魔法使いの幼馴染を助けたら俺も魔法使いになってしまった件について ~灰色の対極~

若椿 柳阿(わかつばき りゅうあ)

文字の大きさ
17 / 143
第一章 灰色の現実

1-16 『カラフル』

しおりを挟む
 人それぞれに色がある。それは、それぞれの個性と言えるのかもしれないし、もしくは縛られている物と言えるのかもしれない。人はその色を変えることはできず、どこまでいってもその色のままで生き続ける。まるでそれが呪いとでも言うべきかのように。

 僕はそれを呪いだと思った。どこまでも変化も変革も変質もなく、変色なく続くそれは、救いなどない呪いだと、僕は捉えた。

 自分以外の人間はどうだろうか。それを救いだと思うのだろうか。もしくは希望だと思うのだろうか。それとも一つの願いをその色に込めるのだろうか。

 やはり、それさえも人それぞれでしかない。

 それも、きっと同じように『色』なのだ。どこまでも続く色なのだ。始まりから終わりまで続く色なのだ。いいや、終わらない色なのだ。

 葵の色を考えた。彼女はきっと赤色なのだ。橙に近い、人に温かみを与える赤色なのだ。

 先生の色を考えた。彼はきっと青色だ。どこか世界に溶け込むような存在が青色なのだ。

 明楽くんはどうだろう。天音さんは、天原は、そのほかの人は。

 僕は、他の人の色を知らない。その人を知らないのだから色を知ることなどできやしない。人間だったころの関わり合いを振り返ってみても、結局それは変わらず、どこまでいってもわからない。世界とはこんなに狭いものだったのだろうか。

 僕は、どうだろう。

 ずっと考えている。自分自身の色を。どこまでも呪いのように続く色は何色なのかを。その答えを知っているのに、答えを出さないまま思考を続けている。その色であるということを認めたくない、そんな一心で。

 ──でも、結局それは見つかることはない。

 人間に染まることもなく、魔法使いにも染まることがない。黒とも白ともつかない、中途半端な色。どこまでも、どうしようもない曇天の色。

 灰色が、心を占有していく。

 色彩もなく、明暗もなく、灰色だけが世界に広がり続ける。

 そんな光景を見て、ようやく気付く。

 ああ、今見ているのは夢なんだ。





 毎日見る環の顔は、日に日に真っ青へと染まっていった。流石にその顔色に危険を感じた私は、環に声をかけたけれど、その声は結局、他愛のない会話に上書きされて、そうして私の心配は彼には届かない。

 躍起になっている。彼のそんな側面を私は見たことがない。

 いつものようにお茶らけて話しかけてみても手ごたえがない。

 「……結局、環くんは今日まで来なかったなぁ」

 立花先生がそう言葉を漏らした。

 天原くんと模擬戦闘をやると決められた前日になっても、環の姿は空間には現れない。それは、彼がまだ魔法を使えていないという事実を私たちに教えるようなものだ。

 だからこそ、彼はずっと努力をしている。だからこそ、彼はきっと今も血を流し続けている。

 そうさせているのは、きっと私なのだ。私が魔法使いにさせなければ、そんなことにはならなかったはずなのに。

 でも、私に選択肢などなかった。彼がいない世界なんて、私には想像できなかったから。

 魔法使いである私の家族は、父親しか存在しない。母親についての存在を聞くことは憚られて、その理由を知ることさえない。きっと、聞いてもろくでもないものだ。魔法使いの家の事情なんて、そんなものでありふれているに決まっている。

 幼い頃からそんなものだった。それがどこか他人と違う視線を私に味わわせた。

 そんな時に、私は環と出会った。忘れもしない。小学生の時だ。

 小学一年生、みんなが入学という雰囲気に染まって、ああだこうだと騒ぎ立てていた幼い周囲の中、とりわけ人の目を疑うように、静かにたたずむ彼の姿は、誰から見ても異質だったように思う。

 きっと、私もそんな人間だった。何が楽しいのかわからない周囲の雰囲気を飲み込めず、静かに佇んでいた。私も精神的に幼い人間だったけれど、そんな年頃であっても何となく理解した。

 彼も、私と同じなんだろう。

 それがきっかけになったのかはわからない。別に私から話しかけるということはしなかったし、彼から私に話しかけることはなかった。でも、確実に周囲から浮いている存在であった私たちの存在は、浮かんでいるからこそ近づいて、いつの間にか仲良くなった。

 それから、なにかをするにしても二人ぼっち。誰かが私たちの仲を裂くこともなく、互いに関わっていく。

 距離感は近くなっていき、いつまでも変わらないと思える関係が、長く長く続いていく。それぞれが大人になって、魔法使いってことを彼に隠しながらでも、きっと長く続く。それが、私の望んでいたことだった。

 これはどういった感情なのだろうか、私にはわからない。友愛、という言葉だけでは収まらないし、家族愛というものとも違う。恋愛、というのも正直わからない。でも、彼に対して特別な感情を抱いていたのは確かだ。

 だからこそ、彼がいない世界を私には想像できない。彼がいない世界を、私は歩むことなんて選択したくない。

 ──例え、それが禁忌と言われる行為であっても、家族にとがめられる行為であっても、私は絶対に彼が生きる世界に生きたかった。

 それが、目の前の現実だ。その現実が彼の苦悩を重くさせている。

 それが、私にはひどく心に刺さる。鈍感なふりで無視できないほどに大きな罪悪感が、私の心をむしばむ。

 どうしようもない。だから、私は彼が魔法を使えることを祈るだけしかないのだ。

 



 意識がふらついている。どことなく気持ちの悪い浮ついた感覚が身体全体を支配している。それでも歩かなければいけないから歩いている。

 劣等感は、拭え切れていない。それでも僕は『空間』に行く。

 学校の壁の空洞を抜けて、光が僕のことを迎えてくれる。その光を受け入れた先には──。

 「来たんですね。逃げるかと思いました」

 天原 雪冬は、独りでそこに佇んでいた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...