アメイジングノービス ~異世界でチートツールが使えたけど物理法則さんが邪魔をする~

逢須 かた丸

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1章 異世界転移

その設定を頂きます。

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 木漏れ日が差し込む穏やかな昼下がりの森の中を、先導して歩くアリーセに、自然の中を歩くのに慣れない足取りで木の根や段差等に躓きそうになりながらも、必死に付いていく。
 突然変わったステータスに感覚が着いて行けないと言うこともあるが、人の手が入っていない場所というのは、歩くのに少々慣れが必要だ。疲れるわけでは無かったが、都会育ちでインドアだった俺には少々辛い。

「それで、何か分からない事……だらけだろうけど、何から聞きたい?」

 慣れた足取りでヒョイヒョイと進んで行くアリーセを、羨ましげに見ながらも、何から聞いたものか考える。

「色々あるけど、まずは通貨について聞いておこうかな、今の持ち金でどのくらい生活出来るかも知りたいし」

 無尽蔵だけどな!

「旧王国金貨300枚なんて、数年は裕福な暮らしが出来るわよ」

 そう言うアリーセの話を纏めるとこうなる。

白金貨10000ナール
金貨  1000ナール
銀貨   100ナール
銅貨    10ナール
鉄貨     1ナール
石貨    25ストー (1/4ナール)

 旧王国金貨は、主にダンジョン等から産出する純度の高い金貨の事で、真相は謎だが古代にあったとされる伝説の王国の金貨である。そこそこの流通量があり、普通の金貨の二割五分増しの1250ナール程度でそのまま使うことが出来るということだ。
 純度の高い金貨なのに、俺がゲームの時の感覚でメッキだとか真鍮だと思って渡したからアリーセもあんなに慌てたんだな。
 石貨のストーは、アメリカのセントみたいな、1ナール未満の通貨のようで、4枚で1ナール鉄貨と同じという事だった。


 5ナールから10ナールで一食食べられ、50ナールで普通の宿には泊まれるくらいなので、大雑把に1ナール100円前後と考えて良いだろう。

「だとすれば、街までの案内と護衛で宿屋6泊分程度が相場って事は、一日頼んだら10泊から12泊できるくらい、単純計算で600ナールか……」

 一日6万円くらいか、以前会社がらみのゲームのイベントで呼んだ声優さんの警護が警備員一人あたり12時間で4万円程度だったので、日本と比べたら命の危険が確実にあるこの世界ならば無難、むしろ安いのかもしれない。

「うわ計算早いね……。あ、でもそこはちょっと違うかな?」

「ん? 違うって何が?」

「護衛の依頼料が300ナールってところよ、条件にも依るけど普通にギルドで依頼を出せば一日200ナールくらいで私と同じDランクの冒険者一人雇えるわ、半日なら100ナールね」

 2万円くらいで1日雇えるとな?

「え? って事はアリーセに3倍もボラれてるって事!?」

「ちょっと、人聞きの悪いこと言わないでくれる!? 冒険者は信用が第一って言ったでしょ! ギルドを通さない依頼で、しかも突発的なものは、その分割高になるのが普通なの。そうしないと誰もギルドを利用しなくなっちゃうでしょ!?」

 アリーセがギルドと言っているのは、冒険者ギルドの事で、他にもそれぞれの職種によってギルドが存在するとのことだ。その中でも冒険者ギルドは世界的規模を誇る機関で、税金程度は支払っているが各国々の制限からはある程度外れているということだった。
 冒険者ギルドは依頼の要請を受け、内容の精査と冒険者に依頼斡旋、冒険者の身分保証等をしてくれる。この世界にはモンスターの脅威が存在する為に、ある種必然として存在しているようだ。
 しかし、安くなるなら保証は要らないのでギルドを通さずに冒険者に直接依頼を出した方が良いという依頼人ばかりになったら、相場の下落や、トラブル等から冒険者の質のや信用の低下を招き、誰の得にもならない事になる。
 冒険者はギルドを守り、ギルドは冒険者を守る、そういった理想的な関係が築かれているのだそうだ。

「イオリの時みたいに街の外で盗賊やモンスターに襲われました~とか、なにか事故が起きました~って時、街に戻ってギルドに依頼して~ってやってられないでしょ? だからその時は、突発依頼ってことで割増の依頼料を貰って後でギルドに事後処理してもらうのよ」

「なるほど、理にかなってるな、でも相手が文無しだったらどうするんだ?」

「その場合は品物でもらったり、後でギルドに連れて行って借用書を作って貰ったりね。逃げられる場合も無くは無いけど、その辺は自己責任ね、自分の人を見る目にかかってる感じかしら? 無視したって別に構わないんだしね」

「見捨てないでいただき、誠にありがとうございます!」

 90度のパーフェクトな姿勢で頭を下げる。感謝の気持ちは態度で示さねば伝わらないのだ。

「え? う、うん。どういたしまして? ほ、他に聞きたいことは?」

 なぜか頬が赤い気がする。どうも褒められたり感謝されたりするのに慣れてない感じだ。微妙に嬉しそうな感じだし。

「じゃあ、転移事故ってやつについて詳しく!」

 大事なマイ設定に使えそうな情報は聞いておかねば。

「私も詳しくはないから、大まかな話だけど良い?」

「大丈夫だ、問題ない」

 マイ設定情報、ハリーハリー。

「そう? えーとね、大きな街や主要施設なにかには国が管理してる転移陣があって、人や荷物を他の転移陣にあっという間に送れるのよ。一応すごーく高いけど一般の人も利用出来るわ。だけど、不安定な所もあるらしくて、送った人や物が来ないとか、全然違う場所に送られたって人が他の国で保護されたりとかがあるらしいわ、滅多には無いって話だけど」

「なるほど、それって記憶が曖昧になったりするもの?」

「さあ? そこまでは知らないなぁ。でも、出た場所が悪くて頭ぶつけたりしたら、記憶が飛んでも不思議は無いんじゃないかな?」

 その設定頂きます。

「そういえば、死ぬかと思うほど体中がもの凄く痛かったな」

 原因は違うけどな!

「体中が? 空にでも投げ出されたのかな?」

「ああ、うん。そうだと思う、なんか鳥が一斉に飛び立ったのも見たような気がするし」

 原因は違うけどな!

「あ、それ私も見てるかも? なんかバーンって音がして、鳥がバサバサーって飛んだから、何だろうと思って調べに行ったらアルマベアーに襲われているイオリを見つけたって感じ!」

「見つけて頂き、誠にありがとうございました!」

 俺は再度、90度のパーフェクトな姿勢で感謝の意を伝えるのだった。

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