見えない想いの行く末

花戸あみ

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side 臣

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 森末が気になるようになってから時間が流れ、あっという間に実家に帰る日が来てしまった。まあ、慌てることもないかと出かかる用意を始めた。それと同時に電話がなった。

「もしもし」
「おっくん、今日、帰るんだよね?何時になる?パーティーは明日だよ」
「分かってる、今準備をしてる。8時30分に門まで松田さんが迎えに来てくれる予定だから、10時までには家に着く予定だ。千里さんの運転手を迎えに寄越してくれてありがとう」
「千里さんがしたかったんだから、させてあげて。じゃあ、待ってるね」
「じゃあ、後で」

 プレゼントは明日、家に届くことになっている。だから貴重品だけ持って外へ向かった。明日渡すプレゼントはもうずっとネクタイだ。
 初めて壱と2人でお金を貯めてネクタイをプレゼントしたあの日から本人のリクエストで毎年送っているのだ。本人曰く壱と俺を家族として繋ぐ証が毎年増えるのが嬉しいらしい。今では壱と2人でいろんなネクタイを送っている。

「さて、行くか」

 部屋を施錠して寮を出て歩いていくと、空を見上げている森末がいた。
 この邂逅は嬉しいものだった。

「こんな時間に何してるんだ?」
「っ!!、びっくりした~、なんだ関根か~」
「悪い、驚かせるつもりはなかった」

 じっと俺の瞳を見る真っ直ぐな瞳がまぶしかった。何度経験しても目と目を交わして話をするのは気持ちが良い。

「どうかしたか?」
「関根って身長いくつ?」
「185」
「体重はいくつ?」
「75キロ。ってなんだ?」
「なんでもないです……」

 突拍子もない質問の連続に、それがまた森末らしくて俺の口元が緩んだ。

「何を笑ってるの?」
「いや、なんでもない。コンビニでも行くのか?」
「そうだよ、消しゴム切らしたんだ」
「そっか、冷えるし気をつけて戻れよ」
「うん、ありがとう。関根はどこかに行くのか?」
「あぁ、実家に帰るんだ」
「ならそっちこそ気をつけて。遠いの?」
「1時間ぐらいだな」
「まあまあ、遠いじゃん」
「まあ、普通だろ?」
「そか、じゃ、気をつけていってらっしゃい」
「おう」
「じゃあね~」

 そう言ってコンビニに向かう森末を見送っていると急に森末が振り返った。

「ねえ、ねえ、今度時間もらえない?」
「おう。いいぞ」
「おけ、じゃあ、連絡先交換しよ」
「了解」
 
 相変わらず唐突なヤツだった。
 少し、松田さんを待たせたが、予定通りに自宅に帰ることが出来た。さすがベテランの運転手だ。

「おう、息子、帰ったか!」
「千里さんただいま。あれ、成さんは?」
「飲むぞ、息子。成は台所だ」
「おかえり~。今ビール注ぐからね~」
「2人とも、まだ俺17だよ」
「え~、僕らの時16には飲んでいたよ。ね、千里さん」
「あぁ、ビールはまだ、ジュースと一緒だろ」
「はいはい、じゃあ、飲むか」
「そう来なくっちゃ。あ、でも、外ではダメだからね保護者がいるから良いだけだからね。ね、千里さん」
「そうだぞ。いいな、臣」
「了解です」

 久しぶりの実家。2人なりに4月30日の俺の誕生日を早速お祝いしたいんだろう。もちろん当日にBDメールを受け取っている。それでもそう思ってくれる気持ちが嬉しい。本当に良い親たちだ。千里さんはビジネスに関しては相手にも自分にもとても厳しい人だ。成さんも礼儀作法に厳しい人だけど、2人は本当に愛してくれた。この人達の家族になれて本当に感謝している。
 ただ、2年ぶりに会えると思っていた壱に会えないのは残念だ。でも壱なら元気に人気モデルとして飛び回っていることだろう。
 そうして、寮とは違う賑やかな夜がふけていった。
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