魔法使いの幼馴染を助けたら俺も魔法使いになってしまった件について ~灰色の対極~

若椿 柳阿(わかつばき りゅうあ)

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第一章 灰色の現実

1-EX1 お泊りイベント

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 「ごめん、僕を天原の家に止めてくれないかな?!」

 「なんでいきなりあなたを泊めなきゃいけないんですか……」

 焦りのあまり、話すべきところを話さずに突っ走って会話をしてしまった。自分自身、慌てているからこそのそんな言動なのだろうけれど。

 「……いや、ほら、高校生がさ、深夜に近所を徘徊しているって、すごく危険だとは思わない?」

 「ここに来ている時点でもうその話は終わりじゃないですか」

 「いや、そうなんだけど、そうじゃなくてさ」

 なんていう風に伝えればいいのか、分からなくなってきた。直接的に言葉を紡げばいいのだろうけれど、どこか恥ずかしさがあるせいか、どうにも言葉がまとまらない。

 「……というか、そもそもそれなら葵先輩や明楽先輩に頼めばいい話では?」

 「……そうしたいのは山々なんだけどさ」

 なんというか、すごく印象的な話でしかないから、明楽に対しては申し訳ないことこの上ないのだけれど、明楽は家に女性を連れ込んでいる印象が僕の中にある。さほど彼を知っているわけじゃないからこそ、そんな偏見があるのだけれど、もしそれが現実だったら、女性を連れ込んでいる家に宿泊をお願いするわけにもいかないだろう。

 葵については、そもそもの原因が葵なので頼むに頼めない、という具合だ。

 「それで、何があったんですか」

 ……そう聞かれて、どう説明するのか迷う。オブラートに包めばいいのか、どうすればいいのか。そうして結局考えなどはまとまらなくて。

 「──母さんに、葵との仲を疑われているんだよ」

 「……は?」





 あらましというのを伝えなければいけない。

 魔法教室というものは、以前僕と葵が通っていた中学校のとある場所から繋がる空間にあり、そこに日中に忍び込むことは不法侵入なるからできず、そして魔法教室がある時間もそもそもが深夜なので、必然的に魔法教室から帰る時間は朝方になる。

 だいたい深夜二時から四時くらいまで魔法教室で過ごすわけだが、帰るころにはだいたい朝五時を周るのが大半だ。

 別に中学校が遠いわけではない。単純に、僕の魔法発動に切り裂いた血液の後処理だとか、葵とコンビニに寄って夜食を食べたりだとか、公園にふらっと寄ってみて雑談していたら、そんな時間になるのがほとんどなのだ。

 ……あれ?最初はともかく、後半は改善できるな。

 ……ともかく、朝方に帰ってしまうわけだけれども、この前たまたま寝つきが悪かったらしい母親と朝に邂逅してしまったことが、今のこの問題の根幹になってきている。

 「あんた、こんな時間まで何やってたの?」

 そう聞かれたけれど、特に思いつく言葉はなく、散歩としか答えることしか出来ない僕。それを勘ぐる母親の図。

 「……まさか、葵ちゃんと」

 母からそんな言葉が出た瞬間、僕は嫌な予感を覚えたので、すぐに違う、と否定する。母は僕と葵が付き合っているのだと勘違いしていて、そして爛れた関係を築いているのだと更に曲解をしようとしていたのだ。



 「それで、結局何が言いたいんですか?……というか、葵先輩とまだ付き合ってないんですか?」

 「まだってなんだよ。付き合ってねえよ。……じゃなくて、えっと、友達の家に泊まってるんだって、言い訳をしました」

 「……別にそれでいいじゃないですか」

 「いや、よくないんだよ!」

 天原は大事なことが分かっていない。

 「ええとな、僕がそんなことを言ったら、『あらそう?それならそちらの親御さんにいつもお世話になっていることを伝えなきゃね』って言ってきてさ……」

 「まあ、そう……なるんですかね?別にいいじゃないですか」

 「でも、ほら、実際には僕は魔法教室に行っているだけであってさ!」

 「……それが?別にでっち上げればいいだけじゃないですか」

 天原は、やはり理解をしていない。だから、僕は恥ずかしさを嚙み殺しながら──。

 「──僕、友達いないんだよ!」

 空間に大きくその声は響いた。

 果てがないからこそ、どこまでも大きく響くその声は、隠れて会話をしていた僕たちだけではなく、他の皆にも聞こえてしまう。

 「え、えっとぉ」

 葵が気まずそうな顔で僕を見ている。

 いや、お前だってもともと気弱で友達少なかったほうじゃん。子どもの頃、僕と一緒に遊んでいたのが何よりの証拠じゃん。最近は他の高校生とも遊ぶことは確かに聞いていたけれど、それはそれとして葵がもともと友達が少ない過去は変わらないからな?

 「環……」

 明楽が憐れみのような視線を送ってくる。

 みなまで言うな。言いたいことはわかるから。そもそもチャラ男みたいな風貌をしているお前からそんな視線を送られると、なんかこう、普通に死にたくなるからやめてほしい。きっとお前みたいなやつには僕のような根暗の性格が分からないんだろうな。だからこそ天原に頼んでいるわけなのだけれど。

 「……」

 天音さんが無感情に僕を見ている。沈黙が重い。何を考えているのだ彼女は。読み取れないから、この空間の中での視線で一番心に刺さるような気がする。

 立花先生に至っては、ぷっと弾けだしたように笑っている。この人本当に教師なのだろうか。人の心はないのだろうか。そもそも、あなたが毎日ここに通わせなければ、僕はこんなに悩むことはなかっただろうに。教師として恥を知ってほしい。

 「……よくもそんな恥ずかしいことを大声で言えましたね」

 「……テンションが上がったせいです」

 それ以上、なにか僕から言葉を続けることはできなかった。

 ──ああ、死にたい。

 手元にナイフあるし、動脈を切ったら気持ちよく死ねないかなぁ。

 「ちょ、ちょっとそんな遠い目をしないでください!わかりました!わかりましたから!」

 天原は僕の表情を見て、そう言葉をくれる。 「……ほんと?」

 「本当です!だから、なんかその嫌な予感を覚えさせる顔を今すぐにやめてください!」

 というわけで、天原の家に泊まりに行くことになりました。





 「というか、別に僕と口裏を合わせるだけでよかったのでは?」

 「……実は、普通に友達の家に泊まりたいという願望もあります」

 「……涙をさっさと拭いてください、というか友達じゃないですから」
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