ある神官の告白

彩月野生

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想いは永遠に

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リーヌスのしつこさに折れたヘルマンは、渋々だが、元の身体に戻る事を決意した。

リーヌスが買った町外れにある屋敷にて、二人で住んで一月経つが、あまり外出はできないヘルマンは、毎日の様に彼から甘い言葉をささやかれて……既に限界だったのだ。

あまりのリーヌスの変わり様に、ヘルマンの魂は昇天しかけていた。

――一度死んだも同然なのにな。

項垂れていると、リーヌスに腰を上げるようにと促される。

「早く地下室に行くぞ」
「……もう少しだけこのままでいたい」
「今更何をいうんだ? 俺が、元の身体のお前を抱きたいと言ったのを受け入れただろう?」
「そ、それは……」
「早くするぞ」
「ほ、本当に良いのか……? わ、わたしはあんな醜い姿をしているのに……」
「醜くなどない!」
「……ど、どうしたんだ、リーヌス?」

声を張り上げたリーヌスから必死さを感じたヘルマンは、思わず椅子から立ち上がり、彼に歩み寄る。
リーヌスはそっぽを向くと何事か呟いた。

「やはり分かってないか」
「リーヌス?」
「いいから来い!」
「うわ」

何故美しい姿からわざわざ、醜い姿に戻らなければならないのだろう。
しかも、愛する人の前で……。

リーヌスの魔術により、元の身体に魂を戻したヘルマンは、久方ぶりの己の肉体の重さにだるさを感じた。
ため息をつくと、何故か額をこづかれる。

「いい加減、観念しろ!」
「し、しかしだな」
「今まで使っていた身体は、後で女神に返す。寝室に来い」
「うう……」

己の体は、リーヌスがすでに奇麗にしてくれていたのもあり、すぐさま身体を重ねる事に躊躇はないらしい。
だが、ヘルマンは身体が重いし、頭がぼんやりして、出来れば寝ていたい。

寝台に押し倒されて唇を塞がれる。

「んむ……」
「は……ヘルマン……」
「リーヌスう」

――この口づけには、勝てない……。

愛する人との口づけは、この上ない幸福感をヘルマンに与えた。
甘えるように背中に両腕を回したら、ふいに我に返り、唇を離す。

「ヘルマン?」
「この身体と、こんな真似をして、気持ち悪いだろう」
「気持ち悪くないぞ」
「な、なぜだ? いったい、どうしたんだ? 本当にリーヌスなのか?」

ヘルマンの問いかけに、リーヌスは短く息を吐き出して、頬を緩めた。

「愛してるからだ」
「……っい、いまなんと?」
「俺は、お前を愛してるんだ」
「――っ」

――そんな馬鹿な……信じられない。

その言葉を吐き出すのをやめたのは、リーヌスの目が、真剣そのものであったからだ。
きつく抱きしめられて、その温もりに胸の高鳴りは最高潮となる。
瞳を閉じてしばし抱擁に酔いしれた。

リーヌスの気持ちが、体温を通して伝わってくる。

「……私も、貴方を愛してる……」
「ヘルマン……」
「私は、貴方を想うあまり、人生を狂わせた……」
「分かっている……これから先は、もう長くはないだろうが、ずっと傍にいる」
「……っ」

頬をつたう涙を舌で拭われて、微笑む。
さらけ出した肌をこすり合わせ、熱を交わす。

――ああ……幸せだ……!

「ヘルマン」
「リーヌス」

何度も名を呼び合い、愛を確かめあった。

最期を迎えるその時、リーヌスに看取られる様を思い浮かべて、ヘルマンは穏やかな気持ちになり、口元を緩めた。


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