126 / 154
第126話 色違いのバイク
しおりを挟む
中田の兄が働く工場の片隅に二台の色違いのバイクが並んでいた。
原付免許を取った後、中古のバイクを探していた真島が街中で見かけて、カッコイイと言っていたバイクだった。
バイト先でバイク雑誌を見て灰谷は思いついた。
真島と二人でツーリングに行きたいと。
「いいじゃん灰谷。ちょっとベスパっぽい」
案内してくれた中田が言う。
「ああ」
「ケツのラインがティアドロップだ。シャレてんな。シートゆったりだし。ハンドル幅広。おっ、メットインじゃん」
元々バイク自体に興味がなかった灰谷は初めてのピアスを選んだときと同じ様な感覚で、真島が欲しがっていた車種の色違いにしようと思った。
「イメージとしては真島がシルバーで灰谷がブラックだけど、きっと真島ブラック選ぶな」
「オレもそう思う」
「おっ、そうだ。このメット、兄貴から二人にって」
新しいヘルメットが二つ、置いてあった。
「マジで?中田の兄貴ホントにカッコイイな」
「それでな灰谷」
中田は灰谷の肩に手を置いた。
「近日中に第二回長渕ナイト開催でヨロシク!」
「ゲッ!マジで?」
「マジだ」
「長渕ナイト」
「しかもそれだけではない。矢沢ナイトも控えている」
「……」
灰谷の脳裏に悪夢が蘇った。
それはジャイアンリサイタルと同義語だった。
長渕剛ファンの中田の兄がカラオケで長渕を熱唱するのに合わせ、マジハイサトナカがただただ盛り上げ気持ちよくなってもらうという長い長い夜。
中田兄の声が枯れて出なくなるまでそれは続いた。
「長渕はわかるとして、なんで矢沢?」
「矢沢ファンの知り合いが見つけてくれたんだってこのバイク。で、その人のご希望で初の矢沢ナイト開催決定!そこんとこヨロシク」
「OKよろしく。…んで真島はともかくとして。中田もそこんとこOK?」
「マジハイの事なんだから、しょーがねえだろ。頼まれたOKヨロシク」
「でも佐藤、イヤがるだろうな」
「あいつには何も言わせねえ。元はと言えばあんなクレージーナイトが開かれるようになった原因はあいつだからな。兄貴あれで味しめたんだ」
「まあそれもそうだな」
「つうことで灰谷、オマエ長渕と矢沢のヒット曲、さらっとけよ」
「わかった」
オレはマズイ人に頼んでしまったのかもしれない。
開催決定したナイトを想像して灰谷は少し震えた。
「あ、中田、写真撮ってくんない?真島に送るから」
「お、まかしとけ」
灰谷はヘルメットをかぶり、バイクにまたがった。
パシャパシャ。
「こんな感じ?」
「うん」
灰谷はすぐに真島に写真を送る。
『バイク二台ゲット。オマエどっちにする?』とメッセージも送る。
「何?今日も既読つかねえの」
「うん」
「何日目だっけ。真島が旅に出てから」
「四日目?かな」
「そっか。あいつも頑張るねえ。何してんだろな真島」
「だな」
灰谷はバイクを眺めた。
まあでも、これ見たらあいつだって帰りたくなるぞ。
見たら、なんだけどな。
真島とツーリング。
これなら自転車と違って海にだってすぐ行ける。
灰谷は小さく微笑んだ。
原付免許を取った後、中古のバイクを探していた真島が街中で見かけて、カッコイイと言っていたバイクだった。
バイト先でバイク雑誌を見て灰谷は思いついた。
真島と二人でツーリングに行きたいと。
「いいじゃん灰谷。ちょっとベスパっぽい」
案内してくれた中田が言う。
「ああ」
「ケツのラインがティアドロップだ。シャレてんな。シートゆったりだし。ハンドル幅広。おっ、メットインじゃん」
元々バイク自体に興味がなかった灰谷は初めてのピアスを選んだときと同じ様な感覚で、真島が欲しがっていた車種の色違いにしようと思った。
「イメージとしては真島がシルバーで灰谷がブラックだけど、きっと真島ブラック選ぶな」
「オレもそう思う」
「おっ、そうだ。このメット、兄貴から二人にって」
新しいヘルメットが二つ、置いてあった。
「マジで?中田の兄貴ホントにカッコイイな」
「それでな灰谷」
中田は灰谷の肩に手を置いた。
「近日中に第二回長渕ナイト開催でヨロシク!」
「ゲッ!マジで?」
「マジだ」
「長渕ナイト」
「しかもそれだけではない。矢沢ナイトも控えている」
「……」
灰谷の脳裏に悪夢が蘇った。
それはジャイアンリサイタルと同義語だった。
長渕剛ファンの中田の兄がカラオケで長渕を熱唱するのに合わせ、マジハイサトナカがただただ盛り上げ気持ちよくなってもらうという長い長い夜。
中田兄の声が枯れて出なくなるまでそれは続いた。
「長渕はわかるとして、なんで矢沢?」
「矢沢ファンの知り合いが見つけてくれたんだってこのバイク。で、その人のご希望で初の矢沢ナイト開催決定!そこんとこヨロシク」
「OKよろしく。…んで真島はともかくとして。中田もそこんとこOK?」
「マジハイの事なんだから、しょーがねえだろ。頼まれたOKヨロシク」
「でも佐藤、イヤがるだろうな」
「あいつには何も言わせねえ。元はと言えばあんなクレージーナイトが開かれるようになった原因はあいつだからな。兄貴あれで味しめたんだ」
「まあそれもそうだな」
「つうことで灰谷、オマエ長渕と矢沢のヒット曲、さらっとけよ」
「わかった」
オレはマズイ人に頼んでしまったのかもしれない。
開催決定したナイトを想像して灰谷は少し震えた。
「あ、中田、写真撮ってくんない?真島に送るから」
「お、まかしとけ」
灰谷はヘルメットをかぶり、バイクにまたがった。
パシャパシャ。
「こんな感じ?」
「うん」
灰谷はすぐに真島に写真を送る。
『バイク二台ゲット。オマエどっちにする?』とメッセージも送る。
「何?今日も既読つかねえの」
「うん」
「何日目だっけ。真島が旅に出てから」
「四日目?かな」
「そっか。あいつも頑張るねえ。何してんだろな真島」
「だな」
灰谷はバイクを眺めた。
まあでも、これ見たらあいつだって帰りたくなるぞ。
見たら、なんだけどな。
真島とツーリング。
これなら自転車と違って海にだってすぐ行ける。
灰谷は小さく微笑んだ。
0
あなたにおすすめの小説
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました
由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。
ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。
遠い存在になったはずの彼。
けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。
冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる