アメイジングノービス ~異世界でチートツールが使えたけど物理法則さんが邪魔をする~

逢須 かた丸

文字の大きさ
50 / 250
2章 冒険者としての生活

アリーセの実演

しおりを挟む
「なあアリーセ、実演って何を見せれば良いと思う?」


 横を歩くアリーセに小声で聞いた。


「そうね、ソニックなんとかってスキルで良いんじゃないかしら、随分と練習してたみたいじゃない」


「あれか、ハッタリには良いか……」


 一応、何度もぶっ飛びながらも使用に堪える程度には地道に検証と練習をした。


「アリーセはどうする?」


「そこまで派手さは無いけど、それっぽい事は出来るわよ」


「じゃあそれで、ってか思ったより冷静だな」


「それはあのポーションのおかげだと思うわ、むしろ普段よりも調子が良くて怖い位だわ」


 効果はバツグンだ。

 やっぱり緊張やストレスも状態異常扱いになるんだな。


 しばらく進んで少し大きな扉が見えてきた。

 ここにも衛兵が二人立っているようだ。

  ヴァルターさんと俺らが近づくと、ちょうど通るタイミングで衛兵が扉を開けてくれた。

 なんだろう地味に格好良さを感じてしまう。


 そのままヴァルターさんの先導で中に入ると、弓道場の様な半分室内で半分が外となっている部屋だった。

 ジークフリード様は先程と同じ服で、室内になっている側に備え付けられているテーブルセットで足を組んで優雅にお茶を飲んで待っていた。

 そのはす向かいに、金髪の髪をお団子にまとめたくりっとした青い目が印象的な女の子と、とんがり帽子にローブと節くれだった杖という、いかにも魔法使いですといった佇まいのオレンジ色の髪をお下げにした女性がすわっていた。


「来たか、では早速だが顔合わせと行こう、コリンナ挨拶なさい」


「はい、お父様。 初めまして、イオリ様アリーセ様。 コリンナ・ローデンヴァルトと申します」


 薄緑色のフリルの多いドレスで、ちょこんといった様子でカーテシーを披露する。

 ジークフリード様が、なにやら満足げなので多分上手に出来ているということなのだろう。


「初めましてコリンナ様。 次回よりコリンナ様の家庭教師として付かせていただくことになりましたイオリ・コスイです。 よろしくお願いいたします」


 女性に対して男性が行うと習った、右手を胸にあて頭をさげるという礼をする。


「初めましてコリンナ様、冒険者ランクBのレンジャー、アリーセ・ベルガーです」


 一瞬俺につられて、男性の礼をアリーセがやりそうになったが、すぐに気がついてリカバリーしたようだ。

 冒険者ランクとか言い忘れたけどまあ良いか……仮ランクだし。


 俺とアリーセがコリンナ様に挨拶を返すと、魔法使いっぽい女性が一歩前に出た。


「お初にお目にかかりますわ。 私、エーリカ・ファイヤージンガーと申します。 コリンナ様に魔法をお教え剳せていただいておりますの。冒険者ランクBのマジックユーザーですわ」

 

 この人は、着替えさせられてないっぽいけど、何が違うのだろう? あ、でもローブとか刺繍がびっしり入ってたり、帽子にもなにやら高そうな装飾が乗っているな。

 俺らみたいに着せられている感が無いから、自前の良い服って感じなのかもしれない。

 次来るときは、着替え怖……めんどくさいから俺もアバター装備で来ても良いかヴァルターさんに後で確認しよう。


「よし、では実演を始めてくれ」


 もう待ちきれんとばかりに、ジークフリード様が促す。

 

 ヴァルターさんが、すかさず横へ来て、近接スキルならば部屋の中央付近で、魔法や飛び道具は外向きに放つ様にと指示を受ける。

 外側に目を向けると的であろう鎧を着たカカシが距離を変えて立っている。

 武器は必要ならば一通り用意があるとのことだった。


「どっちから行く?」


「私から行かせて、あれに比べると地味だから、あとからやりたくないわ」


「あいあいまむ」


 アリーセはアイテムボックスから白銀の弓と矢筒を取り出し、部屋の端に向かう。


「では、初めます」


 アリーセは目を閉じ数回深呼吸をしたあとに、スキル名を宣言する。


「ラピッドアローズエクストラ!」


 目を開いたと同時に走り出す。

 相変わらずいつ矢をつがえたのかがわからない程の高速で弓を引き絞り、最初の矢を放った。

 そのままの勢いを殺さず空中側転などアクロバティックな動きで縦横無尽に駆け巡りマシンガンの様な勢いで矢を放っていく。

 それでいて、一本の矢も外すことなく的に命中していて、カカシがハリネズミのようになっていく。

 滑るように立ち止まり、弓を下ろしてカカシに右手を向けて、指をパチンと鳴らすと次々に矢が爆炎を上げる。

 爆炎が晴れると、残骸になったカカシが横たわっている。


 って、めっちゃ派手じゃねーか! すげーかっこいいし、これの後にやる俺のほうが絶対地味だし、やり辛いわ!


「すばらしい!! これがドラゴンをも翻弄させたという技か!」


 すごく喜んでおられる……。やばいな、この普通にスキルを披露したら気まずい空気が流れてしまうのでは無いだろうか?

 ここは何か、考えねばいかん!


 ウインドウが自分以外には見えないのを良いことに、素早くチートツールを起動しアイテム変化の中から派手なことになりそうなアイテムをチョイスしていく。


 使用するスキルは『ソニックスラッシュ』であることに変わりはない。

ぶっ飛んでしまう一番大きな理由である反作用であるが、これは手に持った武器が重いために起こっている。

 反作用とは単純に言えば押したら押し返されるというものであるので、単純に武器を軽くすることで派手に転びはしてもぶっ飛ぶまでには至らなくなったのである。

 実際みんな大好きアンチマテリアルライフルに使われる50口径の弾丸の弾頭でも重量は50g程度なのである。

 これに習って、軽いものを使うことである程度の解決を謀ったのである。


「では、僭越ながら続いて実演させて頂きます」


 うわ、ものすごい期待した目でで見ている。失敗したらどうしよう。

 アリーセめ、ハードル上げやがって。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ファンタジー大賞参加中です。
もしよろしければ明日(次話を書く)の活力となりますので投票、ご感想、お気に入り登録をお願いします。
しおりを挟む
感想 139

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...