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第一部屋 脱出……
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◇
──目が覚めたら、そこはえっちしないと出れない部屋でした……。
いや、唐突に何を言っているんだ、って思われるかもしれないけれど、落ち着いて俺の話を聞いてほしい。俺は端的に状況を説明しているだけで会って、何一つとして混乱しているわけじゃない。夢を見ているわけでもない。
ただ確実に言えることとしては、俺はえっちしないと出れない部屋に閉じ込められた、とそういうことであり、それ以上も以下もないのだ。
……だって。
『ここはえっちしないと出れない部屋です』
……なんかこれ見よがしに、天井へとそんな文言がキャッチコピーのように貼り付けられているのだから。
◇
なぜ目を覚ました段階で理解できたか、と聞かれれば、やはり目と鼻の先にある天井にでかでかとそんな文言が貼られていたから。
朝日が差し込んで眩しい空間の中、それが見えてしまっていたから。
「……へっ?」
俺はとりあえず状況を理解しているようで理解できていなかったから、とりあえずその背を起こして、周囲の状況を確認する。
白い壁、そしてベッド。中学の時まではよく使っていた勉強机、その付近に置いてあるパソコン、ゲーム。『えっちしないと出れない部屋』という割には、何もそれらしいような雰囲気がない空間。
……というか、これ確実に俺の部屋ですね、うん。
もう、めちゃくちゃ見覚えのある、というか、見覚えしかないというか。そりゃあ毎日ここで時間を過ごしているのだから、それらを見間違えるわけがないんですけど。
とりあえず俺は起こした身体を捻って、横にある窓から外の景色を眺めてみる。……ほら、こういうときってもしかしたら自室ではあるけれど異世界とか異空間とかに隔絶されている、とか、そういうパターンもあるかもしれないし。
そう思いながらカーテンのかかっている窓を覗いてみたけれど。
「……ですよねー」
そんな期待……、ではないけれど、ともかくとしてファンタジーのようなことは身の回りには起きていない。いつも通りの外の景色。というか、そもそも見慣れた朝日が差し込んでいる時点で、半ば異空間とかに隔離されている想像はできなかったわけだけれど。
……そして、身体を起こしたからこそようやく認識したものがある。
太ももの辺りにある温かくて重い感触。
黒髪、ポニーテール、白の学生服(夏)。
俺のベッドに向けて、机で寝るみたいな姿勢で瞼を閉じている、俺の幼馴染の姿。
「むにゃむにゃ……」
あからさまな寝息を吐き出している、清水 朱里《あかり》の姿がそこにはあった。
◇
とりあえずベッドにもたれながら眠っている朱里は起こさないまま、俺は自室の状況を眺めてみる。
今のところ、荒らされている、とかそういうところはないけれど、とにかく目に映るものとしては、天井や部屋のドア付近に貼られている『えっちしないと出れない部屋』という文言だろうか。
しかも、こういうのって無機質なフォントで描かれるものだろ、って思っていたけれど、なんと書き初め用紙に、確実に人が書いたであろうことがわかるような筆での字が記されている。
……っていうか、なんで二か所も貼ってるんだよ。あといつ貼ったんだよ。
いろいろとツッコミたいところが満載で、今すぐにでも寝ているこの女を叩き起こしてやりたいところではあるが、一旦その衝動は心のうちに抑え込んで、ひとまずはベッドから降りることにした。
朱里を起こさないことに気を付けて、すーっとシーツから抜け出していく。「んん……」と少し俺の足に絡みつこうとする腕の感触があったけれど、それも素早い動きでなんとか躱した。
……さて、ここで俺がとりあえず行うべきこととしては、だ。
「まずは、扉の確認だわな」
一応、ここはこの部屋に記されているルールに従うべき、というか、本当にそんなルールが強制されているのか、ということを確認しておかなければいけない。
ま、まあ? もしここで本当に扉が開かない、とか、そういうことがあるのであれば、ここは致し方なく目の前の幼馴染を起こして、色々と熟考するところではあるが、ひとまずは扉の確認。
きちんとドアが開くか否か。
俺は意を決して、朱里の身体に触れないようにしながら狭い自室を移動して、扉にそっと手をかける。
──ガチャァ……。
……いや、普通に開きましたけど。
何の手ごたえも感じないまま、いつも通りにドア開きましたけど。
ちょっとだけ期待した部分はありましたけど、その期待を裏切るみたいに容易く開きましたけど。なんならいつもならつっかえて開きづらいドアが、これでもか、ってくらいに容易く開きましたが?
「むにゃ、むにゃ……」
そして、未だに寝ている朱里の姿。
俺が呟いた独り言にも気づかないし、そして俺が開いたドアノブの効果音にも気づかないまま、ただただベッドにもたれかかって、いつまでも睡眠を繰り返している。
……つまり、どういうこと? え、これは何をなされたかったんですかね?
「……まあ、いいや」
どうせ考えても仕方がない。開いてしまったのならば、とりあえず俺はいつも通りに学校に行くだけである。
ついでに、俺のベッドで持たれている幼馴染についても起こさなければいけないような気がしたけれど、なんとなくムカついた気持ちが勝ったので、俺は極力物音を立てないようにしながら自室から出て行く。
え、マジで何がしたかったんですかね、この人。
そんな憤りというか悔しさというか、なんとも言えない気持ちを覚えながら、俺はその日、脱出(?)に成功しましたとさ。
☆ 次回、第一部屋の内訳(幼馴染視点)
──目が覚めたら、そこはえっちしないと出れない部屋でした……。
いや、唐突に何を言っているんだ、って思われるかもしれないけれど、落ち着いて俺の話を聞いてほしい。俺は端的に状況を説明しているだけで会って、何一つとして混乱しているわけじゃない。夢を見ているわけでもない。
ただ確実に言えることとしては、俺はえっちしないと出れない部屋に閉じ込められた、とそういうことであり、それ以上も以下もないのだ。
……だって。
『ここはえっちしないと出れない部屋です』
……なんかこれ見よがしに、天井へとそんな文言がキャッチコピーのように貼り付けられているのだから。
◇
なぜ目を覚ました段階で理解できたか、と聞かれれば、やはり目と鼻の先にある天井にでかでかとそんな文言が貼られていたから。
朝日が差し込んで眩しい空間の中、それが見えてしまっていたから。
「……へっ?」
俺はとりあえず状況を理解しているようで理解できていなかったから、とりあえずその背を起こして、周囲の状況を確認する。
白い壁、そしてベッド。中学の時まではよく使っていた勉強机、その付近に置いてあるパソコン、ゲーム。『えっちしないと出れない部屋』という割には、何もそれらしいような雰囲気がない空間。
……というか、これ確実に俺の部屋ですね、うん。
もう、めちゃくちゃ見覚えのある、というか、見覚えしかないというか。そりゃあ毎日ここで時間を過ごしているのだから、それらを見間違えるわけがないんですけど。
とりあえず俺は起こした身体を捻って、横にある窓から外の景色を眺めてみる。……ほら、こういうときってもしかしたら自室ではあるけれど異世界とか異空間とかに隔絶されている、とか、そういうパターンもあるかもしれないし。
そう思いながらカーテンのかかっている窓を覗いてみたけれど。
「……ですよねー」
そんな期待……、ではないけれど、ともかくとしてファンタジーのようなことは身の回りには起きていない。いつも通りの外の景色。というか、そもそも見慣れた朝日が差し込んでいる時点で、半ば異空間とかに隔離されている想像はできなかったわけだけれど。
……そして、身体を起こしたからこそようやく認識したものがある。
太ももの辺りにある温かくて重い感触。
黒髪、ポニーテール、白の学生服(夏)。
俺のベッドに向けて、机で寝るみたいな姿勢で瞼を閉じている、俺の幼馴染の姿。
「むにゃむにゃ……」
あからさまな寝息を吐き出している、清水 朱里《あかり》の姿がそこにはあった。
◇
とりあえずベッドにもたれながら眠っている朱里は起こさないまま、俺は自室の状況を眺めてみる。
今のところ、荒らされている、とかそういうところはないけれど、とにかく目に映るものとしては、天井や部屋のドア付近に貼られている『えっちしないと出れない部屋』という文言だろうか。
しかも、こういうのって無機質なフォントで描かれるものだろ、って思っていたけれど、なんと書き初め用紙に、確実に人が書いたであろうことがわかるような筆での字が記されている。
……っていうか、なんで二か所も貼ってるんだよ。あといつ貼ったんだよ。
いろいろとツッコミたいところが満載で、今すぐにでも寝ているこの女を叩き起こしてやりたいところではあるが、一旦その衝動は心のうちに抑え込んで、ひとまずはベッドから降りることにした。
朱里を起こさないことに気を付けて、すーっとシーツから抜け出していく。「んん……」と少し俺の足に絡みつこうとする腕の感触があったけれど、それも素早い動きでなんとか躱した。
……さて、ここで俺がとりあえず行うべきこととしては、だ。
「まずは、扉の確認だわな」
一応、ここはこの部屋に記されているルールに従うべき、というか、本当にそんなルールが強制されているのか、ということを確認しておかなければいけない。
ま、まあ? もしここで本当に扉が開かない、とか、そういうことがあるのであれば、ここは致し方なく目の前の幼馴染を起こして、色々と熟考するところではあるが、ひとまずは扉の確認。
きちんとドアが開くか否か。
俺は意を決して、朱里の身体に触れないようにしながら狭い自室を移動して、扉にそっと手をかける。
──ガチャァ……。
……いや、普通に開きましたけど。
何の手ごたえも感じないまま、いつも通りにドア開きましたけど。
ちょっとだけ期待した部分はありましたけど、その期待を裏切るみたいに容易く開きましたけど。なんならいつもならつっかえて開きづらいドアが、これでもか、ってくらいに容易く開きましたが?
「むにゃ、むにゃ……」
そして、未だに寝ている朱里の姿。
俺が呟いた独り言にも気づかないし、そして俺が開いたドアノブの効果音にも気づかないまま、ただただベッドにもたれかかって、いつまでも睡眠を繰り返している。
……つまり、どういうこと? え、これは何をなされたかったんですかね?
「……まあ、いいや」
どうせ考えても仕方がない。開いてしまったのならば、とりあえず俺はいつも通りに学校に行くだけである。
ついでに、俺のベッドで持たれている幼馴染についても起こさなければいけないような気がしたけれど、なんとなくムカついた気持ちが勝ったので、俺は極力物音を立てないようにしながら自室から出て行く。
え、マジで何がしたかったんですかね、この人。
そんな憤りというか悔しさというか、なんとも言えない気持ちを覚えながら、俺はその日、脱出(?)に成功しましたとさ。
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