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5章 エルフの森
ひとり上手
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登城を指定された日になった。
登城についての事情はパーティメンバーに伝えてあるが、召喚状にはわざわざ一人で来るように書かれて居た為、同行者はマルだけだ。
マルなら使い魔なので、一人には数えられないだろうという姑息な作戦である。
ちょこっと隠れてもらうことも出来るしな。
わざわざ一人で来いとか、何か陰謀のニオイがプンプンするが、仲間を巻き込まないで済むと思えば、むしろ良かったかもしれない。
皆俺の事を心配して、権力者アレルギーというか、もはや恐怖症のアリーセですら着いて来てくれようとしてくれたのは、ちょっと嬉しかった。
「世界樹が無くなる」とか聞こえた気がしたが、こんなでかい物を消滅させるなんて非常識な事言う訳が無いので気のせいだろう。
それと、打ち明けるかどうか悩んだが、リーラ様から聞いた俺の事についても、意を決してこの時に打ち明けた。
「いろんな種族がいて、皆それぞれ考え方や文化が違うのなんて普通でしょ? それと対して変わらないわ。 イオリ自身が気にしてないのに、私達がそんなこといちいち気にしてたら冒険者なんてやってられないわよ? まあ、今まで以上に躾はしっかりしないとダメかもしれないけどね」
「5歳くらいの子供が知識だけ持ってる感じだと考えれば、色々とスッキリしますわ」
「もとの君は知らないけど、僕としては、今のままの君の方が良いかなー。 錬金術師ギルドじゃその程度、別に普通だよー」
「容赦は無いし、割り切るのも異常に早いが、悪人ってわけじゃねーしな。 もっとおかしな奴らなんて吐いて捨てるほど居るんだし、今さら気にしちゃいねーよ」
微妙にディスられているような気がしないでもないが、変わらぬ付き合いをしてくれるようで、内心物凄く救われた思いだった。
一応正装っぽいアバター用衣装の英国貴族シリーズの服に着換え、解析ツールのターゲットウインドウ偽装用にモノクル型のプリズムやレンズ等を使って見ている所に画像重ねて表示するという魔道具と、その他のウインドウを隠す為のシルクハットを用意した。
チートツールは元のゲームで使っていたインターフェースのままで、その表示物は俺にしか見えないのに、解析ツールのウインドウは未来感あふれる空中投影式のうっすら発光するパネルで、俺以外にも視認出来てしまうという、欠点がある。
この見えてしまうという欠点を補う為に、何かの魔道具のコントロールパネルという偽装など、色々と模索をしているうちに、気合いと魔力操作で各ウインドウのサイズや初期の位置を変えられることに気が付いた。
表示範囲も狭くなってしまうが、ターゲットウインドウとステータス表示のウインドウをモノクルに表示し、残りのウインドウをとりあえずシルクハットの中に隠してばれないように使おうというわけだ。
ちなみにこのモノクル型の魔道具は王都の錬金術師が作った、浪漫魔道具の透視グラス(仮)がベースになっている。
透視とは言っているが、首からしただけ描かれた下着姿の女性の絵がずっと見えていて、目の前に立っている人の顔に合わせてこっそりコラージュするだけの、透視をした気分になるだけのものである。
ぶっちゃけタダのジョークグッズなのだが、重ねる画像がボヤけないように、無駄に技術力が注がれている一品だ。
他の男性錬金術師達からは「すげぇ!」「天才か!?」とか言われていたが、元気かなアイツら……。
姿見で着替え終わった自分を見てみると、紳士とか貴族というより手品師という言葉が頭に浮かんだが、まあこの世界じゃ誰もそんな事は思わないだろうから、これで良しとする。
「もきゅ!」
マルが服をよじ登ってシルクハットの中に入り込んだ。
ここに居ればバレないよ!と言っているが、頭皮に爪が食い込んでけっこう痛い。
歩いてみると落ちないようにしがみつかれるので、さらに爪が食い込んで痛い。
頭に小動物を乗せるというのは、なかなか無理があるな……。
仕方が無いのでシルクハットの中を上げ底にして、その中にマルが入れるようにしてやった。
「もきゅーん」
狭くて落ち着くらしい。 気に入ったなら良かったが、なかなか首のトレーニングになる重量になったな……。
落ちないように紐で固定しておこう。
まあ、マルがいても解析ツールのウインドウには実体が無いので問題はない。
特に迎えも無ようなので、呼び付けられたエルフの王が居る城的な所へ一人で向かう。
格好が格好なので、道行くエルフ達にジロジロと見られて、一様に訝しげな顔をされたが気にしない。
城ではなく城的な所と言ったのは、木の上であるという事もあるだろうが、木造で出来た平屋の建物だったからである。
一応結界らしきものはあるようだが、城壁のようなものはない。
平屋とは言えかなり広く、建物の壁や扉に蔦や花をモチーフとした見事なレリーフが多層構造的に彫り込まれていて、思わず感嘆の声を上げてしまった。
門番の厳つい顔のエルフに召喚状を見せると、幾つかの確認事項を経て、確認をとるのでココで待つように言われる。
あんまりにも待たせるので、勝手に自作の野外用テーブルセットをアイテムボックスから取り出して、お茶は無いので仕方なく水をチビチビ飲みながら、レリーフの鑑賞をして待っていた。
なんか門番がすごい睨んでるけど、気にしない。
ついでに解析ツールを起動して、エルフにもバレないかも一応チェックしておこう。
門番のまの前で起動して、扉を見てみる。
ふむ、扉のレリーフに紛れて、幾つか鍵の魔道具が仕込まれているようで、特定の操作をしないと開かない仕組みになっているようだ。
「門番さん門番さん、そこのレリーフに埋まってるのは、何かの魔道具ですかー?」
「な、なんの事だ? 良いから、大人しくそっちで待っていろ! 良いか扉や壁には触るんじゃないぞ!!」
とぼけられて、追っ払われたので、テーブルセットに戻る。
よしよし解析ツールを使ったのはバレて無いようだな。
滅多矢鱈とレリーフの裏に埋め込まれている防衛用らしい魔道具の機能とコードをメモ取りながら待っていると、しばらくして迎えが来てやっと中に入れることになった。
待ちくたびれてマルは寝てしまったらしく、微かに頭の上から寝息が聞こえる。
「あ、門番さん門番さん。 右の壁の上から3番め、左から12番めのヤツと、上から8番め、左から5番めのヤツ、機能して無いから修理した方がいいですよー。 あと、あんまり長く待たせると、こんな風にセキュリティ上、よろしくないので、待たせ方も考えた方が良いと思いますよー、上の人にでも言っておいて下さい」
中に入る前に、他種族だと思ってあんまナメてんじゃねーぞ? 的な意味を込めて言っておいた。
物凄いしかめっ面になっていたが、親切なアドバイスだよな!
「ま、またお待たせしてしまいますが、王の準備が整うまで、こちらでおくつろぎください。 何かありましたら、そちらに控えている者になんなりとお申し付けください」
さっき門番にした話が聞こえていたのか、案内のエルフの口元がひく付いている。
駄目だぞ、そこはしっかりポーカーフェイスを通さないと。
部屋に入ると、エルフのメイドさんが直立不動で立っていた。
シンプルな緑のワンピースにシンプルなフリルのないエプロン、ヘッドドレス的なものは着けていないが、髪はお団子に結っているようだ。
メイド服という感じではないが、なかなか良い感じだな。
今まで見た中では、ちゃんとエルフっぽい見ためだし……。
部屋自体はそれ程広くなく、テーブルとソファーがあるだけで他に調度品も無いし、あれだけ見せつけるようにあったレリーフも全くない非常にシンプルな部屋だ。
多分、グレード的には一番低い部屋なんじゃ無かろうか?
一応、メイドさんがお茶くらいは用意してくれたが、何かありましたらベルでお呼びくださいと、さっさと退出してしまった。
お茶請けは出ないようだ。
硬めのソファーに座って、あちこち鑑定したり解析ツールのターゲットを合わせて見るが、天井の角に防犯カメラ的な魔道具が1個あっただけで、特に目を引く物は何も無かった。
もっと監視を受けるかと思ったけど、そうでもないな。
対応も、俺がバカにされてるらしい他種族で、さらに平民ってコトを考えれば、茶が出ただけでもむしろ丁寧なくらいだ。
「しかし暇だな……」
防犯カメラの魔道具がは記録式ではなく、リアルタイムで見ているタイプのモノだったので、パントマイムをやったり、簡単な手品を披露してみたり、余興で作ったハンドスピナーを海外のテレビショッピングのノリでオーバーアクション気味に賞品紹介をしてみたりして、カメラで見張っているであろう誰かと、一方的なコミュニケーションをとって時間を潰した。
シルクハットからマルが現れるイリュージョンでもやろうかと準備していると、ドアをノックされ、さっきお茶を入れてくれたメイドさんがやってきた。
やっと準備とやらが出来たのかなーと思ったら。
「あの、すみません……。 その、はんどすぴなーを1つ下さい。 ピンクのやつが良いです」
見張ってたのアンタだったんかい!
登城についての事情はパーティメンバーに伝えてあるが、召喚状にはわざわざ一人で来るように書かれて居た為、同行者はマルだけだ。
マルなら使い魔なので、一人には数えられないだろうという姑息な作戦である。
ちょこっと隠れてもらうことも出来るしな。
わざわざ一人で来いとか、何か陰謀のニオイがプンプンするが、仲間を巻き込まないで済むと思えば、むしろ良かったかもしれない。
皆俺の事を心配して、権力者アレルギーというか、もはや恐怖症のアリーセですら着いて来てくれようとしてくれたのは、ちょっと嬉しかった。
「世界樹が無くなる」とか聞こえた気がしたが、こんなでかい物を消滅させるなんて非常識な事言う訳が無いので気のせいだろう。
それと、打ち明けるかどうか悩んだが、リーラ様から聞いた俺の事についても、意を決してこの時に打ち明けた。
「いろんな種族がいて、皆それぞれ考え方や文化が違うのなんて普通でしょ? それと対して変わらないわ。 イオリ自身が気にしてないのに、私達がそんなこといちいち気にしてたら冒険者なんてやってられないわよ? まあ、今まで以上に躾はしっかりしないとダメかもしれないけどね」
「5歳くらいの子供が知識だけ持ってる感じだと考えれば、色々とスッキリしますわ」
「もとの君は知らないけど、僕としては、今のままの君の方が良いかなー。 錬金術師ギルドじゃその程度、別に普通だよー」
「容赦は無いし、割り切るのも異常に早いが、悪人ってわけじゃねーしな。 もっとおかしな奴らなんて吐いて捨てるほど居るんだし、今さら気にしちゃいねーよ」
微妙にディスられているような気がしないでもないが、変わらぬ付き合いをしてくれるようで、内心物凄く救われた思いだった。
一応正装っぽいアバター用衣装の英国貴族シリーズの服に着換え、解析ツールのターゲットウインドウ偽装用にモノクル型のプリズムやレンズ等を使って見ている所に画像重ねて表示するという魔道具と、その他のウインドウを隠す為のシルクハットを用意した。
チートツールは元のゲームで使っていたインターフェースのままで、その表示物は俺にしか見えないのに、解析ツールのウインドウは未来感あふれる空中投影式のうっすら発光するパネルで、俺以外にも視認出来てしまうという、欠点がある。
この見えてしまうという欠点を補う為に、何かの魔道具のコントロールパネルという偽装など、色々と模索をしているうちに、気合いと魔力操作で各ウインドウのサイズや初期の位置を変えられることに気が付いた。
表示範囲も狭くなってしまうが、ターゲットウインドウとステータス表示のウインドウをモノクルに表示し、残りのウインドウをとりあえずシルクハットの中に隠してばれないように使おうというわけだ。
ちなみにこのモノクル型の魔道具は王都の錬金術師が作った、浪漫魔道具の透視グラス(仮)がベースになっている。
透視とは言っているが、首からしただけ描かれた下着姿の女性の絵がずっと見えていて、目の前に立っている人の顔に合わせてこっそりコラージュするだけの、透視をした気分になるだけのものである。
ぶっちゃけタダのジョークグッズなのだが、重ねる画像がボヤけないように、無駄に技術力が注がれている一品だ。
他の男性錬金術師達からは「すげぇ!」「天才か!?」とか言われていたが、元気かなアイツら……。
姿見で着替え終わった自分を見てみると、紳士とか貴族というより手品師という言葉が頭に浮かんだが、まあこの世界じゃ誰もそんな事は思わないだろうから、これで良しとする。
「もきゅ!」
マルが服をよじ登ってシルクハットの中に入り込んだ。
ここに居ればバレないよ!と言っているが、頭皮に爪が食い込んでけっこう痛い。
歩いてみると落ちないようにしがみつかれるので、さらに爪が食い込んで痛い。
頭に小動物を乗せるというのは、なかなか無理があるな……。
仕方が無いのでシルクハットの中を上げ底にして、その中にマルが入れるようにしてやった。
「もきゅーん」
狭くて落ち着くらしい。 気に入ったなら良かったが、なかなか首のトレーニングになる重量になったな……。
落ちないように紐で固定しておこう。
まあ、マルがいても解析ツールのウインドウには実体が無いので問題はない。
特に迎えも無ようなので、呼び付けられたエルフの王が居る城的な所へ一人で向かう。
格好が格好なので、道行くエルフ達にジロジロと見られて、一様に訝しげな顔をされたが気にしない。
城ではなく城的な所と言ったのは、木の上であるという事もあるだろうが、木造で出来た平屋の建物だったからである。
一応結界らしきものはあるようだが、城壁のようなものはない。
平屋とは言えかなり広く、建物の壁や扉に蔦や花をモチーフとした見事なレリーフが多層構造的に彫り込まれていて、思わず感嘆の声を上げてしまった。
門番の厳つい顔のエルフに召喚状を見せると、幾つかの確認事項を経て、確認をとるのでココで待つように言われる。
あんまりにも待たせるので、勝手に自作の野外用テーブルセットをアイテムボックスから取り出して、お茶は無いので仕方なく水をチビチビ飲みながら、レリーフの鑑賞をして待っていた。
なんか門番がすごい睨んでるけど、気にしない。
ついでに解析ツールを起動して、エルフにもバレないかも一応チェックしておこう。
門番のまの前で起動して、扉を見てみる。
ふむ、扉のレリーフに紛れて、幾つか鍵の魔道具が仕込まれているようで、特定の操作をしないと開かない仕組みになっているようだ。
「門番さん門番さん、そこのレリーフに埋まってるのは、何かの魔道具ですかー?」
「な、なんの事だ? 良いから、大人しくそっちで待っていろ! 良いか扉や壁には触るんじゃないぞ!!」
とぼけられて、追っ払われたので、テーブルセットに戻る。
よしよし解析ツールを使ったのはバレて無いようだな。
滅多矢鱈とレリーフの裏に埋め込まれている防衛用らしい魔道具の機能とコードをメモ取りながら待っていると、しばらくして迎えが来てやっと中に入れることになった。
待ちくたびれてマルは寝てしまったらしく、微かに頭の上から寝息が聞こえる。
「あ、門番さん門番さん。 右の壁の上から3番め、左から12番めのヤツと、上から8番め、左から5番めのヤツ、機能して無いから修理した方がいいですよー。 あと、あんまり長く待たせると、こんな風にセキュリティ上、よろしくないので、待たせ方も考えた方が良いと思いますよー、上の人にでも言っておいて下さい」
中に入る前に、他種族だと思ってあんまナメてんじゃねーぞ? 的な意味を込めて言っておいた。
物凄いしかめっ面になっていたが、親切なアドバイスだよな!
「ま、またお待たせしてしまいますが、王の準備が整うまで、こちらでおくつろぎください。 何かありましたら、そちらに控えている者になんなりとお申し付けください」
さっき門番にした話が聞こえていたのか、案内のエルフの口元がひく付いている。
駄目だぞ、そこはしっかりポーカーフェイスを通さないと。
部屋に入ると、エルフのメイドさんが直立不動で立っていた。
シンプルな緑のワンピースにシンプルなフリルのないエプロン、ヘッドドレス的なものは着けていないが、髪はお団子に結っているようだ。
メイド服という感じではないが、なかなか良い感じだな。
今まで見た中では、ちゃんとエルフっぽい見ためだし……。
部屋自体はそれ程広くなく、テーブルとソファーがあるだけで他に調度品も無いし、あれだけ見せつけるようにあったレリーフも全くない非常にシンプルな部屋だ。
多分、グレード的には一番低い部屋なんじゃ無かろうか?
一応、メイドさんがお茶くらいは用意してくれたが、何かありましたらベルでお呼びくださいと、さっさと退出してしまった。
お茶請けは出ないようだ。
硬めのソファーに座って、あちこち鑑定したり解析ツールのターゲットを合わせて見るが、天井の角に防犯カメラ的な魔道具が1個あっただけで、特に目を引く物は何も無かった。
もっと監視を受けるかと思ったけど、そうでもないな。
対応も、俺がバカにされてるらしい他種族で、さらに平民ってコトを考えれば、茶が出ただけでもむしろ丁寧なくらいだ。
「しかし暇だな……」
防犯カメラの魔道具がは記録式ではなく、リアルタイムで見ているタイプのモノだったので、パントマイムをやったり、簡単な手品を披露してみたり、余興で作ったハンドスピナーを海外のテレビショッピングのノリでオーバーアクション気味に賞品紹介をしてみたりして、カメラで見張っているであろう誰かと、一方的なコミュニケーションをとって時間を潰した。
シルクハットからマルが現れるイリュージョンでもやろうかと準備していると、ドアをノックされ、さっきお茶を入れてくれたメイドさんがやってきた。
やっと準備とやらが出来たのかなーと思ったら。
「あの、すみません……。 その、はんどすぴなーを1つ下さい。 ピンクのやつが良いです」
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