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第三章 灰色の対極
3-22 私のもの
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□
「ダメ、だよ」
私は彼の声をかき消すように言葉を紡いだ。
私は、きっと彼が好きだと思う。
彼に対して抱く感情はすべて、他人に対して抱くものとは異なるものだ。魔法教室にいる魔法使いとは違うベクトルで発生する感情。友愛と言えるようなものでもなく、親愛とも言えるものでもない。もし、それが恋愛という言葉で数えるものならば、おそらくそうなんだろう、と肯定することができるくらいには、きっとそれは恋愛感情に違いなかった。
だから、彼の紡がれるべき告白に対しては、うれしさを覚える。そのすべてを肯定したくなる。優しさでもなく、ただ私のエゴだけでそれを肯定したい気持ちが大半を占める。心に黒いのが渦巻く。天音さんに対して裏腹に抱いた感情が報われる気持ちが後ろめたくなる。天音さんは別に私に対しても、環に対しても特別な感情を抱いているわけじゃないだろうに、勝手に抱いている自分が思いあがっているのではないかと認識して気持ちが悪い。
だから、本当は肯定しなければいけないのだ。彼を受容するなら、きっとこのタイミングなのだ。
──でも、ここで彼の告白を受け取ったら、彼はもう私に帰ってこないかもしれない。
今の彼は、どこか死にに行く顔をしている。いや、今の彼というよりかは、朱音という環の姉らしい人から話を聞いた時から、ずっとそんな顔だ。
対極を受け容れるということが、そこまで重いものなのかはわからない。ただ、対極を受け容れなければ死ぬ、と環の姉はそう語っていた。そして、対極の受容という概念も抽象的でわからない。あの殺意にまみれた表情をした環がそのまま環になるという可能性があるということなのだろうか。よくわからない。
彼もきっと同じことを考えている。自分が死ぬ、だからこそ踏ん切りをつけるべきなのだとそう考えていつまでも彼は行動をしている。デートを提案したときも、そんな行動を繰り返しているのだ。ずっと、ずっと。彼は自分が死ぬことを想定している上で行動をしている。
だから、今の環を受け容れてはいけない。
今の環を受け容れたら、確実に彼はもうここには、私の手元には戻ってこない。
「今の環じゃダメ」
そうして、私は言葉を吐く。
彼の言葉を否定するのは心が痛い。でも、それでは、私の思う世界を手に入れることができない。私が本来望むのは、どうであれ彼が生きる世界だけなのだ。
この告白が、環という存在を殺すことになってしまうのならば、絶対に受容できないのだ。
彼がほかの女と過ごしてもいい。彼がどんな罪を犯してもいい。彼がどんなことをしても、生きてくれてさえいればそれでいい。
この告白で、彼が私に依存をすることになっても、それでいい。私はそう彼を以前肯定したのだから、それでいい。でも、そこに彼の死を介在させてはいけない。そんな世界は絶対に許すことができないのだから。
「──今の環、死ぬために行動しているみたい」
ただ、言葉をつけ足さなければいけない。彼の言葉にきちんと報いるために、私の感情をきちんと吐く。
「そんなの、絶対許さない」
許さない。心の底から許せない。彼がいない世界を、私はどこまでも許さない。それを肯定するくらいなら、滅んでしまった方がましなのだ。
「私、待つからさ」
いつまでも、いつまででも。彼が対極というものに向き合った後なら、いつでも、なんどきでもかまわない。
それこそが、彼に対しての肯定なのだ。
それこそが、私が彼に対してできる行動なのだ。
「今度、また同じ言葉を聞きます」
それが、私にできる、彼のためのこと。
赤原 葵が自分の気持ちを押し殺してでも、するべきただひとつのこと。
その時は、彼と付き合うから。
在原 環を、私のものにするから。
◇
「……環?」
殺めて。
殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて。
「どこいくの?」
殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて
「ねえ」
殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて。
「──環!」
──殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて。
「ダメ、だよ」
私は彼の声をかき消すように言葉を紡いだ。
私は、きっと彼が好きだと思う。
彼に対して抱く感情はすべて、他人に対して抱くものとは異なるものだ。魔法教室にいる魔法使いとは違うベクトルで発生する感情。友愛と言えるようなものでもなく、親愛とも言えるものでもない。もし、それが恋愛という言葉で数えるものならば、おそらくそうなんだろう、と肯定することができるくらいには、きっとそれは恋愛感情に違いなかった。
だから、彼の紡がれるべき告白に対しては、うれしさを覚える。そのすべてを肯定したくなる。優しさでもなく、ただ私のエゴだけでそれを肯定したい気持ちが大半を占める。心に黒いのが渦巻く。天音さんに対して裏腹に抱いた感情が報われる気持ちが後ろめたくなる。天音さんは別に私に対しても、環に対しても特別な感情を抱いているわけじゃないだろうに、勝手に抱いている自分が思いあがっているのではないかと認識して気持ちが悪い。
だから、本当は肯定しなければいけないのだ。彼を受容するなら、きっとこのタイミングなのだ。
──でも、ここで彼の告白を受け取ったら、彼はもう私に帰ってこないかもしれない。
今の彼は、どこか死にに行く顔をしている。いや、今の彼というよりかは、朱音という環の姉らしい人から話を聞いた時から、ずっとそんな顔だ。
対極を受け容れるということが、そこまで重いものなのかはわからない。ただ、対極を受け容れなければ死ぬ、と環の姉はそう語っていた。そして、対極の受容という概念も抽象的でわからない。あの殺意にまみれた表情をした環がそのまま環になるという可能性があるということなのだろうか。よくわからない。
彼もきっと同じことを考えている。自分が死ぬ、だからこそ踏ん切りをつけるべきなのだとそう考えていつまでも彼は行動をしている。デートを提案したときも、そんな行動を繰り返しているのだ。ずっと、ずっと。彼は自分が死ぬことを想定している上で行動をしている。
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今の環を受け容れたら、確実に彼はもうここには、私の手元には戻ってこない。
「今の環じゃダメ」
そうして、私は言葉を吐く。
彼の言葉を否定するのは心が痛い。でも、それでは、私の思う世界を手に入れることができない。私が本来望むのは、どうであれ彼が生きる世界だけなのだ。
この告白が、環という存在を殺すことになってしまうのならば、絶対に受容できないのだ。
彼がほかの女と過ごしてもいい。彼がどんな罪を犯してもいい。彼がどんなことをしても、生きてくれてさえいればそれでいい。
この告白で、彼が私に依存をすることになっても、それでいい。私はそう彼を以前肯定したのだから、それでいい。でも、そこに彼の死を介在させてはいけない。そんな世界は絶対に許すことができないのだから。
「──今の環、死ぬために行動しているみたい」
ただ、言葉をつけ足さなければいけない。彼の言葉にきちんと報いるために、私の感情をきちんと吐く。
「そんなの、絶対許さない」
許さない。心の底から許せない。彼がいない世界を、私はどこまでも許さない。それを肯定するくらいなら、滅んでしまった方がましなのだ。
「私、待つからさ」
いつまでも、いつまででも。彼が対極というものに向き合った後なら、いつでも、なんどきでもかまわない。
それこそが、彼に対しての肯定なのだ。
それこそが、私が彼に対してできる行動なのだ。
「今度、また同じ言葉を聞きます」
それが、私にできる、彼のためのこと。
赤原 葵が自分の気持ちを押し殺してでも、するべきただひとつのこと。
その時は、彼と付き合うから。
在原 環を、私のものにするから。
◇
「……環?」
殺めて。
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「どこいくの?」
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「ねえ」
殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて。
「──環!」
──殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて殺めて。
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