闊歩する森に気軽に一人で来れるほどの強者なのだと思い、絶対逆らったり、ラッキースケベ的なことは期待しないようにしようと心に誓った。強くだ。
「そうか、アリーセが誠実な人でラッキーだったよ……」
「せ、誠実? そ、そうかしら? まあ、冒険者なんて大層なことを言っても、その日暮らしのゴロツキどもとあんまり違いはないからね、信用第一ってやつよ! うん!」
あまり褒められ慣れていないのか、その程度で大袈裟にキョドるアリーセ。ちょっとかわいい。
「最初に俺が金貨300枚を渡した時だって、そのまま素知らぬ顔で受け取ったり、持って逃げたりしたって不思議はなかったのに、ちゃんと返してくれたでしょ?」
「え?あ、でもあの時は記憶が無いなんて思わなかったし、あ、あんな大金見たこと無かったし……それに、ほら、そんなことをしたら立派な犯罪じゃない」
どうもアリーセは小市民的なところがあるようだ。
「いやいや、魔が差すことなんて誰にでもあるだろうし、あんなデカイやつを一撃なんて、腕前も確かじゃないか、何もわからないままこの森に取り残されてたかもって考えたら、街まで護衛してもらえるわけだし最高にラッキーだと思うよ」
「そ、そうかしら? ま、まあ私ももう少しでCランクに上がれそうだからね、信用してもらっていいと思うわ!」
にわかに調子づいたアリーセは機嫌よく胸を張る。鎧に隠されてはいるが、それなりのボリュームはありそうだな。
「あ、そうだ、しっかり護衛するつもりだから大丈夫だと思うけど、一応私の予備の武器貸しておくわ」
アリーセはアイテムボックスから、一振りのサーベルを取り出すと俺に渡す。このサーベルもグリップや鞘に革や木材等は使用されておらず、すべて金属で作られていた。金属だけというと汗などでグリップがすべってしまいそうだが、細い針金を束ねたワイヤーのようなものが巻きつけてあり、手によく馴染む。それがしっかりと実戦用の剣なのだとわかる。
「え? いいの? あ、ちょっと抜いてみても良いか?」
「ええ、どうぞ。片刃の剣だけど使えそう?」
剣術レベル1のスキル補正のおかげもあり、危なげなくサーベルを抜き放ち、数回素振りをして使い心地を確かめる。
「へぇ、一応使えるみたいね」
「ああ、うん、そうみたいだ」
女性用なのか見た目よりも随分と軽く感じたが、丸腰と比べれば大分安心感があるのでひとまずは十分だと首肯する。
「ステータスブックは憶えてる? なにか思い出すかもしれないし、憶えてるなら確認してみたらどうかな?」
「ああ、確かにね」
そのへんはゲームと同じなのか、だったらゲームと同じように俺TUEEEE出来たらよかったのに、そういえば、逃走中にステータスブックを確認しようとして木に激突したんだったな~と思い出して苦笑する。
「あ、人のステータスブック見るのはマナー違反だから、一応向うに行ってるわね」
「あ、そうなんだ、まぁ、そりゃあそうか、ありがとう確認させてもらうな」
アリーセが背中を向けるとステータスブックを呼び出してステータスとスキルを確認する。
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名前:イオリ・コスイ
種族:ヒューマン
年齢:18歳
ジョブ:ノービス
レベル:70
HP:569
MP:386
スタミナ:645
筋力:490
敏捷:436
知力:367
器用:416
体力:520
魔力:384
頑健:484
精神:372
物理攻撃力:245 (+280)
魔法攻撃力:183
物理防御力:242
魔法防御力:186
称号:異世界人、露出狂、偽記憶喪失者
スキル
パッシブ:言語翻訳
:アイテムボックス(x9999)
:装備制限解除クリアボーナス
:チートツール LV MAX
:解析ツール LV MAX
アクティブ:剣術 LV1
→スマッシュ LV1
カウンター LV1
ダブルアタック LV1
カウンタースマッシュ LV1
ウェポンガード LV1
ソニックスラッシュ LV1
:体術 LV1
→アクロバット LV1
登攀 LV1
受け身 LV1
忍び足 LV1
:格闘 LV1
→コンビネーションアタック LV1
バックアタック LV1
:クラフト
→ポーション作成 LV1
武具メンテナンス LV1
鑑定 LV1
所持金:999999699GP (+直接所持300GP)
魔晶石:999999個
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ゲーム上ではそこそこ強いステータスだけど、実際問題でどの程度の強さなのか、全くわからない。
一桁のステータスに比べたら確実に強くはなっているということが分かる程度だ。
このステータスでアルマベアーにぶっ飛ばされているし……。
スキルが軒並みLV1なのは、FADでもスキルは使用することでレベルが上がるシステムだったからだ。
名前も、アリーセに名乗ったことが名付けイベント扱いになったようで、ちゃんと設定されていた。
「だから称号おかしいだろ!?」
「なにー? 確認出来たー?」
思わず、称号『偽記憶喪失者』に対してツッコミを入れてしまった俺に、背中を向けたまま少し離れていたアリーセが聞いてくる。律儀に後ろを向いたままなあたり、彼女の人柄が窺える。
「と、特には思い出せなかったな、でも、どの程度のものかは分からないけど、出来そうな事の確認は出来たよ」
「そう、残念だけど仕方がないわね、確認できただけでも良かったわ。話は道すがら出来るから、そろそろモンスター避けの効果が切れるし出発しましょ、こっちよ」
了解、と返事を返し、街に向けてアリーセの先導でこの場を後にすることにした。
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読んでいただきありがとうございます。
※ 地の文を1人称に変えました。先に読んでくださっていた方々には申し訳ありません。 投稿済みのものも随時一人称に改稿ずみですが、お話自体の変更はありません。
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「お待たせ、って何店広げてるの?」
解体が終わったらしいアリーセが、リュックの中身をぶちまけている俺を見て聞いてくる。
「あ、いや、何が入ってるのかなー?って思って……」
「ああ、なるほどね~、ってこれで全部なの? 基本的な野営道具しかないじゃない、しかもどれも新品に見えるくらい綺麗ね」
まごうことなき新品である。
「そーだね、食料も入ってないし……、なんでかはわからないけどね!食料も入ってないし」
「まあ、最後に憶えてるのが街を外の草原から見てたっていうなら、その街から出たばかりか、出るつもりで準備していた最中とかだったんじゃないの?」
「え? あーそうかもしれないね。そ、それはともかく、ここから街までは遠いのかな?」
さり気なく食べ物がありませんアピールをする俺だったが、アリーセは俺の記憶の考察に入ってしまった。即興で作った記憶喪失設定なので、その辺りをいろいろと突っ込まれるとボロが出かねないので、慌てて別の話題を振る。
「そこまで遠くないから安心していいわ、今は昼過ぎくらいだけど、夕方前には街に着けると思うわ」
「それは良かった。けどアリーセは冒険者なんだろ? 何か別に依頼を受けてここに来てたんじゃないのか? それを済ませるくらい待つのは構わないけど」
「あ、それは心配しなくて大丈夫よ。弓を新調したらちょっと懐が寂しくなっちゃって、新しい弓を試しがてら、薬草採取と増えたモンスターの間引きに来ただけだからね。薬草は採取済みだしアルマベアーもちょうど仕留めたから問題なし。そもそも、イオリを街まで連れて行って報酬を貰うほうが割が良いもの」
金属製らしきうっすらと青みがかった銀色の弓を自慢気に見せながら自分がこの場所に来た経緯を語るアリーセだったが、俺は自分が手も足も出なかった3mもあるようなデカブツをたったの一撃で屠るような弓とアリーセの腕前を思い出し、可愛く見えてもモンスターが闊歩する森に気軽に一人で来れるほどの強者なのだと思い、絶対逆らったり、ラッキースケベ的なことは期待しないようにしようと心に誓った。強くだ。
「そうか、アリーセが誠実な人でラッキーだったよ……」
「せ、誠実? そ、そうかしら? まあ、冒険者なんて大層なことを言っても、その日暮らしのゴロツキどもとあんまり違いはないからね、信用第一ってやつよ! うん!」
あまり褒められ慣れていないのか、その程度で大袈裟にキョドるアリーセ。ちょっとかわいい。
「最初に俺が金貨300枚を渡した時だって、そのまま素知らぬ顔で受け取ったり、持って逃げたりしたって不思議はなかったのに、ちゃんと返してくれたでしょ?」
「え?あ、でもあの時は記憶が無いなんて思わなかったし、あ、あんな大金見たこと無かったし……それに、ほら、そんなことをしたら立派な犯罪じゃない」
どうもアリーセは小市民的なところがあるようだ。
「いやいや、魔が差すことなんて誰にでもあるだろうし、あんなデカイやつを一撃なんて、腕前も確かじゃないか、何もわからないままこの森に取り残されてたかもって考えたら、街まで護衛してもらえるわけだし最高にラッキーだと思うよ」
「そ、そうかしら? ま、まあ私ももう少しでCランクに上がれそうだからね、信用してもらっていいと思うわ!」
にわかに調子づいたアリーセは機嫌よく胸を張る。鎧に隠されてはいるが、それなりのボリュームはありそうだな。
「あ、そうだ、しっかり護衛するつもりだから大丈夫だと思うけど、一応私の予備の武器貸しておくわ」
アリーセはアイテムボックスから、一振りのサーベルを取り出すと俺に渡す。このサーベルもグリップや鞘に革や木材等は使用されておらず、すべて金属で作られていた。金属だけというと汗などでグリップがすべってしまいそうだが、細い針金を束ねたワイヤーのようなものが巻きつけてあり、手によく馴染む。それがしっかりと実戦用の剣なのだとわかる。
「え? いいの? あ、ちょっと抜いてみても良いか?」
「ええ、どうぞ。片刃の剣だけど使えそう?」
剣術レベル1のスキル補正のおかげもあり、危なげなくサーベルを抜き放ち、数回素振りをして使い心地を確かめる。
「へぇ、一応使えるみたいね」
「ああ、うん、そうみたいだ」
女性用なのか見た目よりも随分と軽く感じたが、丸腰と比べれば大分安心感があるのでひとまずは十分だと首肯する。
「ステータスブックは憶えてる? なにか思い出すかもしれないし、憶えてるなら確認してみたらどうかな?」
「ああ、確かにね」
そのへんはゲームと同じなのか、だったらゲームと同じように俺TUEEEE出来たらよかったのに、そういえば、逃走中にステータスブックを確認しようとして木に激突したんだったな~と思い出して苦笑する。
「あ、人のステータスブック見るのはマナー違反だから、一応向うに行ってるわね」
「あ、そうなんだ、まぁ、そりゃあそうか、ありがとう確認させてもらうな」
アリーセが背中を向けるとステータスブックを呼び出してステータスとスキルを確認する。
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名前:イオリ・コスイ
種族:ヒューマン
年齢:18歳
ジョブ:ノービス
レベル:70
HP:569
MP:386
スタミナ:645
筋力:490
敏捷:436
知力:367
器用:416
体力:520
魔力:384
頑健:484
精神:372
物理攻撃力:245 (+280)
魔法攻撃力:183
物理防御力:242
魔法防御力:186
称号:異世界人、露出狂、偽記憶喪失者
スキル
パッシブ:言語翻訳
:アイテムボックス(x9999)
:装備制限解除クリアボーナス
:チートツール LV MAX
:解析ツール LV MAX
アクティブ:剣術 LV1
→スマッシュ LV1
カウンター LV1
ダブルアタック LV1
カウンタースマッシュ LV1
ウェポンガード LV1
ソニックスラッシュ LV1
:体術 LV1
→アクロバット LV1
登攀 LV1
受け身 LV1
忍び足 LV1
:格闘 LV1
→コンビネーションアタック LV1
バックアタック LV1
:クラフト
→ポーション作成 LV1
武具メンテナンス LV1
鑑定 LV1
所持金:999999699GP (+直接所持300GP)
魔晶石:999999個
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ゲーム上ではそこそこ強いステータスだけど、実際問題でどの程度の強さなのか、全くわからない。
一桁のステータスに比べたら確実に強くはなっているということが分かる程度だ。
このステータスでアルマベアーにぶっ飛ばされているし……。
スキルが軒並みLV1なのは、FADでもスキルは使用することでレベルが上がるシステムだったからだ。
名前も、アリーセに名乗ったことが名付けイベント扱いになったようで、ちゃんと設定されていた。
「だから称号おかしいだろ!?」
「なにー? 確認出来たー?」
思わず、称号『偽記憶喪失者』に対してツッコミを入れてしまった俺に、背中を向けたまま少し離れていたアリーセが聞いてくる。律儀に後ろを向いたままなあたり、彼女の人柄が窺える。
「と、特には思い出せなかったな、でも、どの程度のものかは分からないけど、出来そうな事の確認は出来たよ」
「そう、残念だけど仕方がないわね、確認できただけでも良かったわ。話は道すがら出来るから、そろそろモンスター避けの効果が切れるし出発しましょ、こっちよ」
了解、と返事を返し、街に向けてアリーセの先導でこの場を後にすることにした。
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読んでいただきありがとうございます。
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